Achieving Sustainability
新たな気候変動対応を促進する
戦争、景気の減速、エネルギー価格高騰を背景に、今年は持続可能性へのコミットメントが試される1年となっています。困難にかかわらず、こうした問題は最終的にはエネルギー転換を加速させる役割を果たし、サステナブル投資機会を積極的に追求しようとする投資家を後押しすると思われます。
要点
- ウクライナでの戦争を原因とするエネルギー転換の後退は、気候変動の影響を見せつけるような異常気象が相次いだことから、短期間で終わると考えられます。
- 予想されるクリーンエネルギー支出の増大により、エネルギー転換の実現者と受益者への投資可能性が生まれる可能性があります。
- 今年の出来事は、クライメート・トランジションが生物多様性や公正な移行と密接に関連しており、ターゲットを絞ったポジティブなインパクトの成果が急がれることを浮き彫りにしています。
しかし同時に、ウクライナでの戦争により、エネルギーの安全保障と手頃な価格でのエネルギーの確保が優先され、エネルギー転換は後回しにされています。ロシアが欧州へのエネルギー供給を削減していることに対応するために、液化天然ガス(環境負荷が天然ガスの2倍)の輸入、石炭火力発電所の再稼働、化石燃料の探査・生産再開といったさまざまな方法が取られています。
弊社は、この後退は短期的なものであり、既存のエネルギーミックスの不足を公式に認識することが、2023年に後退から一転して大きく前進するための原動力になると考えています。結果として再生可能エネルギープロジェクトと必要な技術の開発が加速され、投資家がこれらの機会に投資し、利益を得ることが可能になるでしょう。
将来のエネルギーミックスの決定
現在のエネルギーミックスの問題点が明らかになる中、各国政府は将来のエネルギーミックスについて足並みを揃え、効果的な転換に向け協力する必要があります。業界団体のモデルによってかなり差はあるものの、未来のエネルギーについていくつかのトレンドが明確になっています。
- エネルギーミックスに占める化石燃料の割合を、今日の80%前後から20~30%に下げる必要がある
- 再生可能エネルギーの割合を、現在の15%から60~80%に増やす必要がある
- ほとんどのモデルは、原子力が引き続き大きな割合を占めると予測しており、現在の5%ほどから少なくとも10%に増やす必要があることを示唆するものもある
クリーンエネルギー転換のフロントランナーと受益者を見つける
ここ数十年、エネルギーインフラ投資は、特に欧州で慢性的に不足しています。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の「世界エネルギー転換展望2022」報告書は、2030年までに毎年5.7兆米ドルの投資が必要になると見積もっています。
投資の観点から見ると、予想されるクリーンエネルギー支出の増大により、エネルギー転換の実現者と受益者の双方の成長ポテンシャルに興味深い可能性が生まれる可能性があります。エネルギー消費パターンに対処するソリューションや新たな需要への投資をはじめ、エネルギー転換を支える方法はいろいろあります。
弊社は、国連持続可能な開発目標(SDGs)の環境・社会的目標に貢献するため、クリーンエネルギーの生成、効率的なエネルギー貯蔵、持続可能なエネルギー消費など、バリューチェーン全体にわたりソリューションを提供する企業を世界中から探し出し、測定し、投資することに努めています。
こうしたソリューションの中には、まだ成熟しておらず、規模を拡大するために投資を求めているものもあります。例として、水素ベースのエネルギー供給などの革新的技術、新たな形態のエネルギー貯蔵、排出削減のためのイノベーションなどが挙げられます。
エンゲージメントの必要性
気候変動に対する企業の姿勢、対策、目標を十分に理解するには、経営陣とのエンゲージメントが不可欠です。これは特に、転換の初期段階にある企業に当てはまります。また、企業の活動は、その企業が事業を行っている国の状況に照らして判断しなければなりません。したがって、業界団体への参加を通じた集団的なエンゲージメントは、複数のステークホルダーにわたる転換を効果的に促進する手段となる可能性があります。
弊社は長年にわたり、投資先企業のスチュワードシップに力を入れています。2021年のエンゲージメント活動では、気候変動をはじめ環境をテーマとするディスカッションが20%以上を占めており、今後さらに拡大する見込みです。
弊社が重視するのは、企業の開示情報とデータがネットゼロに向けた「現実の」進捗と一致していることです。言い換えれば、1.5℃目標に沿った真の脱炭素化や二酸化炭素排出量の削減に向けた取り組みと行動の証拠を確認したいと考えています。弊社独自のネット・ゼロ目標1と、親会社であるアリアンツの目標2に基づいて、弊社はこのために独自開発したアプローチと補完的なエンゲージメントを強化しています。
エネルギー転換の追い風
弊社は、一部でESGに対する反発があることや、ここ数カ月は気候変動対策よりも地政学的・経済的要因が優先されていることを認識しています。しかし、質の高い測定指標に焦点を当てることは、ネットゼロを達成できなかった場合のリスクが現実に差し迫っていることと相まって、エネルギー転換に対する注目を増大させ、エネルギー転換の追い風になると考えています。さらに、今年の出来事は、クライメート・トランジションが生物多様性や公正な移行と密接に関連していることを浮き彫りにしています。持続可能性を測定する方法の精度の向上は、ターゲットを絞ったポジティブなインパクトの実現を後押しするでしょう。
まとめると、持続可能性は2022年に初めて本格的な試練に直面し、後退した状況で2023年を迎えることになるものの、確実な転換を遂げる態勢は強化されているということです。今ほど、持続可能性のあらゆる側面でソリューションの必要性が切実に感じられている時代はありません。弊社は、より良い未来に向けた道筋を形作り、その未来への移行を支援するために、お客様と密接に関わり、協力していきます。
2 https://www.allianz.co.uk/about-allianz/environmental-responsibility/net-zero-asset-owner-alliance.html