Stewardship | ~ 4 min read
多様性の力
指導チームに多様性があると事業における決定がより適切になされることが、多くの学術研究で示されています。そのメリットは明白ですが、企業の役員レベルやその下位レベルにおける多様性にはまだ大きな改善の余地が残されています。特にドイツでは、その余地が大きいといえます。
欧州中央銀行(ECB)の調査では、取締役会のジェンダーの多様性(ジェンダー・ダイバーシティ)が高い銀行ほど、「よりブラウンな」企業、つまり炭素排出量が多い企業への融資が少なく、カーボンニュートラルな経済への転換に貢献していることが明らかになっています1。取締役会のジェンダー・ダイバーシティの向上は、規制面からも進められています2。また、監督機関としての役割を担うECBは、2021年以降、銀行の経営トップに対する適格性(fit and proper)評価の指針にジェンダー・ダイバーシティを取り入れています。
欧州他国に後れをとるドイツ
弊社が2023年8月末に行った分析から、DAX40採用企業3の監査委員会メンバーに占める女性の割合は平均39%であることがわかりました。これに対し、取締役会メンバーの女性の割合は平均22%にとどまっており、CEOが女性である企業はわずか1社でした。MDAX採用企業において女性が役員レベルに占める割合はさらに低く、取締役の女性の割合は15.6%で、女性が一人もいない取締役会が半数近くにのぼりました。
共同のエンゲージメント
弊社はジェンダー・ダイバーシティの向上をエンゲージメントの優先課題と考えています。このため弊社は30% Club Germany Investor Group (30%クラブ・ドイツ・インベスター・グループ)の共同創立に加わり、共同議長を務めています。これはフランスにおける弊社のアクティブなスチュワードシップにも反映されており、弊社は現在、30% Club France Investor Group(30%クラブ・フランス・インベスター・グループ)の共同議長も務めています。
この新しいインベスター・グループの共同創立者であるアムンディ 、カンドリアム 、コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ 、リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント 、シコモア・アセット・マネジメント とともに、弊社はドイツ企業に対し、取締役会における女性登用を促す取り組みを強化し、これを実行するよう求めています。この問題については今後もDAX40採用企業およびMDAX採用企業に共同でエンゲージメント活動を行い、DAX40企業の経営チームに対し2030年までに取締役会議席の30%以上を女性にすることを求めていく予定です。
規制だけでは不十分
ドイツ政府はFührungsPositionenGesetz (FüPOG II)を施行し、3人以上で構成される取締役会メンバーの少なくとも1人は女性を任命することを法律で企業に義務づけました。この法によってジェンダー・ダイバーシティが進むとみられ、実際に改善が見え始めています。ただ、この法の適用対象がDAXの全上場企業ではないことで状況が複雑化しており、さらなる前進には時間を要すると弊社はみています。このため、ポートフォリオ構成企業に対して投資家が積極的にエンゲージメントを行うことがジェンダー平等推進の鍵になると弊社は考えています。
弊社はエンゲージメントの優先課題としてジェンダー・ダイバーシティを重視しています。詳しくはこちらのショート動画をご覧ください。
1 European Central Bank, October 2022, Gender diversity in bank boardrooms and green lending: evidence from euro area credit register data (europa.eu)
22022年11月に欧州議会と欧州理事会で採択されたWomen on Boards Directive(取締役会における女性指令)はその一例です。
3 DAXはドイツの主要優良企業40社で構成される株式市場指数です。MDAXはプライムスタンダードの50銘柄で構成されており、時価総額においてDAX指数採用企業に次ぐランク付けの企業が含まれています。