利用拡大や新しい画期的なツールの開発が相次ぐ生成AI

初回の生成AIの導入記事をリリースして以来、2か月強経過した程ですが、ここ数か月でも生成AI関連での新しい話題が連日のように出ています。生成AIの利用拡大トレンドは続くと同時に、次々と新しい画期的なツールが誕生し、関連企業の成長見通しの押し上げにも繋がっています。生成AI市場は、引き続き非常に魅力的な投資機会を提供するでしょう。

要点
  • 生成AI開発企業は安全性などへの対応を進めており、チャットGPTをはじめ、生成AIの利用拡大トレンドは継続
  • マイクロソフト、アルファベット、アドビなどの数多くの企業が革新的な生成AIツールを発表
  • 生成AIの拡大から高い成長見込みやビジネス機会を発表する企業も次々と登場
利用拡大が続くチャットGPT、安全性などへの対応を進める開発企業

生成AIを代表するツールのチャットGPTですが、ここ数か月は同ツールの問題点とも言われる、偽情報の拡散、サイバー攻撃への利用、個人情報や機密情報のデータ保護への懸念などにも焦点が集まり、一部の会社や一時イタリアでチャットGPTを使用禁止にする、といったニュースが出ていました。しかしながら、チャットGPTの利用拡大トレンドは変わらず、近いうちにアクティブ・ユーザー数が2億人に到達するとも言われています(図表1)。

また、チャットGPTの開発元であるオープンAI社も上述の課題などへの対応をしっかりと進めています。個人データの取り扱いについて改善策を導入したことで、イタリアでも禁止が解除され利用出来るようになりました。最近では、オープンAI社は、AIを安全に使えるようにするための対策や試案を公募すると発表し、世界中の利用者からのフィードバックを基に、より安心して利用出来るよう一段と改善を行う方針です。実際のところ、オープンAIを含む新興企業からマイクロソフトやアルファベットなどの大手企業まで、多くの生成AI開発企業が、生成AIの使用に伴う安全性を重要視する姿勢やAI規制強化への重要性を訴えています。まだまだ多くの課題があるチャットGPT、生成AIの利用ですが、開発企業が単に利用増加や利益を追求するのではなく、問題点への対応もしっかりと進めていることは非常に重要な点であり、チャットGPTをはじめ様々な生成AIツールの利用拡大トレンドはまだまだこれから加速すると考えられます。

図表1:チャットGPT 月次アクティブ・ユーザー数(百万人)

出所:Similarwebからのデータを基にアリアンツGI作成。2023年5月時点。特定の有価証券について、推奨または勧誘するものではありません。

AIにより雇用が失われるという懸念は行き過ぎ?
プロンプトエンジニアという新しい仕事も誕生

生成AIのような画期的なツールの利用拡大で、雇用が失われる、という懸念もよく言われます。大手IT企業IBMのCEOが「バックオフィス職の30%は今後5年でAIが代替すると予想」という発言をしていますが、過去そうであったように失われる仕事もあれば、新しい仕事も誕生しています。例えば、今回の生成AIの台頭では、プロンプトエンジニアという仕事です。仕事の生産性を大きく向上させたりキャッチフレーズやクリエイティブな画像も生成出来たりと、非常に便利な生成AIですが、うまく使いこなすには的確な指示が必要です。プロンプトエンジニアとは、生成AIに対して、高品質のコンテンツを生成するように、言葉、文章、コードなどの指示を出すエンジニアのことを言います。チャットGPTで簡単なことを聞くだけなら指示を出すための専門家は不要ですが、もっと複雑な利用であったり、画像生成などの領域では、すぐに理想とするコンテンツを生成するのは難しく、的確な指示を出すことが出来るプロンプトエンジニアへの需要が高まっています。

マイクロソフトやアルファベットなどが革新的な生成AIツールを続々と発表

さてここ数か月だけでも、数多くの企業が新しい生成AIツールを発表しており、仕事の生産性が一段と向上し、我々の日々の生活も更に便利になる見込みです。以下に最近発表された主な企業と生成AIツールを挙げます。

