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シリコンバレー銀行 の破綻:銀行セクター全体に一斉に波及か?

単発的な出来事か、システミックな脆弱性の兆候か? シリコンバレー銀行の破綻、FRBは迅速に対応するも、金利上昇の打撃が続く中で先行きの波乱を示唆している可能性

要点
  • テクノロジー企業とスタートアップを融資先とするシリコンバレー銀行の破綻に対し、米連邦準備理事会(FRB )は素早く対応しました。
  • 銀行に流動性を供給する新しい融資枠を創設したFRBの措置は、短期的な不安を後退させるとみられます。ただし、懸念は払拭されないでしょう。
  • 銀行セクターは逆風にさらされています。金利上昇が景気低迷を引き起こし、投資家がボラティリティの上昇に直面する可能性もあります。
テクノロジー部門のスタートアップに特化して融資を行っていたシリコンバレー銀行(SVB)が、保有する長期債に多額の時価評価損が発生したことで経営難に陥り、同行に預金の引き出しが殺到しました。

同行の破綻を受け、米銀行セクターを中心に市場のボラティリティが上昇し、S&P 500銀行株は1週間で15%以上下落しています。

この出来事が米金融市場の一部を不安定化させ、その是非はさておき、さらなる売りを招くおそれがありました。システミックリスクを未然に防ぐべく 、破綻直後の週末にFRBが同行の全預金者を保護する措置を素早く講じた理由も、ここにあります。このほかFRBは、銀行向けターム資金調達プログラム と呼ばれる新しい融資枠を導入しました。この制度は、信用度の高い証券に流動性を追加提供し、「不安上昇を受け金融機関がこれらの証券の早急な売却を迫られずにすむようにする」ものです。

この措置により、銀行はバランスシート上の資産を保有し続けることが可能になり、売却による損失計上を避けられることから、銀行危機の「連鎖」と売りの悪循環のリスクは大幅に低下するとみられます。金利の上昇局面では、銀行が保有する資産の市場価格は時価ベースで下落圧力にさらされているため、リスクが抑制されることはとりわけ重要になります。

炭鉱のカナリア—危機の前兆 か?

このほどのFRBの対応がシステミックリスクを低下させ、銀行取り付けの連鎖を防ぐことができたとしても、目下の環境、つまり利上げが急ペースで進められ、逆イールド(長期債利回りが短期債利回りを下回る現象)が発生している環境では特に、銀行セクターが圧力にさらされ続けるのは当然のことといえるでしょう。

銀行の「伝統的な」ビジネスモデルは、低利で借り入れ、より高い金利で貸し付けることが基本です。超過準備からより多くの収益があるとはいえ、目下の市場の環境はこのビジネスモデルとはほぼ逆の状況にあります。

この環境下では特に、住宅セクターへの融資が多い米商業銀行に圧力がかかるでしょう。住宅セクターでは市場活動が大きく低迷し、金利改定が加速しています。このトレンドは今後数四半期にわたって加速するとみられます。

一方で、米経済の一部には利上げの影響が及び始めています。これがデフォルトを増加させて徐々に銀行のバランスシートへの影響が拡大し、銀行がリスクをとる動きを調整せざるを得なくなる可能性があるでしょう。ローンのデフォルトが消費者の債務増加を加速させる可能性もあります。つまり、シリコンバレー銀行の破綻は、逆イールド下における銀行セクター全体の脆弱性を浮き彫りにしたといえるでしょう。ただし、今回の危機の焦点が、どちらかといえば テクノロジーおよびスタートアップ部門における低利資金の巻き戻しにある点は、留意する必要があります。

それでも、HSBCがシリコンバレー銀行の英国子会社の取得(買収価格は象徴的な1ポンド) に乗り出したというニュースは、安価な資産買取りに他行が意欲的であることを示しています。

先行きへの警戒

FRBの迅速な対応は銀行セクターの多層的なシステミックリスクを除去しました。システミックリスクはリーマンブラザーズ破綻を契機とする2008年の金融危機を強く想起させるため、この対応は市場で好感されるでしょう。

ただし、これに満足するべきではありません。銀行向けターム資金調達プログラムの新設により、FRBは今後もコアインフレ目標—つまり、政策金利引き上げによるコアインフレ率の抑制—に集中できるとみられます。

これがさらなる景気低迷を招き、FRBが最終目標とするコアインフレ率の上昇圧力が低下する可能性があります。3月に公表された最新の米雇用統計の堅調さに鑑みれば、なおさらその可能性は高まるでしょう。

このことは、米国株が軟化局面にあるとの弊社の見解を裏付けています。バリュエーションが比較的高水準にありながら、利益率が悪化している現在の状況では、特にそういえます。

この見通しに基づき、弊社はこのほどマルチアセットポートフォリオの米国株組み入れ比率を引き下げました。シリコンバレー銀行の破綻で明らかになった金融危機のリスク上昇を踏まえ、米国株の組み入れを減らす動きは他社でもみられました。

米金利の急上昇を受け、弊社は米国債のポジションを転換し、少なくとも戦術的にはより強気のスタンスをとっています。FRBがさらに景気抑制および金融条件の引き締め策を講じれば、この転換が正しいことが裏付けられるでしょう。ただし投資家は、FRBのこうした措置がモラルハザードと資金配分の誤りを新たに勢いづかせる可能性があることに留意する必要があります。投資家の間では当面、「警戒」が標語になるでしょう。
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