インフレとの戦いにおいて検討すべき株式セクターと投資スタイル

2022/06/01
Aerial view sea port warehouse and container ship or crane ship working for delivery containers shipment

Summary

インフレが破壊的なほど高い水準にある間は、特定の株式セクターや投資スタイルへの資産配分を見直した方がよいでしょう。たとえば、エネルギーと一般消費財のセクターは歴史的に、インフレ期において生活必需品と公益事業よりも好調な成績を残しています。投資スタイルでは、バリュー、モメンタム、クオリティも、平均して好調な成績を収めています。

要点

  • エネルギーと素材などのセクターは、物理的な資産とコモディティとの結び付きが強いため、これらの企業の資産価値と製品価格は、インフレが進むと上昇する傾向があります。
  • スタイル投資を採用している投資家は、バリュー、モメンタム、クオリティを検討するとよいでしょう。これらの投資スタイルはインフレ期においてアウトパフォームする傾向にあることが、リサーチによって明らかになっています。
  • インフレをここ数十年で最高の水準に押し上げている要因として、世界的なパンデミックによる世界のサプライチェーン全般の混乱に加え、ウクライナ侵攻により、特にエネルギー、肥料、穀物の供給が乱れていることが挙げられます。

インフレが過去1世代での最高水準に近付く中、多くの投資家は長引くインフレ期が金融市場、そして自分のポートフォリオにどう影響するかを知りたがっています。過去の市場パフォーマンスを振り返ると、高インフレ期において、エネルギーなどのセクターは歴史的に、公益事業などのセクターよりもはるかに好成績を収めていることが分かります。これは、一部の企業は価格を設定できる立場にあるのに対し、価格を受け入れざるを得ない立場にある企業もあることとしばしば関係しています。さらに、特定の投資「スタイル」(バリュー投資やモメンタム投資など)も、インフレ期にアウトパフォームする傾向があることを示す、信頼できるリサーチ結果もあります。それゆえに、投資にあたっては、伝統的なセクターだけでなく投資スタイルも区別することによって、インフレ対抗戦略を立てることが重要となります。

インフレの高止まりが予想される中、投資家はどこに向かえばいいのか? 

高インフレ期は経済サイクルにままあることですが、今回のインフレサイクルには、これまでとは大きく異なる側面があります。世界的なパンデミックにより、世界のサプライチェーンは前例のない混乱に陥りました。さらに、ロシア軍によるウクライナ侵攻は、エネルギー、肥料、穀物の供給に混乱をもたらしています。こうした要因が相まって、物価の上昇率はここ数十年で最高水準を記録しています。その上、パンデミックは、労働市場も大きく変えました。これは、賃金インフレを生じさせ、インフレをさらに根強いものにしています。

では、投資家はインフレからどう身を守ればいいのでしょうか。歴史的に見て、経済が拡大しインフレが緩やかな時期には株式が比較的良いパフォーマンスを上げています。株式は、インフレ期待が高まると短期的には低迷するかもしれませんが、長期的にはインフレに対する良い「ヘッジ」となると一般にみなされています。しかし、すべての銘柄が同じというわけではありません。さまざまなセクターがインフレサイクルにどう影響されるかを掘り下げて調べることが大切です。 

セクターによってインフレへの反応は異なる 

手始めに、米国の経済―最も信頼できるインフレデータが入手できる―を産業別に見てみましょう。図表1は、米国株式全体(MSCI米国指数で測定)におけるインフレ(米国消費者物価指数の変化で測定)への米セクター別感応度を示しています。注目すべき点は、以下のとおりです。 

  • エネルギーや素材といった特定のセクターの企業は、物理的資産を所有あるいは支配していることが多く、コモディティベースの製品を販売していることも少なくありません。これらの企業の資産価値と製品価格はインフレとともに上昇するため、その株価はインフレと正の相関関係にあります。つまり、インフレが進むと一般的に、株価も上昇します。
  • 逆に、生活必需品や公益事業といったセクターの企業は、インフレと負の相関関係にあります。その大きな理由は、これらの企業がコモディティを消費しており、そのために投入価格が上昇することにあります。その結果、平均すると、これらの企業の利益率と株価は不利な影響を受けます。

図表1:インフレと正の(または負の)相関関係を持つセクター

米国CPIの変化に対する各セクターの感応度(MSCI米国指数、2022年4月)

Source: Allianz Global Investors. Data as at March 2022.

