Regulation | ~ 2 min read

森林破壊に対するアクション:新たなEUルールが採択

森林破壊の抑制に向けた重要な一歩として、EU理事会は欧州議会とともに、一次産品による森林破壊と森林劣化を防止するための新たな規則を全面的に採択しました。

規則案の趣旨は?

この新規則は、EU域内の特定のサプライチェーンに焦点を当て、「EU市場に出回る特定の主要商品が今後、EU域内外における森林破壊や森林劣化を助長しない」ようにすることを目指すものです1。EUは、生物多様性に影響を与える多くの一次産品の主要消費地域とみなされており、今回のアクションは、生物多様性損失の一因となっている被害のかなりの部分を食い止めることを狙いとしています。

これは新しい動き?

これは新しい動きというわけではありません。この規則はもともと、2021年11月に欧州委員会(EC)が提案したもので、趣旨については原則として合意されたものの、その範囲について、立法機関であるEU理事会と欧州議会との間で折り合いがついていませんでした。議会は、産品の範囲、森林の定義と規制対象の事業体について、より積極的な計画を求めていました。その結果、より多くの産品が含まれることになりましたが、サバンナに由来する商品と金融機関による投資はどちらも除外されます。

新規則による影響は?

注目すべきこととして、EUの輸入品は、世界の森林破壊の1割の原因となっています2。新規則は、森林破壊に関連するあらゆる産品、たとえば牛、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材などに影響を与えることになります。それらの産品をEU域内で販売したり流通させたりしている企業は、デューディリジェンスを実施し、自社のサプライチェーンが「森林破壊フリー」であるという重要な証拠を示すことを求められます。これらの規則に違反していることが判明した場合、EUでの年間売上高の最大4%の罰金を科せられる恐れがあります。

次のステップは?

欧州議会は4月19日に本規則を採択し、続いてEU理事会も5月16日に採択しました。2023年6月にこの規則が施行されると、大企業と中規模企業には18カ月の猶予期間を経て(2024年12月から)適用され、小企業と零細企業には24カ月の猶予期間を経て(2025年6月から)適用されます。

弊社の見解は?

今回の規則採択は、好ましい動きであり、世界に先駆けた取り組みとなります。サプライチェーンの透明性が確保されることになり、森林破壊を経済的に抑止する可能性があります。しかし、規則の実施は困難であり、大企業によるいっそうの努力が必要となるでしょう。また、EU域外の国々は、自国の企業の製品が不当な扱いを受けているとみなすかもしれないため、政治的な問題を引き起こす恐れもあります。

生物多様性と森林破壊については詳しくは、ロイターイベンツとの提携により刊行されたこちらのホワイトペーパーをご覧ください。https://jp.allianzgi.com/ja-jp/jp-insights/outlook-and-commentary/tackling-the-biodiversity-challenge 



1 https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_7444
2 https://www.europarl.europa.eu/news/en/headlines/society/20221019STO44561/deforestation-causes-and-how-the-eu-is-tackling-it

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