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金・銀はまだ輝けるか?
金と銀の価格は、過去最高値を更新した後に大きく調整しました。これは、市場の流動性低下、ボラティリティ上昇、証拠金要件の引き上げが主な要因です。しかし、中央銀行による需要の増加、財政面での懸念、産業用途、分散投資効果といった中期的なファンダメンタルズの要因は依然として健在だと考えています。
主なポイント
- 今回の金・銀価格の急落は、ファンダメンタルズ悪化のサインではなく、割高感のある上昇局面からの調整局面と捉えています。
- 金と銀は、実物資産としての価値や分散投資効果など、引き続きポートフォリオにもたらすメリットが大きいと考えています。
- 金属価格の動きに対して高い営業レバレッジを持ち、バリュエーションも魅力的な点から、当社では引き続き鉱山株を有力な投資手段として位置づけています。
金と銀の価格はここ数日で大きく下落し、地政学・経済・産業面など複数の要因が重なって生じた記録的な上昇局面が巻き戻されました。こうした値動きのタイミングを見極めるのは難しく、特に金を「不確実な相場環境での安全資産」とみなしてきた投資家にとっては戸惑いを感じる展開かもしれません。
しかし、今回の反転は急騰後の健全な調整であり、他の資産クラスへの波及は限定的にとどまる可能性が高いと考えています。金と銀が持つ“実物資産”としての価値や、ポートフォリオにもたらす分散効果といったポジティブな特性は引き続き損なわれていません。さらなるボラティリティの可能性はあるものの、貴金属市場を支える中期的なファンダメンタルズは今後もその見通しを後押しするとみています。
今回の下落の主な要因は?
今回の下落(1月29日〜2月2日のピークからボトムまで、金は最大▲21%、銀は最大▲41%)は、ボラティリティの上昇に伴う流動性の枯渇が一因となったとみています。ただし、この調整を位置づけるなら、金・銀の価格は1月中旬の水準に戻ったにすぎません。
もう一つの要因として、ドナルド・トランプ米大統領が、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長にケビン・ウォーシュ氏を指名したことも考えられます。ウォーシュ氏は一般的に「伝統的・保守的な選択」とみられており、利下げが連続して行われインフレを加速させるのではないかという懸念を和らげました。金は通常、インフレ環境で強含みやすい傾向があります。
ウォーシュ氏の指名が金価格下落にどの程度影響したかを断定するのは難しいものの、このような発表がある日は、投資家がヘッジ(例えば金)を解消する動きが出やすいとされています。
さらに、ボラティリティ上昇を受けて、世界最大のデリバティブ取引所運営会社であるCMEグループが証拠金要件を引き上げたことも投機的な建玉の保有を難しくしました。追加の流動性を確保できない投資家の売却を誘発した可能性があります。
金と銀の先行きは?
ここ数日の下落前まで、金と銀は力強い上昇が続いていました。金は過去1年間で70%以上上昇しており、その背景には、2025年初めに指摘していた構造的な変化(中央銀行の需要、財政不安、脱ドル化)がありました。さらに、米ドルの軟化、実質金利の低下、個人投資家の買いといった従来の要因も、上昇に拍車をかけました。こうした構造的な変化は、今後も市場の根底を支えると考えています。
銀の上昇はさらに目覚ましく、2026年1月だけで60%超の上昇となりました。背景には、構造的な供給変化、旺盛な工業需要、そして金を支えてきた地政学的リスクが追い風となりました。
ただし、貴金属を含む多くのコモディティは、上昇局面で「買われ過ぎ」の状態にあったとみられます。今回の反転は、平均回帰(ミーンリバージョン)のような動きであり、長期投資家にとっては新たな機会を生み得る展開だと考えています。
また、とりわけ金市場では、市場構造の特徴から今後も高いボラティリティが続く可能性があります。中央銀行は買い増しを続け、事実上「買って保有する」スタンスを取る一方で、価格の主要なドライバーである投資家需要は2025年以降ようやく増加してきた段階です。投資家は中央銀行よりもはるかに機動的に資産配分を見直すため、価格変動が大きくなるのは自然なことだと考えています。
鉱山株:現在の金・銀投資での当社の優先分野
貴金属へのエクスポージャーを求める投資家にとって、鉱山株は特に金属価格に対して高いレバレッジを持つ投資手段であり、現在のバリュエーションも過去平均と比べて依然として魅力的だと判断しています。キャッシュフローの改善により、企業は自社株買いや配当を通じて株主還元を拡大できるようになりました。当社では、2025年後半にウェイトを鉱山株へとシフトして以降、引き続き同セクターを有望とみています。足元の強いパフォーマンスにもかかわらず、極めて大きな利益率改善の余地については市場がまだ織り込み切れていないと考えています。