もう少し掘り下げて考えてみると、同じ業界でもインフレの影響をより強く受ける企業があるのではないかという疑問が浮かぶかもしれません。ここで物を言うのが、アクティブ・ポートフォリオ・マネージャーであり、勝ち組企業を探す彼らの能力です。企業によっては、価格を引き上げ、コストの上昇分を消費者に転嫁できることを考えてみましょう。アクティブ投資家は、売上と利益幅の変動を注意深く観察することで、そのような企業を探すことができます。利益幅が大きく、安定している優良企業は、高インフレ期あるいはインフレ高進期に業績が向上する傾向があるため、そうした企業を狙うのです。 

インフレへの反応は投資スタイルによっても変わる

多くの投資家は、全体的な市場平均よりも高いリターンを達成しようと、スタイル投資を採用しています。スタイル投資は、高インフレ期においてどのような成績を上げているのでしょうか。アリアンツ・グローバル・インベスターズのシステマティック株式チーム のリサーチャーたちは、米国が1940年以降経験した8回の高インフレ期におけるいくつかの有名な株式のスタイルファクターのパフォーマンスを調べました。図表2は、バリュー、モメンタム、クオリティという3つの株式スタイルについて、時価総額加重した市場ベンチマークを超える平均リターンをプロットしたものです。

  • バリュー株と呼ばれる、株価評価が魅力的な銘柄は、8回中6回でベンチマークをアウトパフォームしていました。
  • モメンタム株と呼ばれる、過去12カ月のパフォーマンス平均に基づいて選定された銘柄は、好調を維持し、同じく8回中6回でベンチマークをアウトパフォームしていました。これらの銘柄の平均超過リターンは、通常よりもインフレ時の方が上回っていました。
  • クオリティ株と呼ばれる、収益性の高い企業や財務体質が優良な企業は、データが入手可能な6回のインフレ期のうち4回で、ベンチマークをアウトパフォームしていました。

図表2:バリュー、モメンタム、クオリティは、高インフレ時に平均するとアウトパフォームしている

インフレ期における株式のスタイルファクターのパフォーマンスと市場の比較

出所:アリアンツ・グローバル・インベスターズ、H Neville, T Draaisma, B Funnell, C Harvey and O Van Hemert. 主要な出来事:米国の第2次世界大戦参戦(1941年4月~1942年5月)、第2次世界大戦の終結(1946年3月~1947年3月)、朝鮮戦争(1950年8月~1951年2月)、ブレトンウッズ体制の終焉(1966年2月~1970年1月)、OPECの石油禁輸(1972年7月~1974年12月)、イラン革命(1977年2月~1980年3月)、レーガン景気(1987年2月~1990年11月)、中国の需要ブーム(2007年9月~2008年7月)

投資のポイント

投資家にとって、以下の4つがキーポイントになるでしょう。

  1. 株式は、インフレ期待が高まると短期的には低迷するかもしれませんが、長期的にはインフレに対する良い「ヘッジ」となると一般にみなされています。
  2. エネルギーセクターと素材セクターの企業は歴史的に、インフレと正の相関関係にあります。つまり、これらの企業の資産価値と製品価格はインフレが進むと上昇する傾向にあります。
  3. 同じセクターの中でも、一部の企業は、価格を引き上げ、コスト増を消費者に転嫁しやすい立場にあります。アクティブ・アセット・マネージャーは、売上と利益幅を注意深く観察することで、そうした企業を探すことができます。
  4. 歴史的に、バリュー、モメンタム、クオリティの各投資スタイルは、インフレ期にアウトパフォームする傾向があります。

新興市場に対して楽観的になれる理由

2022/06/08
Glimmers of light: reasons for emerging-markets optimism

Summary

2022年に入ってから武力衝突、財政困難、インフレ・ショックが新興市場に打撃を与え、苦境が続いています。それでも新興国債券がより広範なシステミック・リスクにさらされることはないとみられ、市況回復を期待する楽観的見方を裏づける根拠もない訳ではありません。

要点

  • 2022年に入り、インフレ進行、ウクライナ侵攻、財政難が新興市場に重くのしかかっています。
  • ロシアとスリランカの債務危機の背後にある要因が、他の国々で繰り返されるとは考えにくいでしょう。
  • 歴史的に米国の利上げ局面では新興国債券が好調なパフォーマンスを見せており、今回も回復の可能性が投資家を勇気づけることになるでしょう。
  • 過去の金融危機以降、新興市場は成熟度を高めてきましたが、投資家は銘柄選択の手法を維持すべきでしょう。