Sustainability | ~ 4 min read

気候は選挙の争点になるか?

重要な選挙が集中している今年、弊社は気候変動をめぐる対立を予想しましたが、ここ最近の選挙は意外な結果となりました。これは気候政策にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

先日行われた英国とフランスの選挙では、全体として左翼への支持が示されましたが、欧州全般としては、極右の政策へと勢いが流れつつあります。投票所に足を運ぶ有権者がサステナビリティ目標に影響を与えるかどうかを考える上で、関連する2つの疑問が明確になっています。

1つ目は、政治的な変化によって、本当に何かが変わるのか、という疑問です。欧州全体において、その焦点は、政治的分裂の中で、右派が主張する気候行動のコストと、左派が主張する戦術的行動に絞られているように思われます。一般論として言えば、右派政党は環境政策を財務的な罰を与えるものと捉え、一方、左派は将来の懲罰的なコストを軽減することを指向していると言えますが、これはそれほど単純なものなのでしょうか。そうではありません。グリーン政策を進める政党は財政的な制約に直面し、グリーン政策に逆行する政策は、代替クリーンエネルギーや、炭素捕捉テクノロジーを選好しています。

いずれの政策プログラムも、その見た目ほどよくも悪くもないのですが、両方とも、切望されている気候投資の気運に水を差すものです。フランス議会において、いずれの政党も絶対的多数を確保できないという、想定外のシナリオが起こったことで、一部のテールリスクは排除されるかもしれませんが、さらなる財政的不透明性のリスクが気候変動対策への資金調達にさらなる圧力となります。

2つ目の疑問は、世代の移行の影響に関するものです。Z世代は影響力を持つでしょうか?英国では、Z世代の有権者が前回の2019年の総選挙から2倍以上に増加しました(図表1参照)。ただし、その他の世代グループと比較し、Z世代は有権者に占める割合が最も低く、7月4日の英国の選挙の分析結果(全体の投票率は約60%にとどまる)でも、その状況は同様になる可能性が高いでしょう。欧州の他の地域では、若年層の有権者は、UKの若年層と比較して選挙により深く関与しており1、報道によれば、若年層の有権者の間で、極右政党への支持が上昇しています。

これらの疑問を併せて考えると、現在の環境政策に本格的な勢いが欠如していること、そして、若年層の有権者、特に気候変動対策を支持する有権者の間での政治への関与が限定的であることは、気候政策への取り組みが明確化するのが、この選挙サイクルの間ではなく、今後数年間においてであることを示しています。



図表1-英国の選挙年における世代別の有権者内訳

図表1-英国の選挙年における世代別の有権者内訳

ONS population projections, Society Watch 2024

投資不足に拍車をかける

現在の気候変動対策に関する誓約は意欲的なものではありません。欧州グリーンディールに対する変更があった場合、地球温暖化を1.5℃以内に抑えるという現在の取り組みを遅らせる可能性がありますが、頓挫させることはないでしょう。しかし、現在のグリーンディールは、既にこの軌道から遅れています2。一方、英国では、退陣することになった前政権が、一部の目標を既に上回っていると認識していることを考えると、気候変動法(Climate Change Act)の改正はなさそうです3。二大政党のマニフェストにおける、不透明な誓約と、誓約への反対は、おそらく状況を改善させることも悪化させることもなく、単に投資の不足に拍車をかけるだけでしょう。

したがって、弊社は、選挙ではなく、気候変動リスクの影響の高まりが、欧州及び英国における移行の遅れ4を促進する要因になると予測しています。

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