Biodiversity | ~ 3 min read
有害化学物質の時代はもう終わり?
欧州委員会が有害な人工化学物質の禁止を検討する中、その生産者と使用者へのエンゲージメントは、これらの有害物質のリスクの軽減に役立つ可能性があります。
「永久に残る化学物質(forever chemicals)」の使用の段階的廃止は、欧州委員会(EC)の重要な環境目標の一つです。PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)と呼ばれるこれらの物質は、飲料水や土壌から検出されており、環境と人体に持続的な悪影響を及ぼします。
PFASの健康リスクは重大です。PFASは人間の血液からも見つかっており、米国国立がん研究所は、数種類のがんやホルモン疾患との関連性を指摘しています。しかし、PFASの生産量は歴史的な高水準にあり、増大する一方です。欧州化学物質庁(ECHA)は、防止対策が講じられなかった場合、今後30年で440万トンのPFASが生態系に放出されると推定しています2。
規制の動向
これらの有害物質を制限する提案は、2020年の欧州グリーンディールの目玉の一つでした。しかし、この問題に関してECHAが実施したコンサルテーションでは、企業、団体、個人から大きな反対の声が上がりました3。ECによる最終決定は来年になる見込みです。
PFASの使用削減を促す要因は、規制だけではありません。PFASによる環境汚染に関連する訴訟は、化学業界だけでなく他の業界の企業にとっても大きな課題です。弊社のアプローチでは、PFASを生産している投資先企業だけでなく、使用している投資先企業も評価し、モニタリングしています。また、パッケージング、電子部品、工業品の企業などの生産者 に加え、アパレル、家庭用品・個人用品のメーカーやハイテク系ハードウェア企業といった、これらの化学物質の使用者をハイリスクに指定しています。
エンゲージメントの果たす役割
PFASからの脱却を促進するため、弊社は、ハイリスクのセクターにおける生産者と使用者を対象としたエンゲージメントのアプローチを開発しました。こうしたエンゲージメントを通じた対話では、ほとんどの企業がリスクを認めているものの、訴訟の可能性については消極的で、段階的廃止計画については態度を明らかにしていません。
アリアンツ・グローバル・インベスターズ―「永久に残る化学物質」に対するエンゲージメントのアプローチ
出所: Allianz Global Investors, 2024年4月
代替的なソリューションの開発をけん引しているのは、この機会を生かそうとする生産者というよりむしろ、顧客と規制当局の要求であるように見受けられます。ほとんどのPFAS生産者は、持続可能性を評価するためのフレームワークを有していますが、それらは通常、研究開発や新製品に関連しており、PFASの段階的廃止計画に関する透明性は高くありません。
弊社は、エンゲージメントの次の段階として、PFASの使用者に焦点を当てる予定です。さらに、昨年定めた弊社の生物多様性に関するエンゲージメントのフレームワークにおいて化学汚染が優先課題とされていることから、引き続き生産者と使用者に対する総合的な化学物質アセスメントに優先的に取り組みます。
1National Cancer Institute, PFAS Exposure and Risk of Cancer - NCI, 2023
2European Chemicals Agency, All news - ECHA (europa.eu), February 2023
3Chemsec, Japanese industry confronts EU’s PFAS ban amid domestic contamination discovery, February 2024