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注目高まるAI:決算発表での言及に大きな変化
2022年末にオープンAIの大規模言語モデル「チャットGPT」が公開されて以来、四半期決算発表でのAIとその関連トピックへの言及が大きく変化しています。
- 2022年末にオープンAIの大規模言語モデル「チャットGPT」が公開されて以来、四半期決算発表での人工知能(AI)とその関連トピックへの言及回数が非常に増えたことは、生成AIシステムの急速な進歩とそのセクター横断的な重要性の高まりを反映しています。
- これまでのところ、AIに関する話題をけん引しているのは、テクノロジー業界のトップ企業ですが、テクノロジー以外の業界でもAIへの言及が着実に増えると予想されます。
- 長期的には、AIをめぐる話題は今後も活発に取り上げられ、経営陣が業務へのAIの統合計画やAIを利用した新製品の発売を発表することが増えるでしょう。
2022年末にオープンAIの大規模言語モデル「チャットGPT」が公開されて以来、四半期決算発表でのAIとその関連トピックへの言及が大きく変化しています。2023年6月30日までの3カ月間、すなわち第1四半期(1~3月)の決算発表期間が含まれる期間中、企業全体によるAI関連のトピックへの言及回数は、5年平均のほぼ2.5倍に増えました。
全業種にわたるAI関連の言及数
出所: Voya Investment Management, Bloomberg; 2023年7月現在。
AIへの言及:誰が、何を語っているのか?
当然のことながら、話題をけん引しているのは、エヌビディアやマイクロソフト、アドビといったテクノロジー業界のトップ企業です。こうした企業の経営陣は、AIの進歩が自社の事業や社会に与える影響について大胆な発表や予測を行っています。
「各社が生成AIをあらゆる製品、サービス、業務プロセスに適用しようと先を争う中、1兆ドルに上る世界のデータセンターインフラが汎用コンピューティングからアクセラレーテッドコンピューティングへと移行するだろう」―ジェンスン・フアン、エヌビディアCEO1
「次世代AIは、生産性向上の新たな波を解き放つだろう。私たちの日常業務や仕事から雑務を取り除くように設計された強力な副操縦士として、私たちが創造の喜びを再発見できるようにしてくれる」―サティヤ・ナデラ、マイクロソフトCEO2
「クリエイティブな領域における生成AIは、人間の創意工夫を増強することになる。(中略)それに関連する完全なワークフローがあることを認識している企業が勝者となる」―シャンタヌ・ナラヤン、アドビCEO3
これまでのところ、テクノロジー企業はAIの最新動向に対する見解を積極的に発信するようになっており、四半期決算説明会での言及は、5年平均の3.2倍に増えています。一方、それほど多くはないものの、非テクノロジー企業の間でも、AIへの言及が増えています。
AI関連の言及回数―テクノロジー企業と非テクノロジー企業の比較
出所: Voya Investment Management, Bloomberg; 2023年7月現在。
TMT: テクノロジー・メディア・通信
テクノロジー以外の業界でも、企業がAI分野、特に生成AIの最新動向を探り、取り入れる動きが進む中、AIへの言及が着実に増えると予想されます。実際、JPモルガンやイーライリリーのような業界のトップ企業の幹部が、生成AIなどのAIテクノロジーがそれぞれの業界にどう影響するかについての見解を表明しています。
「AIは非常に重要だ。これは、驚くようなテクノロジーだ。(中略)私たちはすでに、リスク管理や不正発見、マーケティング、予測などに使っているが、これらの用途はまだ氷山の一角にすぎない」―ジェイミー・ダイモン、JPモルガンCEO4
「私たちは生成AIを利用して、当社のサイエンティストが新薬につながる可能性のある新しい分子を特定し、(中略)人間が通常考えつくのとは異なるアイデアを見出せるように手助けしている」―デイブ・リックス、イーライリリーCEO5
AIをめぐる話題:次は何が取り上げられるか?
AIをめぐる話題は今後も活発に取り上げられると予想され、経営陣がAI領域における活動についてより詳細な情報を提供することが期待されます。企業は、業務へのAIの統合計画やAIを利用した新製品の販売などを強調するようになるでしょう。
たとえば、マイクロソフトは近日中に、生成AIを搭載し、Office 365スイートでの作業を自動化する365 Copilotの提供拡大を予定しています。弊社では、365 Copilotを皮切りに、さまざまなセクターの成長と生産性を加速する可能性を秘めた多くの製品が今後発売されると見ています。
長期的には、大規模言語モデルと生成AIなどの最新のAIツールへの非テクノロジー企業の投資によって、大きな生産性向上が実現することが予想されます。なお、その応用範囲の広さと変革の可能性を考えると、こうしたAI新しいツールの安全性と信頼性を確保するために民間と公的機関との調整が必要になると思われます。