Regulation | ~ 3 min read
原材料に対する重要な考え方
リチウム、コバルト、銅、ニッケルなどの重要原材料には、代替品がありません。そのため、重要原材料は経済的にも、戦略的にも重要です。これらの原材料はクリーンエネルギーへの転換やデジタルテクノロジーに欠かせないものですが、世界的な緊張の高まりから、そのサプライチェーンの脆弱さが露呈しています。
重要原材料(CRM)は、太陽光・風力発電や電気自動車技術に使用されます。よって、クリーンエネルギーへの転換をスピードアップする上で、重要原材料は非常に重要なものです。国際エネルギー機関(IEA)の試算によると、重要原材料の市場規模は3,200億米ドルで、この5年間に2倍に拡大しており、需要増と価格上昇が市場の成長を加速させています1。これらの重要原材料には代替品がなく、サプライチェーンのリスクに影響を受けやすい状況にあります。また、さまざまな国が経済上の重要原材料リストをそれぞれ明確に定めていながら、それを供給できるのはごくわずかな国に集中している現状から、その供給を将来的に確保することが難しくなっています。
明るいニュースは、重要原材料の予想需要が、現在計画されている重要原材料プロジェクトでまかなえる見通しだという点です。では、長期的な視点でみるとどうでしょうか。2030年までの地球の気温上昇を1.5°C以下に抑えるという目標を、再生可能エネルギーを用いたソリューションで後押しするためには、原材料がさらに必要になるとみられます。前述のIEAのレポートでは、現状では供給の多様性が不足していることが強調されています。この問題に解決策はあるのでしょうか。
レジリエンス向上を目指した規制
2023年3月に発表された欧州重要原材料法案 は、欧州連合(EU)が他国への原材料依存を減らし、域内で供給を確保することを狙いとしています。具体的には、採掘の最低10%、加工の最低40%、リサイクルの最低15%を欧州連合域内で行うことを目指しています。また、コバルト、ニッケル、銅などの戦略的原料は需要が拡大する可能性が高く、しかも生産が複雑なため、法案は単一国への依存を65%未満に低下させることを目標に掲げています。
法案はまた、新たな原材料使用を補完するために鉱物のサーキュラーエコノミー(循環経済) を発展させる必要性も強調しています。一方、欧州理事会 はさらに強い姿勢をとっており、目標をさらに増やすこと、原材料リストにアルミニウムを追加することを提案しています。
弊社の見解
重要原材料サプライチェーンのレジリエンスを高め、低炭素への移行を促す欧州連合の取り組みについて、弊社は好感しています。ただし、市場の需要を満たしながら採掘が環境と社会に与える負の影響を最小限に抑えるためには、鉱物利用に循環性をつくってこの取り組みを補完することが必要です。
弊社は年内に、サーキュラーエコノミーに関するリサーチペーパーを公表する予定です。ご注目ください。