強まる緊張

年初は底堅さが目立った資本市場ですが、2月の動きは、水面下で緊張要因が拡大しつつあることを浮き彫りにしました。欧州と日本の株式市場は断続的に最高値を更新しましたが、米国の主要株価指数は横ばいで推移し、時には下落しました。全体的に堅調なマクロ指標や根強いインフレにもかかわらず、米国債利回りは低下しました。特に深刻な緊張要因となりつつあるのが、テクノロジーセクターです。データセンター機器を供給する企業が好決算に沸く一方で、ソフトウェア業界ではビジネスモデルの持続可能性に対する疑念が高まっています。同時に、中東における地政学的な火種は、米連邦最高裁判所の関税判決が米国内外の貿易政策に与える影響とともに、リスク環境に拍車をかけています。ここで、最近の動向を整理してみましょう。

イラン情勢:米・イスラエル共同のイラン攻撃とイラン最高指導者の死は、中東紛争の重大なエスカレーションを意味します。したがって市場は、さらなる地域的波及やイランの政権交代といった、新たな不確実性を含むシナリオにより重きを置かなければなりません。原油価格が再び、成長、インフレ、そして金融市場にとって重要な変数になる可能性があります。ここでカギとなるのは、世界の石油・ガス輸送の要衝であるホルムズ海峡が長期にわたり通航不能となる可能性があるかどうかです。現時点では、ほとんどの観測筋は長期封鎖をベースラインシナリオとはみていません。原油価格は対イラン軍事作戦開始直後に上昇しましたが、本稿執筆時点(3月初旬)では、供給途絶の長期化を織り込んでいるようには見受けられません。とはいえ、状況は流動的であり、注視する必要があります。過小評価すべきでない要因の一つに、1960年代半ば以降、エネルギー強度(国内総生産(GDP1単位を生み出すために必要なエネルギーの量)が大幅に低下していることです。例えば米国では、GDP 1単位の生産に必要なエネルギーは、1960年代のおよそ40%になっています。ドイツでは60年前の3分の1弱にまで低下しています。つまり、エネルギー価格上昇に対する世界経済の感応度は、時代とともに低下しているということです。

米国の関税判決:連邦最高裁判所は、1970年代の緊急法に基づく包括的な関税措置を否定する画期的な判決を下しました。この判決は、将来の関税率や輸入業者への還付の可能性をめぐって短期的な法的不確実性を生み出す一方、近年揺らいでいた米国の「チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)」体制に対する信頼を強化するものでもあります。投資家にとっては、実効関税率が若干低下することに対する期待と、代替的な法的根拠が模索される中で生じかねない、貿易政策をめぐる新たな緊張のリスクがほぼ相殺し合う形となるかもしれません。

テクノロジーセクター:ここ数週間、このセクターでは価格動向の乖離が顕著になっています。一方には、人工知能AI)への投資ブームを追い風とするデータセンターやチップ製造設備のサプライヤー、マイクロチップや半導体のメーカーがあります。もう一方にあるのは、ソフトウェア、データベース、情報・デジタルサービスなどのプロバイダーであり、投資家の目には、そのビジネスモデルが次第にAIによるディスラプションにさらされる可能性があるように映っています。問題は、次の四半期の収益ではなく今後510年の利益成長を適切に評価する尺度を見出せるかどうかです。こうした懸念は金融セクターにも波及しています。銀行は多数の投資ビークルに融資しており、それらがプライベートデットを通じてデータセンターやAIモデルおよびアプリケーションの拡張に資金を供給しているからです。その結果、AIのイノベーションサイクルは新たな局面に入っており、近年の高揚期から一転、厳しい業界淘汰への懸念が支配的になっています。

大局的に見ると、資本市場における上記の緊張要因の一方で、経済指標は概ね堅調であることに留意する必要があります。ここ数週間のデータは、少なくとも一時的に、米労働市場の健全性に対する懸念を和らげました。世界的に景況感指数は底堅く推移しており、長らく低迷していた製造業でも上昇傾向が見られます。企業収益の伸びは、多くの分野で極めて力強いと言えます。一方で、投資家の楽観ムードは、多数の不確実性要因に直面する中で明らかに後退しています。そのため市場は、ファンダメンタルズの強さと潜在的なリスク要因との板挟みになっており、この緊張関係が今後数カ月の動きを形作ることになりそうです。

