Biodiversity | ~ 4 min read
環境に優しいことがファッショナブル ?
衣料品や消費者用のその他繊維のトレンドは絶えず変化しており、このことがCO2排出量や資源利用に大きな負担を与えています。繊維業界の持続可能性を高めるにはどうすればよいのでしょうか。
繊維生産では、500万の人びとの基本的ニーズを満たすために大量の水を消費しています1。また、世界のCO2排出量の10%が繊維生産により生じています。にもかかわらず、衣料品の90%近くが埋め立て処分されています2(弊社ブログ「ファストファッションは地球の負担になる?」 を参照)。
リサイクルや再利用を優先させ廃棄物の量や天然資源利用を削減することで、繊維業界が気候や水に与えている重大なインパクトを減らし、業界のレジリエンスを大きく高めることが可能です。従来型のビジネスモデルはこのところサプライチェーンの問題に影響を受けましたが、いわゆる循環型の事業モデルを導入することでサプライチェーンの脆弱性を軽減できる可能性もあります。
循環性はリサイクルとは異なる新しい機会を業界にもたらします。循環性においては、耐久性を再考する、製品ライフサイクルを延長する、素材再利用やレンタル・修繕の新しいアプローチを定着させるといったことが必要になります。循環型のビジネスモデルに転換することで、繊維生産の染色や仕上げ工程を減らすことができます。世界のCO2排出量の3%、水の汚染の20%超がこれらの工程に起因しています3。
規制による後押し
持続可能な変革に向け業界を動かすことを狙いとした規制政策は数多く、この数年は特に増えています。例えば、2020年のEU循環型経済に関する行動計画 、2022年のEU持続可能な循環型繊維戦略 、および持続可能な製品のためのエコデザイン規制案などがあり、いずれも繊維製品の寿命を引き延ばすことに取り組むものです。2023年の拡大生産責任者規制の改正案、および廃棄物枠組み指令案では、製品ライフサイクルに対する責任が生産者に転換されています。
投資家にどのような利益があるのか?
成長機会は投資家の関心の的ですが、成長機会のある企業とは、循環型のビジネス慣行や、循環性のみを基に設計された新しいビジネスへの転換を図る企業です。持続可能なファッションには生産コストの上昇を伴います。それでも、業界に期待される循環型の慣行への転換に伴い、さまざまなイノベーション、つまり、持続可能でより手頃な価格の製品を可能にする修繕、再利用、リサイクル、レンタルなどのイノベーションが起こると思われます。例えば、下記のような取り組みが考えられます。
世界の衣料品業界の規模は1兆7,400億米ドルと推定されています4。循環型のファッション市場は今後数年で急成長すると見込まれており、業界の構造変化に投資機会が存在する可能性があります。
サーキュラーエコノミー(循環経済)について、詳細は弊社のリサーチペーパーでお読みいただけます:「Going round in circles – the value of waste(何度も循環させる—廃棄物の価値) 」
1 UN News, 2019
2 Ellen MacArthur Foundation, A new textiles economy: Redesigning fashion’s future, 2017, http://www.ellenmacarthurfoundation.org/publications
3 Kant, R., Textile dyeing industry: An environmental hazard, Natural Science, Vol. 4, 1 (2012), p.23.
4 Apparel - Worldwide | Statista Market Forecast, November 2023