Five themes for 2024
テーマ4:規制の移行から移行の規制へ
2024年に向けたサステナビリティのテーマのうち、本稿で取り上げる第4のテーマでは、サステナビリティに関する規制によってクライメート・トランジション(脱炭素への移行)が確実に前進し始めている様子を考察します。
弊社は今年、サステナビリティに関する規制が対応疲れを脱し、機能し始め るところまで到達すると考えています。
この対応疲れは、ここ数年、規制において採用されてきた「作成し、説明する」という複雑で負担の大きいアプローチが招いたもので、意図せぬ結果として起きています。これが移行への投資を抑制し、「グリーンハッシング (greenhushing)」、つまり、企業が訴訟リスクを最小限に抑えるために自社のサステナビリティの取り組みについて沈黙し続ける事態を出現させたというのが、弊社の見解です。
ところが現在では、中核となる方法論や主要目標達成指標(KPI)に対するグローバルなコンセンサス形成にはなお距離がある状況とはいえ、一段と実用的な「活力ある(storming)」段階に入った地域が多数あります。
結論をいえば、進展があるということです。
英国のサステナビリティ情報開示要件 案、東南アジアのASEANタクソノミー に関する議論、欧州連合のサステナブルファイナンス開示規制 に対する最近の修正などはいずれも、サステナブルファイナンスを進める中核的要素について、コンセンサスを形成する最初の段階を後押ししました。
移行が焦点に
「移行ファイナンス 」とは、排出量の多い企業および活動の脱炭素化を支援する概念です。サステナブル投資のフレームワークでは、この概念の公式化が一段と進んでいます。
これは重要なことです。移行という概念が環境、社会、ガバナンス(ESG)のアプローチからインパクト投資まで、サステナブル投資の幾つかの重要な柱に広がっていることを意味しているからです。
ブラウンからグリーンへの移行という概念が世界でより大きな共感を生んだのは、グリーンであることの定義が不透明である点でした。
しかしながら、移行における大きな障壁は、移行を平等に実行することです。さもなければ、最も脆弱な地域やコミュニティのリスクが悪化しかねません。
こうした背景から、ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟 において始まった移行ファイナンス戦略の協議に「公正な移行」という概念に基づくイニシアチブが加わったことには、期待が感じられました。
アリアンツ・グローバル・インベスターズはこれまで、エマージング・マーケット・クライメート・アクション・ファンド などの投資イニシアチブやワン・プラネット・ソブリン・ウェルス・ファンド・ネットワーク への関与を通じ、弊社のプライベート・マーケット事業において移行戦略の策定を進めてきました。
また、パブリック・マーケット投資については既に弊社公式の脱炭素移行戦略があり、ここ数年の間に構築されたデータおよび方法論に関わる能力の提供、活用を拡大する方法について、検討を進めているところです。