  • マイクロソフト:3月に、エクセルやワード、パワーポイントなどのマイクロソフト・オフィスに生成AI機能を組み込んだアプリケーションを発表しました。AIが簡単な指示を基に、ワードにおける文章の作成や要約、エクセルにおけるグラフ作成や分析、パワーポイントにおけるプレゼンテーションを作成する機能などを紹介しました。更に5月には、マイクロソフト・ウィンドウズにおける対話AIの組み込みや、AIコンテンツの安全性に関する新たな諸策を発表するなど、機能拡大を進めています。
  • アルファベット:5月に、Bard(バード)と呼ばれる、チャットGPTのような会話型の生成AIサービスが世界180カ国で利用可能になると発表しました。また、改良版の大規模言語モデルを検索エンジンやGmailなどを含む、同社の多くのサービスに活用するとも発表しています。
  • アドビ:3月に発表していた画像生成AIツールFirefly(ファイアフライ)を、5月に一般開放しました。これは、簡単な言葉や文章を基に、画像生成ができるAIツールです。また、画像の編集、置き換え、追加なども出来るGenerative Fill(生成塗りつぶし)という画期的な機能も発表されました。
  • セールスフォース:3月に同社のツールに生成AIを組み入れたEinstein GPT(アインシュタインGPT)を発表しました。これは、営業担当ごとにパーソナライズされたEメールやマーケティング・コンテンツの自動作成を行うツールです。更に、5月初旬には、ビジネスチャットのスラックにおいても生成AIの統合を発表しました。
  • アマゾン:4月に同社のクラウドサービス上において、テキストの生成や要約を行うことが出来るTitan(タイタン)と呼ばれる生成AIツールなどを発表しました。また、Eコマースなどの同社のプラットフォーム上において、広告主が使用出来る画像やビデオを生成するAIツールの開発にも取り組んでいると発表しました。
生成AIの拡大から高い成長見込みやビジネス機会を発表する企業も次々と登場

このように新しい生成AIツールを発表する企業が出ている一方、生成AIの利用拡大から恩恵を受けている企業も出ています。特に半導体メーカーなどは、生成AIの利用増大に伴い関連する半導体の需要も大きく増加しており、大きな恩恵を受けている企業が出ています。また、生成AIの拡大からビジネスチャンスに言及する企業も多く見られます。以下は主な企業例です。

  • エヌビディア:前回の記事でもGPUの需要拡大から恩恵を受けていると紹介した同社ですが、5月の決算発表時に、生成AI関連からの旺盛な需要を受け、5-7月期におけるデータセンター部門の売上が前年同期比で2倍以上になる、といった非常に力強い売上見通しを発表し、市場の注目を集めましたを驚かせました。
  • マーベル・テクノロジーズ:同社は、データセンターや通信ネットワーク用の半導体製品を提供しています。5月の決算発表時に、2024年1月通期のAI関連製品の売上高が前年比で少なくとも2倍、そしてその後数年間も急成長を続けるとの見通しを発表しました。
  • ブロードコム:同社は、データセンターや通信インフラを中心に幅広いソリューションを提供する半導体メーカーです。6月の決算発表時に、生成AIからの需要増加により、同社の売上全体に占めるAI関連製品の売上が2022年度の10%から2024年度には25%まで拡大する見通しを発表しました。
  • また、ネットワーク関連サービスのクラウドフレア、サイバーセキュリティ提供企業のパロアルトネットワークス、データ分析ソフトウエア提供のスプランクパランティアなどの企業がここ数か月の間に、生成AIの利用拡大に伴うビジネス機会、収益増加見通しなどに言及しています。
一段の利用拡大と成長が期待される生成AI。魅力的な投資機会を提供

上記のように、今後より幅広い企業が生成AIの利用拡大から恩恵を受けてくると考えられます。また、今回は主に大手企業を中心に、最新の生成AIツールについて紹介しましたが、大手企業以外でも生成AIツールの開発は増えています。前回挙げたショッピファイ(ECサイト開発支援)、ユニティ(ゲーム開発用プラットフォーム)などの企業のほか、ハブスポット(営業支援ソフトウエア)、スナップ(SNSサービス)、ウェンディーズ(ファーストフード)などの企業が、自社のツールに生成AI機能を組み込んだサービスを発表しています。

今後も、続々と新しい生成AI関連企業が誕生すると同時に、生成AIの拡大から恩恵を受ける企業も増加し、市場全体での高い潜在的な成長性から、引き続き非常に魅力的な投資機会となることが期待されます。

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