金利を読み解く

2026年の展望:新たな道を切り開く

新年を迎えるにあたり、警戒心と積極性の両方が求められる投資環境が形成されつつあります。長い間、世界の経済成長の重要な牽引役を担ってきた米国では、制度面の課題を抱え、資産のバリュエーションは割高になっている可能性があります。AI関連銘柄は引き続きポートフォリオに不可欠な構成要素であるものの、投資家は銘柄を厳選して、予期せぬ影響がもたらすリスクを軽減すべきでしょう。

こうした環境において、欧州、中国、インドは、広範囲かつ分散された、魅力的な価格水準での投資機会をもたらす可能性があります。インフレ率のトレンドは各国においてまちまちであり(米国では上昇、他の地域では低水準にとどまる)、金融政策も対照的であるため、ボラティリティの高い世界で底堅いインカムを追求する投資家にとって、地域分散の重要性がより浮き彫りになっています。新興国においては、中央銀行の政策の柔軟性が高まっており、米ドル安が進行する可能性も相まって、新興国債券の下支えとなる可能性もあります。

プライベート・マーケットは今となっては単なる「代替投資先」ではなく、長期的なポートフォリオ構築の基盤となっています。この領域では、プライベート・クレジットとインフラは、長期的な価値形成の強い原動力としての役割を担っており、実体経済への資金供給、インフラ・ギャップの解消、そして脱グローバル化、脱炭素化、デジタル化などの構造改革の実現に寄与しています。成功の鍵は運用者の慎重な選定と規律ある引受にかかっています。

2026年全体の道筋を描くには、プライベート・マーケットおよびパブリック・マーケット双方において、幅広い資産クラスをカバーする多様なツールが必要になると考えられます。急速に変化する投資環境下において、新たな道を切り開く際の参考になるように、2026年に向けて主要なアイデアと投資機会をまとめた弊社の専門家の知見を共有できることを大変嬉しく思います。

マイケル・ クラウツバーガー

パブリック・マーケット 部門CIO

エドゥアール・ ジョザン

プライベート・マー ケット部門責任者

要点

  • AIブームが関税と貿易戦争から生じた問題の影 響を緩和し、世界の経済成長は底堅さを示してい ます。しかし、米国ではテクノロジー株のバリュエ ーションが割高になっており、集中度が極端な水 準に達していることから、慎重な銘柄選択が必要 になると考えられます。
  • 米国外へのテクノロジー投資の広がりが成長を 持続させ、真にグローバルなAI革命が到来するこ ともあり得ます。欧州株は現時点で、多くの米国株 よりも魅力的な株価水準であると弊社は考えて います。
  • インフレ率の動向は地域ごとに異なっていますが、 主要市場ではインフレは全般的に抑制されていま す。大部分の中央銀行は金利を正常化しており、さ らなる緩和の余地があります。こうした明るい見通 しは引き続きキャリーを下支えし、十分に分散投 資されたポートフォリオに有利に作用する可能性 があります。
  • スタグフレーション・リスクと米ドル安の可能性 を受け、世界の投資家は米国資産への高いエ クスポージャーを再考するかもしれません。米ド ルの終焉を予想するのは時期尚早ではあるも のの、欧州とアジアで発行される債券、ならび に金には上昇の余地があると考えられます。
  • 米国で発生したノンバンク融資問題により、プ ライベート・クレジットに注目が集まっていま す。クレジット・スプレッドは過去と比較してもタ イトな水準で推移していますが、システミック・ リスクは発生しないとみており、金利上昇と投 資家の需要に主導される形で、引き続き力強い 成長見込みを据え置いています。
  • エネルギー転換とデジタル・インフラへの資金 拠出により、長期資産や非流動性資産を保有し 得る投資家を含め、あらゆる資産クラスで投資 機会が生まれると考えられます。

専門家による2026年の展望については、以下のセクションをご覧ください。

貿易戦争の痕跡

「貿易戦争の混乱の影響が残る中でも、2026年の世界経済はAI革命と積極的な政策対応に支えられ、堅調さを維持する見込みです。ただし、来年は制度としての耐久性、政策の柔軟性、より分断された世界への適応力が試される年となりそうです。」

クリスティアン・シュルツ

チーフ・エコノミスト

世界経済は、なかなか消えない貿易戦争の余波に対応しながら2026年を迎えることになります。関税を巡る応酬はほぼ安定状態に入っていますが、分野別の追加制裁措置により、サプライチェーンの混乱が続く可能性があります。そのため、外国製品の供給減と価格上昇が米国の経済成長の重石となり、貿易と資本の流れが分断されています(供給ショック)。一方、輸入品に対する米国の需要減少は、世界の多くの地域で過剰生産をもたらす結果となっています(需要ショック)。

こうした逆風にさらされる中、世界のGDP成長率はごく小幅な減速にとどまる見込みです。弊社は、経済成長率を2.7%前後1と予想しており、主要地域では、経済成長は、進行中のAI主導の投資サイクルと積極的な政策対応により下支えされるとみています。インフレ動向は乖離すると見込まれます。米国のインフレ率は3%を超える見込みですが、欧州とアジアでは、物価上昇圧力が弱まり、利下げの余地が生じる可能性があります(7ページの図表1を参照)。

地政学的リスクは、ロシアと東アジアを中心に依然として高止まりしています。中東情勢の緊張緩和の兆しは貴重な好材料となっています。米国と中国は引き続きAI革命を主導しており、他の地域への波及効果は加速しています。

