Sustainability | ~ 5 min read
原材料調達が発する警告
金属や鉱物に対する需要が増大しています。エネルギー転換や、テクノロジー製品に対する飽くなき欲求を満たすのに金属や鉱物が必要であることがその理由です。一方で、原材料の調達方法やサプライチェーンの安全確保に対する懸念も高まっています。
国連の推計によると、過去60年に世界各地で起きた地政学的内紛のうち、40%以上が天然資源の開発に関連しています。こうした状況が「紛争鉱物」という語を生み出しました。金属と鉱物に対する需要が世界的にかつてない勢いで拡大する中、そのサステナブルな供給を確保することが不可欠になっています1。
紛争鉱物とは、局地的な紛争が採掘や取引に影響を与える地で調達される原材料を指します2。そうした鉱物には、タンタル、すず、タングステン(3TGと呼ばれるグループ)、金などがあります。多くの場合、採鉱が武装集団の資金源となり、コンゴ民主共和国 (DRC)のような政情が不安定な地域で地域社会に危害を与えることがあります。紛争鉱物は、児童労働、強制労働や、コミュニティの強制立ち退きなど、最も悪質な人権侵害の幾つかにも結び付いています。
この種の鉱物は、携帯電話、自動車、医療機器などの日用品に必須のものです。サプライチェーンの安全を確保することが極めて重要ですが、簡単ではありません。適切な管理がなされなければ、紛争鉱物は最終的に電子製品の製造に使用されてしまいます。
サプライチェーンのクリーン化
こうした問題に対処する上で、投資家にも果たせる役割があります。特に、サステナブルなサプライチェーンを支持し、金融リスクや評判面のリスクを低減することはそのひとつです。また、EUと米国は、紛争鉱物に対するサプライチェーンのトレーサビリティを高めることを目的とした遵守要件をそれぞれ設け、こうしたリスクの軽減を図っています。このほか、EUも米国も企業に対し、OECDのデュー・ディリジェンス・ガイダンス の利用を推奨しています3。
2021年にはEU紛争鉱物規則 が施行されました。この規則はEUを拠点とする3TG輸入企業に対し、すべての紛争地域、高リスク地域における責任ある調達基準に従い、広範なデュー・ディリジェンスの義務を守らせることを狙いとしています。米国で2010年に施行されたドッド・フランク法1502条 は、製錬業者の起源に関するさらに広範な報告を義務付けています。ただし、その適用対象は製品に3TGが必須とみなされる企業に限られ、コンゴ民主共和国とその周辺の領域に限定されています。
採鉱企業へのエンゲージメント
企業がサプライチェーンを通じて鉱物調達にどのようなアプローチをとっているのか理解を深める上で、弊社は金属・鉱業セクターに対する投資家のエンゲージメントが優先課題になると考えています。以下のようなエンゲージメントを推奨しています。
- 明確なデュー・ディリジェンス・プログラムを実行する
- 高リスク地域のサプライヤーと提携する
- 責任ある採鉱慣行を推進する
- 製品認証やトレーサビリティの強力な基準を導入する
- 人権に対する定期的監査に取り組む
鉱物サプライヤーへの圧力軽減のため、これらのエンゲージメントが循環性イニシアチブ(使用済み製品の鉱物の回復、リサイクル、回収)などの効率化策によって補完されることが理想的です。弊社は、これがレジリエントでサステナブルなサプライチェーンに対する完全に循環的なアプローチになると考えています。そして、このようなサプライチェーンは投資判断においてますます欠くことができなくなっています。