金利を読み解く

債券市場は堅調な推移を継続

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が8月のジャクソンホール会議で行った講演を受け、債券市場は一段と堅調な動きを見せています。講演は金融政策の緩和を示唆する内容として受け止められ、インフレよりも雇用や成長にリスクのウエイトが移ったことを示すものでした。当社では、現在の政策金利(4.25~4.5%)から、近い将来に25bp以上の利下げが複数回行われる可能性があると見ています。

ただし、関税や経済活動の活発化が今後数四半期にわたりインフレを押し上げる可能性も残されています。これらの要因が、フェデラルファンド金利の「暫定的な下限」を3.75~4.0%程度にする可能性があると考えています。

パウエル議長の講演後、長期金利は低下しましたが、米国では依然として大規模な財政赤字と高いタームプレミアムのリスクが存在しています。これにより、米国の長期国債が短期債を上回るパフォーマンスを示す可能性は限定的と見ています。当社では、米国債の7年物と30年物のスプレッドを活用したカーブスティープニング戦略を継続しています。

また、米国の関税による物品供給の制約や移民制限による労働供給の制約が生じるリスクを踏まえ、5年および10年の米国物価連動国債(TIPS)に対してオーバーウェイトのポジションを維持しています。

最近の米ドルの下落再開は、当社のドルに対する弱気見通しを裏付けるものです。貿易・経常収支が黒字の国々との通貨再調整の可能性や、FRBの独立性がさらに脅かされるリスクを考慮しています。恩恵を受ける可能性が高い通貨は、対外純資産が大きく、財政的余力がある国の通貨です。当社では、ユーロ、韓国ウォン、インドネシアルピアのロングポジションを活用した米ドルショート戦略を選好しています。

欧州では、米国と比較して財政規律が強まると予想されるため、英国およびスペインの超長期国債が米国債をアウトパフォームする可能性を見込んだ相対価値ポジションを保有しています。一方、イールドカーブの短期部分はより複雑です。米EU間の貿易協定により、欧州中央銀行(ECB)による追加利下げの可能性が不透明となっており、ジャクソンホールで講演したラガルド総裁も明確な示唆はしませんでした。8月にはイングランド銀行が25bpの利下げを僅差で決定し、政策金利は4%となりましたが、根強いインフレがさらなる利下げの障壁となる可能性があります。¹

新興国市場では、インフレ調整後の実質金利が高いため、中央銀行が利下げを行いやすく、デュレーション投資におけるリスク・リターンのバランスが良好です。特に、通貨高の恩恵も受けられるブラジル、南アフリカ、ルーマニアの現地通貨建て債券市場を選好しています。新興国のハードカレンシー債も、年初来で他の主要債券資産クラスを上回るパフォーマンスを示しています。スプレッドは縮小していますが、利回りは過去平均や他の高利回り資産と比較して依然として高水準です。

ハイイールド社債市場では、アジアが米国や欧州を年初来で上回っています。グローバル投資家が米国資産へのリスク集中を見直す中、アジアは分散投資先として魅力的です。当社では、アジアの米ドル建て社債に対して強気の見方を維持しており、インドおよびマカオにオーバーウェイトのポジションを取っています。特にマカオのゲーミングセクターは注目されており、7月にはコロナ禍以降で最高の月間総収益を記録しました。8月も、米国および欧州のハイイールド市場は7月からの上昇を引き継ぎましたが、米国は第2四半期の好調な決算を背景に、より大きな上昇となりました。

投資適格社債では、バリュエーションが歴史的に高水準にあります。8月には米国のクレジットスプレッドが過去25年間で最も狭い水準にまで縮小しました。それでも、政策緩和を見越した高いキャリー需要に支えられていると見ています。当社では、投資適格債に対してややオーバーウェイトの配分を維持し、景気循環に左右されにくい金融機関のシニア債や公益事業債を選好しています。

今後の見通しとしては、低成長環境が財務レバレッジの高い企業や景気敏感業種にとっては逆風となる可能性がありますが、再調達リスクが限定的でファンダメンタルが堅調な優良企業にとっては大きな障害にはならないと考えています。最大のリスクは、予想以上の成長と政策緩和が同時に進行することで、金利が上昇しインフレが再燃する可能性があるという点です。

 

¹ 2025年8月に政策金利を4%に引き下げ(イングランド銀行ウェブサイト、2025年8月7日)

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