Climate | ~ 4 min read

グリーンな建物の基礎づくり

このほどのEUの指令は、2050年までに域内の建築物ストック からの排出をゼロにするという大胆で意欲的な目標を掲げています。この目標は達成可能でしょうか。それとも、大きな障壁にぶつかるのでしょうか。

建物からの排出量削減は、欧州連合(EU)の気候対策における重要目標のひとつです。このほど欧州議会および欧州理事会が建物エネルギー性能指令 の改正案を採択したことで、その重要性が強調されました。この指令が目指しているのは、新たに建設される建物からの排出削減だけではありません。特筆すべきは、既存の建物についても改修によって新基準に適合させ、建設部門の排出削減を達成しようとしている点です。

EUの全排出量のうち、およそ3分の1が建物に由来します。このため、建設部門は2050年までにネットゼロを達成するための戦略的対象となります。ところが、この指令の要件をめぐり、EU加盟国、欧州議会、非政府組織、建設業界の間で激しい論争が起きました。最終的には4月、EU加盟国の賛成多数により1、新しい規定を施行することが決定しました。

改修に関わる規定

公表された規制本文が加盟国において国内法化されると、各国は2026年までに改修と開発の具体的計画を盛り込んだ建設部門の脱炭素化戦略を策定する必要があります。これには、EUで新たに建設される全建物を2030年までにカーボンニュートラルにすることも含まれます。

新たに建設される建物のエネルギー効率およびクリーンエネルギー使用に対応することが、この目標を達成する鍵となります。具体的には、化石燃料を使用した暖房を段階的に廃止し、非居住用建物の大半で屋上へのソーラーパネル設置を義務化することです。このほか、電気自動車用の充電スタンドを新設して家庭での車両充電への依存を抑えたり、駐輪施設を設けて排出フリーの移動手段を奨励したりする方法があります。

最終的な目標は、2050年までにEUの建築物ストックからの排出をゼロにすることに設定されています。既存の住宅の築年数を踏まえると、極めて意欲的な目標と言えます。EU域内の住宅のうち、約35%が1960年代以前に建設されています。この割合は国によって異なり、エストニアでは建物の10%ですが、デンマークでは45%にもなります。

業界へのインパクト

この新規定は最小限満たすべき水準であり、各国は2050年に向けた建物の脱炭素化ロードマップを2026年までに策定しなければなりません。このため、欧州の建設・不動産部門に非常に大きなインパクトをもたらすと考えられます。この移行を実現するには、一段と持続可能性の高い建設資材や技術を用いる必要があり、技能のある労働力も必要になります。建物が「資材バンク」、つまり、将来のプロジェクトでの再利用を目した資材確保の場になる可能性もあります。

EUは建物の改修支援のための予算を設けています。とはいえ、さらなる投資が必要であり、その額は国によって異なります。それでも、エネルギーコストの削減および建設費用の低減につながり、気候対策目標を達成できる可能性があるという点で、建物の脱炭素化は興味深い提案だと言えるでしょう。

不動産部門におけるサステナビリティへの移行については、「イングランドで着実に進む生物多様性 」をご覧ください。

1 指令に対し、ハンガリーとイタリアが反対票を投じたほか、クロアチア、チェコ共和国、スウェーデン、スロベニア、ポーランドは投票を棄権。

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