テクノロジー銘柄のバリュエーションと規制の緩い金融セクターには警戒が必要ではあるものの、低金利と民間セクターの適度な負債水準によって、金融システムが不安定化するリスクは低減されると考えられます。

米国経済:試される底堅さ

米国経済は引き続き底堅い成長を示す見通しですが、経済成長率は潜在成長率を若干下回る1.5~2%程度に減速すると予想されます。AI投資ブームと、2026年11月の中間選挙前に前倒しで実施される見込みの適度な財政刺激策により、実質所得と従来型の企業投資への関税がもたらす悪影響は部分的に緩和されそうです。

インフレはしばらく高止まりし、平均3%を上回る水準で推移すると予想されますが、関税に起因して上昇するリスクは残っています。政治の監視下にさらされている米連邦準備制度理事会(FRB)は、2026年も利下げを継続し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは3.25~3.50%まで引き下げられると見込まれます。FRBの対応姿勢はハト派色が強まっており、目標を上回るインフレ率に直面しても利下げを行う可能性が高まっています。しかし、法的課題や政治的圧力により、制度上保証されているFRBの独立性が試される展開となる可能性があります。

テールリスクは非常に大きくなる見込み

  • 上振れリスクとしては、AIの進歩による投資ブームの広がり、生産性向上、および経済状況が「ちょうど良い」とされるゴルディロックス・シナリオ下で利下げが可能になることなどが挙げられます。
  • 下振れリスクとしては、労働市場の低迷が個人消費に波及して景気後退の前兆となることや、関税の余波によってスタグフレーションの動きが大きくなることなどが挙げられます。
  • 主なイベント・リスクは、トランプ大統領によるリサ・クックFRB理事の解任の試み(1月と予想)と相互関税に関する最高裁判所の判決などです。米国の中間選挙も注目すべき重要イベントです。米政権は政治的支持基盤を強化するため、減税や歳出拡大(またはその両方)を模索するかもしれません。この動きとともに、民主主義制度への攻撃が激化し、投資家の信認の重石となる可能性があります。

欧州:退屈なほど健全

欧州は、2026年のGDP成長率が1~1.5%と、緩やかな景気回復が見込まれます。実質所得の上昇と低い失業率は個人消費の支えとなり、その効果が世界的な貿易摩擦に関連した産業の弱さを打ち消す働きをすると考えられます。

インフレ率は2%を下回る水準を維持し、欧州中央銀行(ECB)は2026年上半期に25bp利下げを行い、政策金利を1.75%まで引き下げると見込まれています。財政政策は、ドイツを筆頭に緩やかな下支え効果をもたらし、経済成長率は0.4~0.5%押し上げられると考えられます。

英国はより困難な道のりを歩んでいます。予想されている増税と歳出削減(対GDP比でちょうど1%程度の財政再建に相当)によって、成長率は1%を下回る水準まで押し下げられる可能性があります。ただ、マクロ経済の安定性が改善していることから、イングランド銀行(BoE)による3%への利下げへの道が開かれると弊社は予想しています。主要中央銀行のECBとBoEは政治的な重圧を受けていないため、そのため他の通貨に比べてユーロとポンドは上昇しています。

欧州では重要な選挙が予定されていないため、地経学的課題に対して決定的な対応をとることができます。こうした課題の2つの例としては、ロシアとウクライナの戦争および関税に起因する世界のサプライチェーンの分散化が挙げられます。しかし、2027年に大統領選挙を控えるフランスの政治的な停滞は、欧州の動きに大きな不安をもたらしています。

家計が貯蓄よりも支出を増やせば、欧州の経済成長は、予想以上に力強いことが裏打ちされるかもしれません。 その他の上振れリスクとしては、テクノロジーの波が欧州に到達した場合に、政府支出と生産性向上による成長の押し上げ効果が予想以上に大きくなる可能性などがあります。

アジア:乖離する動向

アジアでは、成長率とインフレ率ともに圧力を受けています。従来の貿易は米国の関税という逆風に直面していますが、テクノロジーのサイクルは投資と域内貿易を後押ししています。インフレ率は小幅上昇の可能性がありますが、需要主導によるものではなく単にベース効果による押し上げとなりそうです。

多くの中央銀行は既に金融緩和を行っており、2026年上半期は中国を含め、わずかな追加利下げにとどまるとみられます。的を絞った財政刺激策が追加支援策の可能性としてあり得ます。

中国の経済成長は、米国の関税と未だ低迷する内需からの圧力を受け鈍化する可能性が高いとみられます。過度で有害な競争に対処することを目的とした「反内巻」政策はデフレ緩和に寄与する可能性はあるものの、物価の上昇圧力は依然として弱いと言えるでしょう。中国政府は消費を促進しようとするものの、成長の重要な牽引役として引き続きハイテク製造業に重点を置くものと考えられます。

日本は、規律を伴うリフレ路線を継続し、政府の景気刺激策を活用した成長押し上げを目指しています。ただし、一時的な要因が次第に薄れるにつれ、総合インフレ率は2%に向かって鈍化する可能性は高いでしょう。日本銀行は景気回復を抑制するような過度な利上げを行わないよう、政治的な圧力にさらされる公算が大きいとみられます。弊社は、1回または2回の利上げで十分だと考えます。しかし、高市早苗首相によるアベノミクスと似通った財政拡大により、中期的には物価上昇圧力が高まることもあり得ます。今後1年間は、制度面での安定性、政策の柔軟性および分断が進む世界への世界経済の適応能力が試される展開となると考えられます。

