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市場の展望―次はどうなる?

シリコンバレーからスイスまで、銀行ストレスは政策当局に試練をもたらし、市場を混乱させ、世界金融危機の記憶を呼び起こしました。これらの出来事は、あくまでも個別の事案なのでしょうか。それとももっと深い問題の表れなのでしょうか。本記事では、弊社のグローバル最高投資責任者(CIO)が各自の見解を述べ、投資家が次に検討すべきことを示します。

要点
  • 最近の出来事は、高金利政策への移行によって起こりうる予期せぬ金融への影響を改めて認識するきっかけとなりました。
  • これまで高インフレへの対応に追われてきた政策当局は今後、金融リスクを抑制するための規制強化にも力を入れるようになるかもしれません。
  • 投資家が銀行やテクノロジー企業の強靭さを厳しくチェックする中、特に株式市場では、ボラティリティが高止まりすることが予想されます。
  • 質の重視:優良なバリュー銘柄とグロース銘柄を選別するストックピッカーには、有利な機会が出現する可能性があります。

以下に、弊社の専門家の分析をまとめました。

Virginie Maisonneuve

ヴィルジニー・メゾヌーヴ

株式, グローバルCIO

資本コストの上昇に対処する

「マネーに再びコストがかかるようになった」。金利上昇が生み出す圧力がここ最近、再び大きくクローズアップされています。この1年、政策金利は1980年以来最も早いペースで上昇しただけでなく、引き締め幅も最大となりました1。2022年3月以降、金利は合計450ベーシスポイント引き上げられています。M2で測定されるマネーサプライは、名目国内総生産(GDP)よりも成長が緩やかになっており、金融資産に投じられるマネーが少なくなっていることを意味します。最近まで、世界は流動性にあふれていました。新型コロナ禍に対応するために各国政府が追加の経済支援を行ったこともこの状況に拍車をかけ、賃金圧力を含むインフレ圧力が高まりました。米国のような先進国では、賃金がコストの7割を占めることもあります。

シリコンバレー銀行(SVB)の一件で私たちが目の当たりにしたように、金融引き締めは、潜在的な発火点となる可能性をはらんでいます。SVBはシステム上重要な銀行ではなかったものの、非常に急速に成長を遂げた銀行で、テクノロジー業界に軸足を置いたことによる集中リスクと、やや思慮を欠いたリスク管理が相まって破綻に追い込まれました。

水のように、資本コストの上昇は金融システムにじわじわ浸透しており、システムの中の「最も低い」点、すなわち最も弱い点に影響を及ぼしています。経済成長が鈍化している時期にこれが起こると、脆弱な部分が浮き彫りにされ、激しい反応を生じさせる可能性があります。強力な監督体制の下でリスクが多くの銀行やプレーヤーに分散されている時は、金融システムはそうした事態に対処できます。金融システムの現在の堅固さを支えているのは、世界金融危機後に、特に欧州で進んだ規制強化です。直近の出来事が米国での規制強化につながる可能性は非常に高いと思われます。

今、検討すべきこと

マーケットイベントは引き続き、弊社の質重視の姿勢が正しいことを裏付けています。弊社は、確信度の高いポジションで慎重にポートフォリオを構築することを支持します。ポートフォリオの中心にボラティリティの低いマルチファクター戦略を据えることで、安定した土台を構築することができます。第二に、目下の環境は、優良なバリュー銘柄とグロース銘柄を選別するストックピッカー、そしてインカム投資に有利な機会を生み出していると考えられます。最後に、弊社は引き続き、長期的なテーマ投資等が望ましいと見ています。

すべてを考慮に入れると、金利上昇は利幅を支えるため、金融セクターにとってプラスになるはずであり、今後数カ月のうちに買い場が訪れるかもしれません。しかし、重要な検討材料として、直近の出来事が地合いや預金コストに与える影響と、金利上昇が最終的な需要、ひいては収益力に与える影響などを考慮する必要があります。全体的に投資家は、金融システムが以前よりも全体的に強いように見えるという現実から、若干安心感を得ることができると思われます。弊社が考えるに、金融システムは実際に、強くある必要があります。「マネーに再びコストがかかる」状況では、金融システムがさらに試される可能性は高いでしょう。

1 出所:Refinitv Datastream as of December 1, 2022. Past performance does not predict future returns.