緊張が高まっている中、次のような株式と債券への戦術的な配分が妥当と考えられます。

  • マクロ的な観点から見ると、短期的にはボラティリティの上昇が予想されるものの、地域・セクターを分散した株式を幅広くオーバーウェイトにするスタンスが引き続き妥当なスタンスと言えます。
  • テクノロジーセクターのパフォーマンスの乖離は、地域間でも進んでいます。AIの「敗者」とされるいくつかの主要企業が米国に上場している一方、チップやメモリの需給ひっ迫から最大の恩恵を受ける企業のいくつかは韓国や台湾(つまり、MSCIエマージング・マーケット指数の構成銘柄)の企業です。
  • 全体として、株式投資家はバランスの取れた地域配分を維持することが推奨されます。米国市場は、政治・マクロ経済面の不確実性が際立つと同時に、他市場に比べて明らかに割高なバリュエーションで取引されています。一方、日本と欧州に投資する投資家は、政治的により穏健な環境下で経済刺激策を期待することができます。一部の新興国市場は、テクノロジー機器サプライヤーの活況だけでなく、貴金属や工業用金属の価格高騰の恩恵も受けています。
  • 米ドルの先行きは引き続き、他の多くの資産価格を左右する重要な要因となっています。今後数四半期にわたり、ドルは巨額の財政赤字と政治的不確実性がもたらす構造的な圧力にさらされ続けるでしょう。しかし短期的には、堅調な経済指標と根強いインフレにより、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの可能性は低くなっています。これらの要因は、伝統的な「安全な避難先」(少なくともエネルギー危機の局面では)への資金流入とともに、ドルを下支えする可能性があります。
  • こうした緊張は、債券市場にさまざまな形で影響を及ぼしています。2月にAI関連のディスラプションに対する懸念が支配的になった際、債券はポートフォリオを安定させるアンカーとして恩恵を受けました。対照的に、イラン紛争の激化によるエネルギーショックは、少なくとも一時的に強いインフレ効果をもたらす可能性があり、利回り上昇と価格下落を示唆しています。
  • 社債については、タイトなスプレッド、ひいては低いリスクプレミアムにより、短期的な見通しが不透明になる可能性があります。イラン戦争によって強まるリスク回避と、AI投資に対する投資家の慎重姿勢の強まりが当初は重しとなるかもしれません。
少なくともポートフォリオの中では、緊張をいくらか和らげてはどうでしょうか。配当は非常に頼りになることが多く、弊社の試算が示すように、トータルリターンに有意義な貢献をします。

今週のチャート
エネルギー効率:GDP あたりのエネルギー消費量(1965年基準、kWh/米ドル)

出所:Our World in Data, AllianzGI Global Capital Markets & Thematic Research、 2026年3月。

過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。

投資テーマ:配当からの投資収入
  • ストックス欧州600指数を構成する企業が支払う配当金は、前年比約4%増の約4,540億ユーロに上る見込みです。ドイツ企業だけでも、配当金は2025年の推定560億ユーロから緩やかに増加し、およそ580億ユーロになると予想されています。
  • これは、欧州株式市場における配当支払額の増加という、数年来のトレンドの継続を示すものとなります。
  • 配当は、株式投資のトータルリターンにおいて重要な役割を果たします。過去40年にわたり、MSCIヨーロッパ構成銘柄の年率換算トータルリターンに占める配当の割合は39%弱でした。比較すると、MSCI北米構成銘柄ではトータルリターンに占める配当の割合は21%弱、MSCI太平洋構成銘柄では49%強でした。
  • 弊社の分析によると、配当付き銘柄への配分が高いポートフォリオは、配当性向の低い銘柄に重点を置いたポートフォリオに比べ歴史的にボラティリティが低くなっています。この効果は、配当支払い企業の方が一般により規律ある資本配分方針を採用していることと、定期的なインカム源がもたらす安定化効果を反映しています。
  • 重要なポイントとして、配当支払いは底堅い傾向があります。過去のデータを見ると、企業が配当を減額することは稀であり、むしろ段階的な増配、あるいは少なくとも既存の配当水準の維持を選好しています。
  • その結果、配当は資本所得の比較的信頼性の高い基盤となります。
緊張の中でも落ち着きが保たれますように。

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