断片化する世界における経済の底堅さ

貿易戦争による混乱の影響が残る中、2026年の世界の経済成長はAI革命と積極的な政策対応に支えられ、底堅さを保つと予想されます。インフレ動向は地域における乖離が見込まれており、米国ではインフレ率が上昇するものの、欧州とアジアでは低水準を維持すると予想されることから、非対称な金融政策環境が形成されるとみられます。

図表1:インフレ率の対比:高すぎる米国、低すぎる欧州と中国

図表1:インフレ率の対比:高すぎる米国、低すぎる欧州と中国

出所:Bloomberg、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、AllianzGI Economics & Strategy team(2025年10月23日現在のデータ)。HICP = 調和消費者物価指数。PCE = 個人消費支出。CPI = 消費者物価指数。



2026年に投資家が最も注目すべきことは何か?

急速な技術進歩を背景に、投資先は米国やアジアのテクノロジー・セクターから他の業種、地域へと広がる可能性があります。中央銀行の独立性や自由貿易など、世界経済にとって重要な課題が残る中で、こうした追い風は、多くの地域における金融緩和と財政緩和と相まって、世界経済の底堅さを持続させる要因になると考えられます。

戦略的自律性の作用

「市場構造に目を向けると、現在は米国よりも欧州の方が有利な状況にあります。主な理由は集中リスクが低いことです。米国では少数の大型株が主要指数を支配しているのに対し、欧州はより幅広く分散された投資機会を提供しています。」

マイケル・ヘルドマン

株式部門CIO

地政学的な変化を受け欧州は再び存在感を示そうと目覚ましい改革を進め、欧州株式市場は世界においても非常に重要なポジションを担っています。戦略的自律性の向上を目指し、欧州はより拡張的な財政政策を採用しており、特にドイツにおける大規模な支出策は、防衛・軍事装備だけではなく、欧州大陸の産業基盤、インフラ、そしてイノベーション能力の活性化を促す刺激策として機能しています。財政の展開に加え、金融政策も引き続き欧州経済の下支えとなっています。インフレ率が抑制されていることから、イングランド銀行と欧州中央銀行(ECB)は共にハト派スタンスを継続し、こうしたスタンスはバリュエーションと明るいセンチメントの更なる下支えとなると弊社は予想しています。

米国よりも欧州を選好

市場構造に目を向けると、現時点で欧州は主として集中度リスクが低いため、米国よりも有利な状況にあるとみられます。比較的少数の超大型株が主要株価指数の大部分を占める米国とは異なり、欧州は現在、より幅広く分散された投資機会をもたらしています。これに加えて、欧州株はあらゆるセクターにおいて多くの米国株よりも魅力的な価格水準で推移しており、バリュー株とグロース株共に魅力があると弊社は考えています。

米国株は「解放の日」後の急落以降、大幅に反発をしていますが、基礎となる経済指標は、経済環境がより脆弱であることを示唆しています。現に成長見通しの低迷に加えて、高関税の影響が持続しているため、インフレ率が上昇する可能性は高く、米国は2026年にスタグフレーションのリスクに直面すると考えられます。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを継続すると見込まれているとはいえ、金融政策の決定への政治的圧力を巡る懸念が高まっており、市場の信認が揺らぐ恐れがあります。

バリュエーションについては、現時点で米国株が割高であるとみています。記録的な水準近辺に達した集中度を併せて考えると、プレミアムが正当化される企業に焦点を絞り、ファンダメンタルズの裏付けがない企業へのエクスポージャーを減らす、選別的な投資アプローチが求められています。米国は確かに長期的な強みを保っています。特に、AI分野では投資家にとって依然として豊富な機会があり、株式市場関連のニュースでも主導的な立場を保っています。しかし、現在の株式市場では慎重さと選別が求められています。

インド株:多様性と流動性

アジアについては複数の追い風を受けており、インドは現在、高い潜在性を持つ市場として際立った存在となっています。極めて有利な人口動態に加え、インドのデジタル・インフラは急成長中で、2023年に世界のリアルタイム・デジタル決済全体に占めるインドの割合は46%に達していました。2ワクチンとジェネリック医薬品の世界最大の供給国でもあり、医薬品輸出の約3分の1は米国向けとなっています。3また、グローバル企業がサプライチェーンと製造拠点の分散化を目指しているため、インドは「チャイナ・プラスワン」戦略の恩恵を今後も享受できる絶好の状況下にあります。

インド株式市場は多様性も流動性も高く、先進国と共通する特徴を数多く持っています。時価総額が50億米ドルを超える銘柄が200以上あり、バリュエーションは世界のベンチマークと比較して低い水準となっています。GDPと1株当たり利益の成長率に関するコンセンサス予想は、インドの強固なファンダメンタルズ、政策の安定性および活気にあふれる起業家精神を反映して、他の新興国市場よりも高い水準にあります。米国との継続的な緊張関係により、やや困難な状況に陥る可能性はあるものの、インドは当面の間、アクティブ運用では魅力的な投資先となるとの見方をとります。また、米国の関税に起因する最近の株価の落ち込みによって、魅力的な買い場がもたらされています。