Greg MA Hirt

グレガー・ハート

マルチアセット, グローバルヘッド

不安定な市場からの安全な避難先を探す

シリコンバレー銀行(SVB)の破綻は、多くの点において特異的な出来事であり、その原因はリスク管理に関するいくつかの選択を誤ったことにありました。けれども、SVBの破綻は、金利の急上昇に少なくとも部分的に起因する一連の最近の「アクシデント」に分類できるかもしれません。投資家は、この突然の政策変更が引き起こしたストレスが、次にどこで表面化するかを知っておいた方がよいと思われます。

クレディスイスが当面の命綱となる資金を確保したことは、マーケットにとっては心強い材料です。クレディスイスの解体は、複雑なものになるでしょう。銀行セクターは、その性質上、預金者と取引先の信頼の上に成り立っており、このセクターに対する信頼を支えるために規制当局と中央銀行が強力に介入する可能性があります。

実際に、米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)は警戒を強めると思われます。最近のイベントは、マーケットが金融アクシデントとの絡みで「リスクオフ、流動性オフ」というシナリオに移行するきっかけになるかもしれません。全体的に、この環境はリスク資産にとって(控えめに言っても)建設的ではなく、米ドルや米国債のような安全な避難先にとっては、追い風となるはずです。

中央銀行は、ジレンマに直面しています。彼らは、インフレと戦うという中期的な目標から、銀行の取り付け騒動や破綻の波及を防ぐという短期的な優先課題に転換するのでしょうか。ECBは、すでにその答えを示しており、3月16日の会合で予想通り0.5ポイントの利上げに踏み切ることを選択しました。ただし、将来の利上げへの言及をやめたことは重要です。

今、検討すべきこと

SVBの件に迅速に対処することによって、FRBは、主要金利の引き上げによるコアインフレの抑制という中核目標に引き続き力を注ぐ時間も稼いだかもしれません。その結果、景気がさらに減速することになり、最近の労働市場の強いデータを背景にFRBが目指す、コアインフレ圧力の軟化につながる可能性があります。

米国株は、バリュエーションが高止まりしているにもかかわらず利益率が悪化していることから、下降局面入りすることが考えられます。弊社は最近、マルチアセットポートフォリオの米国株組み入れ比率を引き下げる一方、米国債について、少なくとも戦術的にはより強気のスタンスに転換しました。また、一部の領域、たとえば魅力的なバリュエーションを提供しており、中国の経済再開によって支えられている新興市場などには、もう少し建設的な見方をしています。同様に、現在利回りがプラスとなっている日本円も、安全な避難先になる可能性があります。先行きがほとんど見えない現状では、「警戒」を標語にすべきです。

Franck Dixmier

フォンク・ディクスミエ

債券, グローバルCIO

イールドカーブに対してアクティブなポジションを取る機会が出現

ことの始まりは、シリコンバレーで、比較的無名の銀行がわずか1日で400億米ドルを超える記録的な資金流出に見舞われたことでした。1週間のうちに、欧州の銀行セクターは、時価総額の10%以上を失いました。無担保優先債に対するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、およそ40ベーシスポイント(bp)、劣後債に対するCDSは70 bp拡大しました。一方、こうした波及的影響は、バンキングアナリストにとっては無意味です。欧州の銀行は危機的状況に陥っていないという私たちの考えは、揺らいでいません。

そうとはいうものの、銀行セクターが信頼の上に成り立っていることを考えると、私たちはこの新たな現実に適応する必要があります。弊社では、ファンダメンタルズの徹底的な分析に基づくボトムアップの投資プロセスにより、最も底堅い銘柄を選別しています。

一般に、流動性は欧米の大手銀行にとって問題ではありません。そのほとんどは、規制上の最低要件を大きく上回る流動性を維持しています。そして中央銀行は、システミックな流動性危機を防ぐために必要とあれば、積極的な措置を取るはずです。

最近の出来事を受けて、米国とユーロ圏ではイールドカーブが大きく調整され、中央銀行の利上げ予想が大幅に見直されました。2月は、投資家は抵抗をあきらめたかのように見え、月の初めから終わりまでの間にFRBのターミナルレートの予想は100ベーシスポイント(bp)以上、ECBのターミナルレートの予想は80 bp引き上げられました。しかし銀行ストレスを受けて、利上げ予想は、FRBについてはほぼゼロに下がり、ECBのターミナルレートの見通しもかなり下がりました。この利上げ見通しの下方修正は、イールドカーブの短中期ゾーンに集中していましたが、長期金利にも影響を与えました。

弊社の見解では、こうした修正は行き過ぎのように見えます。ECBが示したように、中央銀行は、起こりうる流動性危機に対処する具体的な手段を持っています。コアインフレの強さを考えると、中央銀行がインフレとの戦いの手を緩めることはないと思われます。弊社は引き続き、中央銀行が利上げを継続するとみています。しかし、利上げの幅は、中央銀行が銀行セクターのストレスの封じ込めに成功するかどうかと、コアインフレの動きに左右されるでしょう。

今、検討すべきこと

債券市場のボラティリティが非常に高いことを考えると、上方修正が予想されるショートエンドをアンダーウェイトにすることによって、イールドカーブに対しアクティブなポジションを取る機会が生じる可能性があります。クレジットスプレッドに見られる最近の緊張をうまく利用し、特に波及的影響によって先が見通せない形でスプレッドが拡大している銀行については、配分をオーバーウェイトにすることが考えられます。

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