Stewardship | ~ 4 min read
労働者の幸福を守るための連携
サステナビリティの観点から、労働者の権利をサプライチェーン全体で保護することへの関心が高まっています。サプライチェーンの透明性を高め、ステークホルダー間で連携を強めることが、多くの潜在リスクに対応する鍵になります。
このところの労働者の権利侵害や法の改正により、自社従業員はもちろんのこと、サプライヤーの従業員についても権利を保護することが企業に強く求められています。発現しかねない潜在リスクが存在することを踏まえ、弊社はこの問題の管理について企業へのエンゲージメントを行っています。
弊社は昨年、サプライチェーンの人権問題に関与するための独自のフレームワークを導入し、それ以降、大論争に直面している企業へのエンゲージメントを行っています。その目的は、労働者の権利に関連したリスクにこれらの企業がどう対処しているのか、また投資家として、権利侵害の恐れを軽減する対策の改善をどう推し進めていけるのかについて、評価することにあります。
企業の説明責任
ソーシャルメディアによってデジタルに接続された世界では、こうした問題によって瞬く間に悪評が立ちます。ところが、サプライヤーの人権リスクの可能性を特定、監視するのに有用な標準化されたデータが不足しており、これが企業の支障になっていることが、弊社のエンゲージメントから明らかになりました。
欧州理事会は先週、コーポレート・サステナビリティ・デューディリジェンス指令 (CSDDD)を最終承認しました1。この指令は、人権や環境への配慮を企業の事業展開やガバナンスに根付かせることを狙いとしたものです。企業の説明責任と透明性を高める一歩として、弊社はこれを歓迎しています。
図表1:CSDDDが定めるデューディリジェンスのプロセスの6段階
共同パートナーシップ
投資家と投資先企業の間のエンゲージメントは有用ですが、エンゲージメントが問題の発見、是正、方針というサイクルでバリューチェーンの全ステークホルダーに行き渡らなければなりません。1度の侵害が必ずしも企業とサプライヤーの関係終了を招くわけではありません。企業はまず、ベストプラクティスの共有とサプライヤー支援を通じて変化を促すことができます。ただし、侵害が繰り返し起きる、あるいは既定の期限内に問題が解決されない場合は、明確な拡大措置が必要になります。
業界の連携も重要です。テーマ別レポートで論じたとおり、人権は雇用に関わる広範なトピックに及ぶ問題であり、多くの場合は特段の注視と専用のアプローチを必要とします。人権にかかわるトピックには、例えば生活賃金や、児童労働と強制労働、結社の自由、団体交渉権、メンタルヘルスも含めた健康と安全、女性の権利などがあります。
アリアンツGIは今年、生活賃金と職場のメンタルヘルス、業界団体との連携に重点的に取り組んでいます。そうした活動の一環として、プラットフォーム・リビング・ウェイジ・ファイナンシャル への参加や、CCLAが主導する職場のメンタルヘルスに関する世界投資家声明への署名を行います。
より規範的な欧州規則をバリューチェーン全体の強力な連携に結び付けることができれば、人権リスクがより適切に管理されるようになり、投資先企業が論争の的になるリスクを低減できると考えています。