欧州中央銀行理事会

ECBの当面の経済見通し、ハト派の思惑通りにはならない見込み

欧州中央銀行(ECB)は、インフレが目標近辺で落ち着き、経済情勢が底堅いこと背景に、911日の次回会合でも、現行の金利を据え置く見通しです。

要点
  • 欧州中央銀行(ECB)は、インフレが目標近辺で落ち着き、経済情勢が底堅いことを背景に、9月11日の次回会合でも、現行の金利を据え置く見通しです。

  • 予想を上回る統計データや、米国とEUの貿易協定における下振れリスクの低下を背景に、若干の不確実性は残りつつも、短期的な成長見通しは小幅に上方修正される可能性があります。

  •  ECBは現行の金融政策の立場は適切であると強調する見込みで、政策変更に対するハードルは高く、現状は横ばい局面にあります。

  • 足元のマクロおよび政策環境において、外国為替は、米ドルに対するユーロのエクスポージャーが有利と見ています。世界的には、ポートフォリオにおけるイールドカーブのスティープ化取引を戦略テーマとして重視しています。

ECB理事会(9月11日)の見通し

インフレが目標近辺にあること、経済情勢の底堅さ、安定した労働市場の状況を背景に、7月の会合で予想通りECBは利下げを見送りました。ECBが経済の底堅さを強調したことを、弊社は潜在的なタカ派シグナルと解釈しました。特に、外部環境の逆風が弱まればなおさらです。しかし、弊社は、世界貿易の動向、特に米国による関税と欧州の対応をめぐる極めて大きな不確実性を重視します。これによって、利下げが再開されるか、ECBの注目が財政緩和にともなうインフレリスクに移るか、いずれの可能性もあります。

夏休み期間中、ECB政策理事会メンバーによる講演はほとんどありませんでした。ジャクソン・ホール会議での講演でラガルド総裁は、ユーロ圏の労働市場の底堅さを強調しましたが、政策に関する即時のコメントは控えました。しかし、ラガルド総裁は、820日にジュネーブで開かれた世界経済フォーラムで、米国とEUの関税合意が「最悪なシナリオよりもかなり低い水準」で決着したことに安堵を示すとともに、内需を下支えする「堅調な」労働市場に加え、個人消費と投資の強い伸びを強調しました。

中央銀行からの発信が限られている時期には、個々の発言者の影響が過大となるリスクがあります。これは、8月のイングランド銀行の例で明らかです。ハト派のアンドリュー・ベイリー総裁が情報発信を主導していたものの、議事要旨の中ではタカ派の主張が強く表れ、その結果、タカ派的なサプライズをもたらしました。ECBではその反対のことが起こるかもしれません。中間派のオッリ・レーン氏は最近、(タカ派の)慢心に警告を発しました。また、7月会合の議事要旨によると、全会一致の決定だったにもかかわらず、異議を唱えたハト派メンバーの数(「several」)が、タカ派的なグループの人数(「a few」)よりも多かったことが明らかになりました。政策理事会でおそらく最もタカ派的だったオーストリア国立銀行(OeNB)のロベルト・ホルツマン総裁の交代は、このバランスをさらに傾ける可能性があります。レーン氏をはじめとするハト派メンバーは課題に直面しています。すなわち、ECBスタッフ見通しは、彼らの思惑通りにはならない見込みです。予想を上回る上半期の統計データと、足元の景況感の底堅さを反映して、短期的な成長見通しは小幅に上方修正されると弊社は予想します。注目すべきは、ECBによる6月時点のベースラインより不利な結果にはなるものの、米国との貿易合意によって極端な下振れリスクが抑制される点です

ECBは、以下のいくつかの要因を考慮する必要があります。

  • エネルギー価格の上昇:2026年および2027年の原油価格は35%上昇し、2026年のユーロ圏HICP見通しをおよそ0.1ポイント押し上げると見られま[1]。ガス価格の下落と電力価格の上昇は、互いに影響を打ち消し合うと考えられます。
  • ユーロ高:6月の見通し以降、ユーロは3%上昇しています。貿易量で加重平均した実効為替レートは2.3%上昇、今後数年間でインフレ率を0.1ポイント程度押し下げると見られます。
  • 金利の向かい風:インプライド金利はフラット化しています。当面の利下げは織り込まれておらず、将来の利上げもまだ織り込まれていません。これにより、2025年は10年物利回りが上昇し、成長とインフレをやや押し下げています。

総合的に見て、ECB2026年のヘッドラインインフレ率の見通しを0.1ポイント引き上げて1.7%とする一方、2027年の見通し(2.0%)およびコアインフレ率の見通し(1.9%)は据え置くと予想します。

[1] Sources : ECB


政策の見通し

インフレが目標水準にあり、経済成長が潜在成長率付近で推移する中、ECBは金融政策の立場が引き続き『適切な状態』にあると改めて強調すると予想します。これは、いずれの方向であっても政策変更は容易でないことを示唆しています。なお、今回の決定に対しハト派の抵抗があった場合、ラガルド総裁自身がそれを認めるか、あるいは、7月と同様に議事要旨で明らかになるかもしれません。

ユーロ圏の金利は当面据え置かれるというのが、弊社の基本シナリオです。しかし、今後数カ月間は、依然として利上げより利下げの可能性が高いと見込まれます。米国とEUの貿易協定により不確実性は低下したものの、EUの輸出需要と貿易転換に対する全体的な影響(特に中国などより深刻な影響を受けた米国の貿易相手国からのもの)は依然不透明です。米FRBが(特に統計データの確かな裏付けがないままに)新たな利下げサイクルに踏み切った場合、物価安定に対するFRBの姿勢に懸念が生じ、米ドルがさらに弱含む可能性があります。債券利回りの上昇は、外的要因(例:長期的な需要の変化)によるものであれ、内的要因(例:フランスの政治的混乱)によるものであれECBに金融緩和を迫る可能性もあります。


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