中国:安定への期待

中国では、株式市場の見通しは逆風と追い風が複雑に入りまじって形成されています。一方では、米国との将来の貿易関係がいまだ不透明であると同時に、テクノロジーおよび不動産に関する規制を巡りやや不確実性が残っており、急速な高齢化による人口動態への圧力などを背景に、外国資本の流出が見受けられます。しかし、中国政府は、利下げ、政府支援による上場投資信託(ETF)の買い入れ、流動性の支援策など、的を絞った景気刺激策を導入してこれらの課題に対応しています。これらの取り組みがうまくいけば、消費者信頼感の回復、家計の貯蓄率上昇、経済の一層の安定が期待されます。

中国株式市場は依然として厚みがあり、魅力的な価格水準で推移しています。また、外国人投資家の保有比率が低く、長期の資本流入について逆張りの投資機会が存在します。AI分野を中心に中国のイノベーションの力はいまだ過小評価されている一方、大規模な年金改革や米国以外の重要な戦略的同盟の可能性も、投資家が現在、中国に魅力を感じるのに一役買っていると思われます。株式のパフォーマンスは変動が大きく、さらにニュース報道を受けたボラティリティの高まりは今後も続くと予想されますが、中国本土株は2025年に好調なパフォーマンスを示し、特にイノベーション、国内消費、戦略的セクターに注目する投資家にとって、長期見通しは変わらず良好です(図表2を参照)。

図表2:中国株式は、2024年半ばから好調に推移

(米ドル建て、基準値を100として指数化)

図表2:中国株式は、2024年半ばから好調に推移

出所:LSEG Datastream、Wind、Allianz Global Investors、2025年7月31日現在のデータ。


魅力的な枠組みを提供する3地域

見通しを比較すると、欧州には財政拡大、防衛費および金融政策の支援を受けた構造面の再評価の機会が生まれています。インドは、人口動態、デジタル化の進展、そして世界のサプライチェーンへの一層の統合を背景に、長期的な成長エンジンとなっています。そして中国は、厚みのある市場の潜在性、イノベーションにおけるリーダーシップ、そして政策支援を背景に、長期的な投資機会が存在します。これら3地域は共に、変化する世界秩序を乗り切るための投資的価値のある株式配分の枠組みを形成しています。米国がバリュエーションと政策という逆風にさらされる中、欧州、中国、インドは、分散されて底堅く、未来を見据えた投資機会を示しています。

2026年に投資家が最も注目すべきことは何か?

中国市場は複雑さをはらんでいますが、この勢いがありダイナミックでイノベーション主導の経済がもたらす長期的な投資機会が損なわれることはないと考えられます。大規模な政策支援と、魅力的な株価水準にある株式市場が相まって、中国は今後の株式配分戦略において、依然として重要な位置を占めると考えます。

分散投資とアクティブ運用でレジリエンスを追求

「先進国経済はトレンド並みの成長が見込まれる一方、新興国はインドや東南アジアの一部を中心に、明確な成長プレミアムを維持すると予想されます。この成長格差は、地域ごとの金利やクレジット戦略に新たな投資機会を生み出します。」

ジェニー・ゼン

債券部門CIO

2026年の世界の経済成長は、主要国における成長志向の政策設定に下支えされ、引き続き底堅く推移すると予想されます。先進国の中央銀行は、過去数年間にわたる積極的な金融引き締めサイクルにより、政策金利を中立水準に正常化する可能性は高いでしょう。財政政策は引き続き緩和スタンスに傾いており、各国政府は、くすぶり続ける貿易および地政学的な不確実性に対処するため、インフラ投資と戦略的投資を優先しています。インフレ率は引き続き地域によって異なっており、米国では上昇し、ユーロ圏では引き続き鈍化し、アジアおよび主要新興国市場では抑制される可能性は高いと考えられます。

こうした経済成長とインフレの組み合わせは、債券にとって全体的に良好な環境の裏付けとなっています。成長とインフレの動向、そして政策の軌道はやや乖離すると予想されるため、アクティブ・ポートフォリオでは、選別的なデュレーションとクレジット・ポジションを巡る投資機会が生じると考えられます。

そうした環境とはいえ、バリュエーションがタイトな状況下では、ボラティリティは高まる可能性が高いでしょう。制度面のレジリエンスと政策の柔軟性は、引き続き試される展開となると弊社は考えています。また、分断化が進む世界に対する経済の適応能力も試されることになるでしょう。このため、寛容さではなく慎重さを、不均衡よりも質の高さを、パッシブ運用よりもアクティブ運用を、そして低流動性よりも高流動性を重視する姿勢が求められます。

政策支援により成長圧力が抑制

経済成長は引き続き圧力にさらされていますが、的を絞った財政・金融政策による支援とテクノロジーへの投資が下支えとなっています。先進国はトレンド成長率ペースに近い経済成長率が見込まれる一方、新興国市場はインドと東南アジアの一部に牽引され、明確な成長プレミアムを保つと予想されます。こうした乖離により、地域間でデュレーションとクレジット・ポジションを選別する機会が生じています。

金融政策においても、特に先進国と新興国の間で乖離が見られます。

  • 先進国市場:政策金利はさらに低下する見込みであり、FRBは3%に向けて、ECBは2%を下回る水準まで利下げを行うと予想されます。イングランド銀行は、極めて緊縮的な財政スタンスを背景に、現在織り込まれているよりも大幅な利下げを行う可能性があると弊社は考えています。一方、日本では、インフレ・リスクの高まりを受け、引き続き政策の正常化への圧力が強まっています。
  • 新興国市場:ディスインフレの勢いは減速していますが、実質金利がプラスであることを踏まえると、いくつかの中央銀行には未だ追加緩和の余地があります。ブラジル、メキシコ、インド、南アフリカなど複数の国が段階的な利下げを行える態勢にあり、これは現地通貨建て債券のパフォーマンスを支える材料になると予想されます。

