米連邦準備制度理事会
FRB、6月の会合は金利据え置きの見通し、なお今後の道筋は依然として不透明

米連邦準備制度理事会(FRB)は6月18日の会合で金利を据え置き、4会合連続でフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標レンジ4.25%〜4.50%を維持すると予想します。
要点
- 米連邦準備制度理事会(FRB)は6月18日の会合で金利を据え置き、4会合連続でフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標レンジ4.25%〜4.50%を維持すると予想します。
- 5月上旬開催の前回FOMC以降、トランプ政権は関税に関する態度を後退させ、相互関税の90日間の適用保留を発表し、7月上旬まで10%のベース関税に留めました。
- 株式・クレジット市場は、関税政策が企業のファンダメンタルズに大きな悪影響を与えない程度に十分緩和されるとの市場認識を反映し、4月2日のいわゆる「解放の日」後における当初の下落を完全に取り戻し、金融環境も緩和に転じています。
- しかし、米国(および世界)の経済見通しに関する成長の下振れリスクは依然として顕著であり、市場の警戒感がやや薄れているおそれがあります。
- FRBは関税が経済活動に及ぼす影響を引き続き見極めており、今後しばらくは様子見モードに留まる可能性が高いと見られます。
- 弊社は、6月会合での政策金利据え置きを織り込んだ短期金利市場のプライシングに同意します。足元の市場プライシングは、関税による米国の国内需要への影響で米国の景気循環の勢いが鈍化することを前提に、FRBが年内に2回の利下げを行うことを見越しています。米国による90日間の関税適用保留の終了後、7月に世界的な貿易戦争が拡大したり、インフレリスクが幾分緩和したりすれば、FRBの利下げ観測が再び前倒しされる可能性があると考えます。
- 足元のマクロおよび政策環境は、米国イールドカーブのスティープ化取引に有利に働くと考えます。為替市場に関して、米ドルが構造的な逆風に直面していると考えており、ポートフォリオにおける米ドルのショート(売り)ポジション保有を選好します。
米連邦準備制度理事会(6月17日-6月18日)の見通し
2025年の米国の実質GDP成長率に対する市場コンセンサスは、年初の2.2%[1]からわずか1.2%に低下しました。関税適用を90日間保留し、10%のベース関税に戻したことで、短期的に市場は落ち着きを見せました。また、米国と主要貿易相手国との2国間貿易交渉に対する期待もあり、世界貿易の見通しは4月初めに懸念されていたよりも悲観色が弱まっています。一方、トランプ関税は、米国の裁判所からも一定の制約を受けています。
最近の米国のマクロ統計は、関税発表とその一部撤回を反映して強弱まちまちとなっています。今後数カ月で、最近の調査データの弱さがどの程度まで実数値に表れるかが判明しますが、最終的に、米国の消費者は引き続き物価上昇によって実質所得が圧迫されるでしょう。インフレ面では、FRBが重視するインフレ指標であるコアPCEインフレ率が4月は前年比2.5%の上昇と、関税発表を前に望ましい方向に進み、最新のコアCPIインフレ率も、近い将来のインフレ動向に対する市場の懸念を幾分和らげました。しかし、消費者インフレ期待は依然として数十年ぶりの高水準に近い状況にあり、短期的な政策アプローチにおけるFRBの慎重姿勢の裏付けとなっています。
米国政府が、市場の注目を関税から逸らし、減税や規制緩和のような成長志向の政策に向けようとする中、債券市場も米国財政の持続可能性に対する懸念を強めつつあります。他の主要格付け2社に次いで、5月にはムーディーズが米国政府の信用格付けを最上位のAaaから1段階引き下げてAa1としました。さらに、米国では一連の財源なき減税を含む予算案が最初の関門である下院を通過しました。この法案は、上院を通過しトランプ大統領の署名を受けて法律となる前に部分的な修正が行われる可能性が高い一方、一部の主要市場において財政見通しに対する投資家懸念が明らかに高まっています。
マクロ経済環境により、FRBは様子見を続ける姿勢です。成長とインフレの見通しに関する不確実性が高まっており、最近のFRBのコメントからは、近い将来の政策スタンス変更に消極的なことが見て取れます。一方、金融政策の緩和を求める政治的圧力がFRBにかかっており、米国の政策の信頼性には引き続き疑問が残ります。
弊社は引き続き、これらのマクロおよび市場リスクをポートフォリオに活かす最良の手法は、米国イールドカーブのスティープ化取引であり、米ドルのショート(売り)ポジションへの選好であると考えます。
[1] All Data from Bloomberg, 12 June 2025