Biodiversity | ~ 3 min read
イングランドで着実に進む生物多様性
今年2月より、イングランドでは住宅開発、工業・商業開発を新規に行う場合、生物多様性を正味で10%以上増やす(ネットゲイン)ことが開発業者に義務づけられています。
2024年はじめにイングランドで生物多様性ネットゲイン (BNG)が導入されて以来、開発プロジェクトを実施する開発業者に対し、自然生息地において測定可能な改善を実現することが義務づけられています。
改善されるのは開発地でもイングランドのほかの地でもよく、大規模土地所有者にとって未使用地で生物多様性改善プロジェクトを実施する機会になります。
生物多様性の増加は、少なくとも30年は保護、維持されなければなりません。開発業者がプロジェクトで生物多様性ネットゲインを達成できない場合は、代わりに生物多様性クレジットを購入することができます。
生物多様性ネットゲインの評価方法
この新しい規制はイングランドにおいて最低でも10%の改善を実現することを求めています。英国政府の諮問機関であるナチュラル・イングランド は、生物多様性の単位を評価する手段として、法定の生物多様性測定規準を策定しました。この測定規準では、規模、状態、種別、現地の戦略的重要性といった幾つかの尺度が考慮されています。
この生物多様性ネットゲインを算出する際は、まず新規プロジェクトで創出または改善された単位を評価します。次に、現地の生物多様性への損害に由来する単位を差し引きます。
生息地における創出または改善には、ほかのインプットも算入されます。例えば、生息地において目標の状態を実現するまでの時間や、元のプロジェクトからの距離などです。
このアプローチはイングランドに限定され、英国のほかの構成国では別の制度が運用されます。
その影響は?
この規制は現在、小規模用地も含め重要なすべての開発に適用されていますが、国家インフラプロジェクトについては2025年11月から遵守が求められる予定です。個人が私有地に立てる住宅など、個別に建設される小規模住宅は適用の対象外となります。
規制に影響を受けるのは、主にイングランドの専業不動産開発業者でしょう。今後イングランドでは、地方の計画立案機関によって生物多様性ネットゲインの審査が行われ、ネットゲインを基に承認または却下が決定されることになります。開発業者は生態学専門家を独自にスタッフに加え、必要な測定システムを導入する必要に迫られるでしょう。
弊社の見解
この規制により、開発業者はプロジェクトの計画に全面的に生物多様性を取り込まざるを得なくなります。このイングランドの動きは興味深く、意欲的、画期的なものと言えるでしょう。ただし、画一の定量的指標を生物多様性に用いることには疑問もあります。定性的指標を用いる方が生物多様性に適切に対応できる場合があるからです。もう1つの問題は、イングランドにおける不動産開発の量や、引き続く生態系の悪化レベルを勘案すると、10%という目標が果たして十分なのかという点です。
とはいえ、イングランドは世界で初めて生物多様性ネットゲインを法的要件にした国です。イングランドが道を開いたことで、ほかの地でも同様の動きが起こる可能性があります。