不透明感増す世界情勢
現在の世界情勢を鑑みると、のんびりくつろいでいる余地はほとんどないように思われます。新たな地政学的緊張が次々と浮上しており、直近では米国の関税政策をめぐる騒動に新たな展開がありました。米国の最高司法機関である連邦最高裁判所が、トランプ大統領の貿易政策に大きな打撃を与える判決を下したのです。同時に、イランをめぐる緊張も高まっており、結果は極めて不透明な状況です。
まず米国についてですが、最高裁はトランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき発動した、世界的に適用される関税は違法との判断を示しました。この判決は、貿易政策における大統領の行政権限を著しく制限するものです。新たな関税を課すことは引き続き可能ではあるものの、今後は別の法的根拠が必要であり、その範囲と期間も、より明確な制限を受ける可能性が高いでしょう。一方で、米国政府がすでに徴収した関税を還付する必要があるかどうかは不透明なままです。この問題は、場合によっては数カ月に及ぶ長期的な訴訟につながる可能性があり、さらなる政治的混乱と金融市場のボラティリティを誘発する恐れがあります。すでに多数の企業が還付を求める訴訟を起こしています。最も深刻な影響を受けた企業にとって、関税還付の見通しは収益予想の上方修正、ひいては株価の上昇につながる可能性があります。さらに広く見れば、最高裁が大統領の裁量権を抑制したことで政策の不確実性が減少し、リスクプレミアムが圧縮されるかもしれません。これは一般に、株式市場を下支えする要因となります。
同時に、イランとの紛争が激化するリスクも高まっています。軍事行動が予期されるだけで、エネルギー価格には上昇圧力がかかっています。世界の石油・液化天然ガス(LNG)供給の大部分が通過する要衝であるホルムズ海峡が封鎖されれば、その影響は極めて大きなものとなるでしょう。そのようなシナリオが現実化すれば、石油価格はさらに高騰し、金融市場における現在の比較的安定した状態をいつまで維持できるのかという不透明感を増幅させることになります。
実際、地政学的リスクと経済政策の不確実性を示す2つの指数—主要日刊紙のキーワードを使って算出される—は、すでに高い水準にありましたが、さらに上昇しました(「今週のチャート」参照)。このことは、リスク関連の報道が再び活発化していることを示唆しています。
こうした動きはこれまでのところ、市場全体にはほとんど影響を及ぼしていません。ただし、人工知能(AI)をめぐる期待を背景にしたセクターローテーションの動きは目立っています。ボラティリティは概ね安定的に推移しています。ダウ平均、S&P500種株価指数、DAX指数などは、一時的にせよ過去最高を更新しました。トランプ大統領が新たに一律15%の関税を発表したことを受け、誰の目にも不確実性が明白であるにもかかわらず、主要国の株価指数のテクニカルな状況は、株式市場が禅のような静観状態にあることを示しています。唯一、脆弱性の可能性を示唆したのはナスダック総合指数で、200日移動平均線を一時的に下回りました。相場の広がりを示す指標も、明るい見方を裏付けています。指数内の上昇銘柄と下落銘柄の数を測定する騰落株線は、株価上昇が幅広い銘柄に及んでいることを示しています。一方、これと矛盾するように見えるのが、一般にリスク回避の指標と解釈される金/銅レシオで、図式的に見ると不安の度合いが高まっていることを示唆しています。この比率は長期にわたり、長期平均を1標準偏差以上上回って推移している状態にあります。とはいえ、この乖離は主に、米ドルに代わる価値の保蔵手段として金に対する需要が再び高まっていることによるものと考えられます。この動きは、より構造的なテーマを浮き彫りにしています。ドルの支配は崩れていないものの、緩やかな侵食の兆候を見せているということです。しかし、信頼できる代わりの存在は、まだ見当たりません。
広範にわたる不確実性に満ちたこの環境下で、今何よりも求められるのは経済への支援です。そもそも、こののんびりした相場をもたらしたのは、シクリカルな上昇と、一般にトランプ大統領の「One Big Beautiful Bill」と呼ばれる米国の減税措置と結びついた企業収益の加速でした。
今週のチャート
出所:https://www.matteoiacoviello.com/gpr.htm, LSEG Datastream, AllianzGI Global Capital Markets & Thematic Research, 2026年2月24日。
過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。
来週を考える
週明けは、各地域の製造業購買担当者景気指数(PMI)の発表が控えています。直近の数値は、ドイツが50.7ポイント、ユーロ圏が50.8ポイント、英国が52ポイントでした。続いて、米国のISM製造業景気指数が発表されます。前回は52.6ポイントでした。火曜日には、ユーロ圏の消費者物価指数(CPI)の速報値が発表されます。週半ばには、さらに景況感指数が発表されます。主なものとして、ドイツのHCOB購買担当者景気指数(前回53.1ポイント)、ユーロ圏の総合指数(前回51.9ポイント)、英国のサービス業指数(前回53.9ポイント)などがあります。これらに加えて、ユーロ圏の生産者物価指数(PPI)も発表されます。直近では、前年同期比2.1%下落となりました。木曜日には、米国で週間の新規失業保険申請件数が発表されます。週の締めくくりとなる金曜日には、ユーロ圏の2025年第4四半期の国内総生産(GDP)改定値(速報値は、前期比0.3%増)と米国の非農業部門雇用者数が発表されます。後者は、市場に大きな影響を与えることの多い指標であり、前回は13万人増でした。
心穏やかに過ごせますように。