タイトなクレジット・スプレッドに警戒を

クレジットについては、投資家の需要増加を背景に、底堅いファンダメンタルズと好調なテクニカル要因を反映し、スプレッドは引き続き歴史的にタイトな水準で推移しています。しかし、サイクル後期の動きを受けて亀裂が生じており、警戒を要するとみられます。。金利感応度の高いセクターではストレスの兆候が見受けられ、攻めの姿勢かつ負債水準が過剰で不正が発生している(可能性のある)低格付けの発行体が破綻し始めています。

現段階では、システミック・リスクは小さいと弊社は考えています。この種のセクターに対する銀行のエクスポージャーは、融資総額と資本の観点からみて管理可能と思われ、銀行システム全体のファンダメンタルズはほぼ堅調であると考えられます。全般的に、パブリック・クレジット(公募債市場)は、良好な状態を保っています。ファンダメンタルズは高い水準から弱まりつつあり、セクター間の格差は拡大しているものの、レバレッジは以前のサイクルよりも低い水準にとどまり、インタレスト・カバレッジはより健全であり、低迷する発行体が(一部はプライベート・マーケットに向かい)排除されたことでハイイールド債指数のクオリティは向上しています。

ただし、バリュエーションはマクロ・ショックに対する緩衝材としてあまり機能していません。警戒が必要な環境ではありますが、キャリーを諦めるのは時期尚早だと弊社は考えています。

アクティブ運用、分散投資、リスク管理

こうした複雑な環境下では、債券投資家にとっていくつかの明確な留意点があると考えています。

  • アクティブ運用が必要不可欠。タイトなスプレッドと非対称リスクを受けて、厳密な銘柄選択とダイナミックな配分が求められます。
  • 地域の分散化。先進国市場のデュレーションはレジリエンスをもたらし、新興国債券は利回り向上と分散効果を提供してくれるでしょう。
  • 流動性とリスク管理。政策のサプライズや地政学的ショックがもたらす潜在的な混乱を乗り切るためには、機動性と流動性を維持することが重要と考えられます。

2026年に向けた弊社の見方は、債券投資家にとって、環境は良好であるが、微妙な状況下にあるというものです。 世界各国の政策は緩和スタンスを維持しており、成長期待はプラス方向に傾いているものの、タイトなバリュエーションと信用ストレスの台頭を受けて、警戒感、分散投資、選別、そして積極的なリスク管理の必要性が明白になっています。

分散投資に関しては、マクロ経済のファンダメンタルズの構造的な改善を踏まえ、新興国市場とアジアは引き続き中長期の投資対象として優れているとの見方を変えていません。一方で、投資家は、様々な投資手段を用いてポートフォリオの分散も検討すべきでしょう。例えば、マルチ・セクターのインカム・ポートフォリオに、変動利付債、クオリティの高い証券化クレジット、転換社債を分散投資手段として選別的に追加することは妥当と考えられます。社債のスプレッドが縮小しているため、デュレーションと格付け調整後ベースでは、証券化商品はいまだ相対的に魅力的な水準を示しています。全般的に、真の意味でグローバルかつ分散投資されたクオリティの高いポートフォリオを構築し、積極的にデュレーション管理を行うことで、今日のマクロ経済環境下でも、堅調なインカムを底堅く創出できると考えています。

2026年に投資家が最も注目すべきことは何か?

弊社は引き続き、米国を中心とする主要クレジット市場において、パブリック・マーケットとプライベート・マーケット両方の信用イベントの動向を注視していく方針です。ただし、現時点では、ストレスの兆候が強まる公算は大きいものの、銀行の強固なファンダメンタルズにより打撃を吸収できるため、銀行システムへの混乱の広がりは抑制される可能性が高いと考えられます。こうした破綻により貸し手が慎重姿勢を強め、銀行システム全体の与信条件の厳格化に至る可能性があるか否かを注視する必要があります。

2つの現実の話

「株価の変動に備えるため、当社は引き続き、ファンダメンタル分析とクオンツ分析の強みを融合させた堅実なアプローチで、銘柄選択とAI関連投資を進めていきます。」

グレガー・MA・ハート

マルチアセット部門CIO

2026年を見据えると、世界の投資環境は引き続き、地政学的緊張、経済の再調整、そしてテクノロジーの技術的破壊といった複雑な相互作用によって形成されています。2026年は楽観と慎重さが共存し、市場の底堅さと再調整の間で揺れ動き、相反するものが存在する一年になる見込みです。

地政学的環境は、いまだ不確実性をはらんでいます。ただ、市場は対立と妥協のリズム、特にトランプ大統領と各国首脳間の駆け引きに慣れつつあります。貿易およびレアアースなどの戦略資源を中心に、パワー・バランスは変化しています。今回、新たな緊張を見据えて備えてきた中国は、米国に政策見直しを迫り、結果として世界経済のダイナミクスはより均衡がとれていると考えられます。

今のところ市場は想定外の底堅さを示している

しかし、トランプ政権が税負担を負わせ、保護主義政策に走る中、世界経済は驚くべき底堅さを示しています。米国の従来産業の成長指標は依然として低調ですが、テクノロジーとAIは引き続き景気拡大の強力な成長エンジンとなっています。ただし、問題となるのは、この勢いがどれだけ持続できるかという点です。

