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EUのメタン規則:すがすがしい新風となるか?
メタンは地球温暖化および大気汚染に大きな影響を及ぼしており、その主たる2つの原因の1つになっています。欧州の新しい規則は、欧州連合域内だけでなく、グローバルサプライチェーンでもメタン排出量を最小限に抑えることを目指しています。
欧州委員会は5月、欧州のエネルギー部門と、エネルギーのグローバルサプライチェーンの両方でメタン排出量を削減することを目的とした規則を採択しました1。この規則では、域内の化石燃料ガス、石油、石炭の事業者だけでなく、その輸入業者に対してもメタンの排出削減のための厳格な監視、報告、検証基準を遵守することを求めています。
同規則は2025~2027年に段階的に施行される予定で、メタン管理の透明性を高め、説明責任を強化することを狙いとしています。
規則の目的
この新規則はエネルギー部門のメタン排出を対象としており、2050年までに気候ニュートラルを達成する重要な一歩になります。悪影響という点ではCO2の80倍も高いメタンは、地球温暖化および大気汚染においてCO2に次ぐ第2の原因となっており、温室効果ガス(GHG)排出量のおよそ3分の1がメタンに起因しています。
欧州連合(EU)の新しい規則はグローバル・メタン・プレッジ 2を後押しし、EUの基準を国際目標に合致させるものです。
EUの事業者はまた、日常的に行われる回避可能な天然ガスの過剰燃焼をやめることも求められる見通しです。これにより、フレアリングおよびベンティング として知られるこれらの慣行が緊急事態や技術的な不具合、安全上の理由に制限されることになります。EUはメタンの性能プロファイルの包括的なデータベースを構築し、各国や企業による進捗の追跡や高排出源の特定を支援することも予定しています。
規則が世界のエネルギー生産業者にもたらす影響
EU域内で消費される化石燃料エネルギーに関連したメタンの排出は、大部分がEU域外で起きているものです。2027年以降、新たに締結される輸入契約はこれらの基準を遵守することが必要になります。規則では厳格な要件が段階的に導入され、輸出業者が徐々にEUの事業者と同じ監視、報告、検証の義務を取り入れるよう徹底を図ります。
規則対応の点では、石油の多国籍企業の方が国営の石油企業(NOC)よりも態勢が整っていると言えます。国営石油企業は石油・ガス生産において世界全体の半分以上を占めていますが、投資家や株主決議、一般からの要求などによる圧力を受けにくい状況にあります。
しかしながら、EUの新規則が輸入業者も対象としたことで、国営石油企業の事業においてもメタン削減技術の開発が加速すると予想されます。この動きを契機に国営石油企業においてさらにメタン管理の国際慣行に歩調を合わせる取り組みが進み、環境インパクトの低減、事業の透明性の向上が促されると思われます。
石炭産業におけるフレアリングの禁止、および石油・ガス生産業者に対する排出所からのベンティングおよびフレアリングの禁止は2025年1月1日から施行される予定です。このため、エネルギー産業は来年1月からこれら要件に準拠し始めることになります。
メタンは温室効果ガスへの影響が大きいにもかかわらず、排出削減の取り組みにおいて看過されている可能性があります。EUのこの規則は、説明責任や透明性のほか、汚染活動の他地域への移行阻止という点でも重要な前進だと弊社は考えています。
1 出所: European Commission, New EU Methane Regulation to reduce harmful emissions from fossil fuels in Europe and abroad
2 グローバル・メタン・プレッジは、2030年までに世界のメタン排出量を2020年比で30%以上減らすことを目指す共同の取り組みです。https://www.globalmethanepledparge.org/