日銀政策決定会合
日本銀行、金融政策据え置きを継続か
要点
- 日本銀行(以下、日銀)は、新しい展望レポートと経済見通しの公表が10月となるため、9月の金融政策決定会合では政策を据え置く見通し
- 最近のインフレデータは高水準ながらも横ばいで推移している。また、世界的なインフレ傾向は減速しつつある。同時に、賃金と成長に関するデータは強弱まちまちの傾向を強めている。日銀は、最近行ったイールドカーブ・コントロール(YCC)の調整の影響も注意深く見極めている
- 日銀ウォッチャーの注目は、声明と記者会見に集まるだろう。最近の両副総裁の演説におけるハト派的発言と対照的に、植田総裁は最近のメディアのインタビューで、データ次第という日銀のスタンスについて、よりタカ派的な表現を行った。金融政策決定会合の公式な場で、総裁がそのメッセージを繰り返すかどうかを注視することが重要となる
日銀政策決定会合(9月21‐22日)の見通し
マクロ経済は、日銀にとって依然として厳しい状況にあります。7月の生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数は4.3%の上昇と、消費者物価は高水準で頭打ちとなっており、今後の鈍化が広く予想されています。同時に、賃金データは強弱まちまちの傾向が強まっています。注目された春闘における賃上げ率は3.58%と力強い伸びとなったものの、7月速報の現金給与総額は前年比1.3%増(実質ベースでは前年比2.5%減)に減速しました。このように、物価と賃金の好循環は依然として確認されていません。国内経済の成長も、経済活動再開による押し上げ効果が剥落し、中国や欧州からの外需の落ち込みや米国の減速の可能性による逆風を受けて、足元では減速しています。
今回の日銀会合は、最近のメディアのインタビューにおける植田総裁のタカ派色を感じさせる発言が踏襲されるかを確認する意味で重要です。総裁の意外なコメントの背後にある意図は明らかではありません。それらのコメントは、円相場を支えるための一般に向けた口先介入を意図したものでしょうか。それとも日銀の考え方が本当に変化している表れでしょうか。日銀は、行き過ぎた円安による負のセカンド・ラウンド・エフェクト(2次的効果)への懸念を強めているように見えます。過度な円安は政治的な観点からも不人気となりつつありますが、日銀の政策手段は限られます。
ポジショニングに関して、弊社は日本国債に対して慎重な見方を維持します。日銀のYCC政策の調整を受けた利回りの大幅な上昇にもかかわらず、国内投資家の買いは低調に推移しています。日銀はまた、引き続き多額の債券を買い入れています。このため、最終的な正常化への過程で、利回りが現状から上昇していく可能性があると弊社は見ています。
円相場について、弊社は現在の水準ではやや積極的なスタンスを維持します。数十年来の円安水準と、各国中央銀行の主要金利がピークに達するという市場予想とがあいまって、円高の可能性を生み出しています。しかし、キャリーは依然として極端にマイナスであり、最終的には米連邦準備制度理事会(FRB)の動きが利回り格差にとってより重要な要素となるでしょう。