特にこのような環境においては、機動的なアプローチは不確実性を乗り越えるための効果的な方法となり得るでしょう。つまり、十分に分散された投資構成の強みを活かし、ポートフォリオのアクティブ運用に一段と重点を置く方法です。

金融政策は既に、世界の流動性の追い風として作用しています。特に第1四半期には、米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が共に追加利下げを行うと弊社は予想しています。欧州では、インフレ・データが予想外に下振れし、ECBがさらにハト派的な姿勢を強めることもあり得るかもしれません。一方、米国の財政政策は年初に最も大きな影響を及ぼすと予想されますが、その長期的な効果はいまなお不透明です。

好調な米国株式市場に調整リスクあり

米国株のバリュエーションは依然として高い水準ではあるものの、特にテクノロジー・セクターにおける力強い利益成長は、堅調な市場が持続する裏付けとなっています。重要なのは、投資家のポジションはまだ買われ過ぎの水準には達しておらず、さらなる上昇の余地を示唆しているということです。特に今後3~6ヵ月間において、多くの市場参加者が短期的な反落局面に乗じて市場に再び参入してくることが予想されます。先行きについては、より不透明な様相を呈しています。弊社は、過剰債務によって引き起こされる「ミンスキー・モーメント」は想定しておらず、これは2008年との大きな違いです。ただ、業績が失望を呼んだ場合は、調整局面入りのリスクが高まります。

AIおよび関連テクノロジー銘柄のバリュエーションが既に真の意味での収益ポテンシャルを反映している可能性を市場が認識し始めているため、正常化の局面が続くこともあり得ます。

潜在的な株価変動に備えるため、弊社は引き続き、ファンダメンタルズ分析とクオンツ分析の強みを組み合わせ、銘柄選択とAI関連へのエクスポージャー全般に対して堅固なアプローチをとる方針です。

新興国市場については、全体として前向きな見方を据え置いています。国ごとに大きな差はあるものの、この資産クラスは依然として保有率が低く、魅力的なバリュエーションを示し、米ドル安の下支えを受けています。中国は引き続き景気刺激策を実施し、AI/テクノロジー分野を優遇しており、世界第2位の経済大国としての魅力が高まっています。

戦略的には、市場の集中度、高いバリュエーション、そして特に2026年下半期におけるスタグフレーション・リスクの過小評価を理由に、弊社は米国株に対しては引き続きやや慎重姿勢を保っています。欧州は、より明るい見通しを示しています。業績の勢いは回復基調をたどり、ドイツの財政支援は大きな後押しとなることが予想されます。しかし、フランスは2027年の大統領選挙まで膠着状態が続く可能性が高く、今後数四半期において大統領選挙が不確実性をもたらす要因となるため、注視する必要があるでしょう。

新興国債券は追い風を受ける見通し

債券については、インフレが抑制されている状況において、財政刺激策によって市場の裾野拡大が見込まれるユーロ圏債券、特にドイツ国債を選好しています。弊社が最も注目しているのは引き続き新興国債券であり、米ドル安、内需の拡大、および先進国市場と比べて相対的に規律のある財政・金融政策の恩恵を受けています。

引き続き投資適格債とクロスオーバー(投資適格とハイイールドの中間に位置する格付けの債券)を選好していますが、スプレッドの更なる縮小の余地が限られているとみており、そのため実質上キャリーの効果を見越しています。ハイイールド債のスプレッドは割高感があると弊社はみていますが、絶対利回りは個人投資家にとっては依然として魅力的であるかもしれません。ただ、弊社は中立のスタンスを維持しており、マルチアセット投資家として、危機時にエグジットしやすい株式を選好しています。

ポートフォリオにおける米ドルへのエクスポージャーを再考する機会

為替市場は、2026年に再び重要な役割を果たす見込みです。。欧州に有利なインフレ格差とFRBに対する政治的圧力を背景に、米ドルの下落再開が予想されますが、その軌道は2025年よりも緩やかになる見込みです。このような環境下では、ポートフォリオにおいて高水準となっている米ドルへのエクスポージャーの見直しが必要となるでしょう。株式については、通常で米国上場株式の主要株価指数に占める割合が70%を超えているにもかかわらず、投資家が米ドル建てポジションをヘッジするのは稀なことです。同様に、債券の配分は米国の発行体に大きく偏っている場合が多く、一部の指数では米ドル建てへの集中度が極めて高い状況にあります。

米国へのエクスポージャーは、より抑制的な水準にとどめ、他の通貨および地域の債券がもたらす恩恵によって補完することも妥当と考えられます。例えば、日本円は、政治の安定とコア・インフレ率の上昇に対応する日本銀行の政策転換に支えられ、特に米ドルの信認が一段と低下した場合、安全資産としての地位がさらに強化されることもあり得るでしょう。

金は、短期的にはピークに達した可能性はありますが、弊社にとって依然として重要な分散投資手段となっています。弊社はポジションの保有を継続しているのの、銀および金鉱銘柄など代替の投資先も模索しています。金鉱銘柄は、金価格の上昇と比べるといまだ魅力的な価格水準で推移し、低金利の恩恵を受けています。低金利は、資本集約型の事業運営の負担を軽減します。

銘柄間のボラティリティの高まり

ボラティリティは依然として弊社の投資戦略の中心的テーマであり、弊社はこれを独立した資産クラスとして捉えています。実のところ、過去2年間の株価指数のボラティリティは平均を下回っていましたが、市場の調整局面では急伸しました。こうした環境において、株式市場の力強い上昇局面の後も投資を維持し、混乱時には戦術的に利益を確定することができました。しかし、水面下では個別銘柄のボラティリティは高い水準に達しており、銘柄間の相関性が低いため、より広範なリスクが見えなくなっていると考えられます。この脆弱な動向は、市場の幅が狭まったり、マクロ・ショックが発生したりした場合、より持続的な調整が生じるきっかけになることもあり得ます。

2026年に投資家が最も注目すべきことは何か?

