Biodiversity | ~ 4 min read
農薬のコントロール:食料安全保障の新たなフロンティア
欧州委員会(EC)はこのほど、より持続可能な食料システムの実現に向け、2030年までに化学合成農薬の使用を半減させることを提案しました。一方で、新たな解決策も必要とされています。
人類は、昆虫や菌類から作物を守るために数千年前から農薬を使用してきました。その使用は、化学合成農薬が導入された1930年代以降の数十年で加速しています。化学合成農薬は土壌や水中に何年も残留しかねず1、私たちの食卓に上る食品に混入して有害な影響を及ぼす可能性があります。
同時に、増え続ける世界人口に食料を供給しなければならないという事情もあります。農薬は、作物の栽培と食料の安全保障全体に大きな貢献をしてきました。しかし、気候変動が農家に新たな課題をもたらしている時代に、食物連鎖をより安全なものにするにはどうすればいいでしょうか。
この問いに対処するため、ECは食料供給の強靭性と安全保障を向上させるための幅広い「Farm to Fork(農場から食卓まで)戦略」の一環として2 、年内に化学合成農薬に対する規制案を導入する方針を固めているようです3。
このECの提案が食料の安全保障にとって持つ意味
化学合成農薬の使用を半減させるというこの提案が欧州議会によって採択されれば、農薬削減に関する幅広いEU政策に向けた第一歩となる可能性があります。しかし、農薬に関する目標を定めるだけでは、私たちの食料システムにおける広範な問題を解決することはできないでしょう。食料の入手可能性とアクセスを確保するための新たな解決策への投資が必要とされています。有害な影響を及ぼしかねない、より強力な化学物質を使用しないで既存の作物の成長を促進する方法も、その一つです。
農業セクターにおけるより安全な代替策は、気温上昇や異常気象という環境の中で農家が必要な収穫量を達成するのにも役立つはずです。考えられる解決策の例には、作物の多様化や新しいゲノム技術の開発などがあります4。農家にとっては、新しい解決策が手頃な価格であることと利用しやすいことが極めて重要となるでしょう。
今回の規制案は出発点となる一方、ECは引き続き、食料安全保障のための新たな解決策への投資を促進するとともに、持続可能な食料生産の妨げとなるような慣行や製品を阻止する政策を形成するという重要な役割を果たす必要があります。