米ドルと米国株式との相関関係が変化しています。過去の調整局面では、米ドルは通常、株価と逆方向に動き、ヘッジとしての役割を果たしました。しかし、第2次トランプ政権以降、この相関関係は弱まり、相場下落時の信頼性が低下しています。こうしたトレンドが2026年まで続く場合、一部の投資家、特にリスク重視の投資家は、米国へのエクスポージャーを圧縮し始める可能性があります。

投資機会に照準を合わせる

「インフラは、強固なポートフォリオを支える基盤となります。エネルギー転換とデジタル化の進展により、この資産クラスは長期的でインフレ耐性のあるキャッシュフローと、伝統的市場との低い相関を生み出します。世界的な政策支援が加速する中、インフラへの投資はもはや経済を支えるだけでなく、未来を形づくる存在となっています。」

マルタ・ペレス

インフラ部門CIO

「プライベートクレジットは主要な資金調達手段として進化を続けています。成功の鍵は、規律ある審査と、欧州・アジア市場やセカンダリーなど、構造的な需要と魅力的なリスク調整後リターンが見込める分野の選別です。」

セバスチャン・シュロフ

プライベート・クレジット& プライベート・エクイティ 部門CIO

2026年を迎えても、プライベート・マーケットは、ポートフォリオの長期パフォーマンスの原動力であり続けています。2024年に18兆米ドルであった世界のオルタナティブ資産は、2029年には30兆米ドルに達する見通しでおり、プライベート・マーケットは分散投資ポートフォリオで中心的な存在になると考えられます。4プライベート・マーケットの発展の次の段階は、エグジットのペース鈍化、流動性ダイナミクスの変化、投資家の参加拡大、および新たな投資機会によって構築されるでしょう。

弊社が考える2026年に市場を牽引する5つの主要トレンドは以下の通りです。

  1. セカンダリーの成熟によるコア配分への転換
    市場からのエグジットの選択肢が限られ、リターンの分配が遅れていることから、投資家は利益の実現とポートフォリオの改善に向けて他の手段を模索しています。足元の環境では、既存の投資ファンドの持分や継続ファンド(資産の保有期間を延長するファンド)のセカンダリー取引は、緊急流動性ツールから、ポートフォリオ運用のコア手段へと変化しています。

    投資家は、ヴィンテージのリバランス、集中リスクの管理、そして成熟したポートフォリオへのアクセスのために、セカンダリー市場の活用を増やしています。ゼネラル・パートナー(GP)にとって、継続ファンドの存在は主要資産の保有期間の延長、そしてアーリーステージの投資家には流動性の提供を実現します。セカンダリー市場は現在、プライベート・マーケットの柔軟性向上において重要な役割を果たしています。2026年を見据えると、特にプライベート・デットとインフラ・セクターでセカンダリー市場は大きな投資ポテンシャルがある一方、プライベート・エクイティはセカンダリー市場において引き続き最も拡張性が高く、確立された分野となっています。
  2. 戦略と地域の分散
    アロケーターは、伝統的なバイアウト戦略の枠を超えて、インフラ、プライベート・クレジット、トレード・ファイナンス、実物資産などに投資対象を拡大しています。これらの各資産クラスは、今後10年間で数%のペースでの成長が見込まれています。また、地域分散も加速しており、アジアは、現地市場の好調さと規制の成熟化に支えられ、資金流入のシェアが拡大しています。伝統的な金融機関が撤退し、カスタマイズされた非希薄化資本への需要が高まっていることから、アジアのプライベート・クレジット市場には魅力的な投資機会が台頭しています。

    気候変動関連技術、エネルギー転換、デジタル・インフラなどのセクターに特化したスペシャリスト・ファンドは、投資家が対象を絞りこんだ専門知識と差別化されたリターンの源泉を求めているため、注目を集めています。
  3. ボラティリティ管理には規律ある引受が必要
    不確実性が漂う市場においてリスクを軽減し、投資機会を捉えるためには、厳格な引受と徹底したデューデリジェンスが必要不可欠になるでしょう。アウトパフォーマンスの実現は、綿密な分析、透明性、規律ある引受、長期目標との適合に左右され、これらは資産配分の決定を導く原則であり、弊社の戦略の中核であり続けています。
  4. プライベート・ウェルスの参加が増加
    セミリキッド・ファンド構造や欧州における欧州長期投資ファンド(ELTIF)2.0規制によって、この資産クラスへのアクセスが容易になったことで、個人投資家の参加が増えています。2020年代末までには、個人投資家がプライベート・マーケットの運用資産に占める割合は4分の1に達することもあり得るでしょう。こうした変化を受けて、運用会社はより多くの長期資金を得られ、そして流動性、報告および商品のイノベーションに対する新たな要求に直面することになるでしょう。
  5. マクロ経済と地政学の再調整
    リショアリング、エネルギー安全保障、そして生産の地域化により、資本の流れが変化しています。プライベート・キャピタルによるエネルギー転換、デジタル社会における自律性そして物流への資金提供を受けて、2030年までに、インフラおよび実物資産戦略の規模は倍増する可能性があります。伝統的な銀行融資の減少を背景に、プライベート・マーケットは企業の成長支援が一段と増えています。

インフラ:エネルギーとデジタルのトレンド

長期契約に基づくキャッシュフロー、インフレ・プロテクション、伝統的な資産クラスとの低い相関性を有し、世界的に強力な政策支援を受けるインフラは、引き続き機関投資家のポートフォリオの要となっています。特に欧州は、各国政府が脱炭素化、エネルギー安全保障、そして競争力強化を推進するために官民の資本を動員していることから、世界の成長をリードする役割を担うと見込まれています。

2026年の主導的な2つのテーマは以下の通りです。

  • エネルギー転換:プロジェクト資金に対して旺盛な需要が存在することから、プライベート投資家の参入機会が拡大する可能性があります。欧州における強力な政策支援と、民間セクターにおける環境・社会・ガバナンス(ESG)目標は、引き続きエネルギー転換を推進する要因となっています。エネルギー・インフラ資産は通常、長期のインフレに連動する契約を結んでいるため、今日の市場では魅力的に映ります。さらに、エネルギー転換インフラは伝統的な資産との相関性が低いゆえに、ポートフォリオの分散化に寄与します。
  • デジタル・インフラ:データセンター、光ファイバーネットワーク、5G接続は、欧州のデジタル主権の基盤を形成しており、各国およびEUの資金調達イニシアチブ、ならびにクラウドにおける信頼性の高い高速サービスの提供を推進するデジタル化のメガトレンドに支えられています。弊社は2026年に向けて、株式と債券共に引き続き投資機会を見出していいます。

エネルギー転換とデジタル・インフラは、一段と結びつきが強くなっています。分散型再生可能エネルギー・システムの台頭は、スマートグリッドとリアルタイムデータ管理に依存しており、一方でデジタル化の重要な推進役であるデータセンターの急拡大により、電力需要が大幅に増え、クリーンで耐久性を持つエネルギー源の必要性が高まっています。

プライベート・クレジット:魅力的な利回りと厳格な引受

世界のプライベート・クレジットは、金利上昇、投資家の需要、資本市場の変化を背景に、運用資産が2024年の2.1兆米ドルから2030年までに4.5兆米ドルと倍以上に増加すると見込まれています。5北米は引き続き圧倒的なシェアを維持する見通しであり、欧州とアジアはプライベート・クレジット市場の拡大が持続しています。

マクロ経済の逆風にさらされるなか、魅力的な利回りと規律ある引受が果たす重要な役割を踏まえると、直接融資は引き続き魅力的です。弊社は、企業融資ではプライベート・クレジットが銀行に取って代わっていることから、その成長は持続すると予想しています。

投資家が直接融資以外にも投資を分散しているため、差別化されたリターンと低い相関性を示すインフラ・デット、クレジットのセカンダリーやトレード・ファイナンスなどの流動性ソリューションへの関心の高まりが見受けられます。

インパクト投資とブレンド・ファイナンスは、必要な支援を受けていないプロジェクトに資金を動員し、測定可能で透明性が高く、持続的な社会・環境的成果を確保することが目的であり、引き続き多くの投資家の関心を集めています。

プライベート・エクイティ:エグジットは回復局面に入るか?

M&A(企業の合併・買収)と新規株式公開(IPO)の減速により、エグジットの機会とリミテッド・パートナー(LP)への分配が減少し、流動性問題への対応としてセカンダリー・ファンドや継続ファンドへの関心が高まっています。

LPは、報酬引き下げと、投資判断におけるより大きなコントロールを求めるようになっています。共同投資により、LPは直接投資を行うことが可能であり、透明性、影響力および高いリターンを得られる可能性があります。また、報酬は最小限にとどまり、従来のファンド投資よりもIRRが高くなる傾向にあります。現在の厳しい環境において、共同投資を提供するGPは、LPとのより強固な関係を構築し、市場の回復に向けて体制を整えることができます。

今後数年間でエグジットが徐々に回復し、プライベート・エクイティによる資金調達が再開されると弊社は予想しています。これは、エバーグリーン・ファンドやセミリキッド・ファンドを通じた個人投資家からのさらなる需要によって支えられる可能性があります。

2026年に投資家が最も注目すべきことは何か?

2026年を迎えるにあたり、プライベート・マーケットはもはやニッチな市場ではなく、基盤となっています。柔軟なポートフォリオ運用を提供するセカンダリー市場から、プライベート・ウェルスの投資拡大や地域の分散化に至るまで、2026年は転換点を迎える年になると考えられます。プライベート・クレジットとインフラ投資は、長期的な価値をもたらす強い原動力として突出した存在となっています。これらの資産クラスは、ポートフォリオに分散効果をもたらすだけではなく、将来の資金調達にも効果を発揮しています。

Sources

(1)購買力平価加重ベース
(2)出所:The Hindu、2024年3月4日
(3)出所:Reuters、2025年9月4日
(4)出所:アリアンツGI、Preqin(Private Markets in 2030 | Preqin)
(5)同書。

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