Climate | ~ 4 min read
健康は財産?
2023年の夏、世界気温は1940年の観測開始以降で最高を記録しました。気候変動は少しずつ顕在化していますが、それに比べ、健康に対するその重大なインパクトは遥かに目に見えにくいといえます。
欧州のコペルニクスプログラムによると、2023年7月は記録史上、世界で最も暑い月となりました。この高温と同時に、長期にわたる干ばつ、壊滅的な洪水、激しい森林火災など、幾つかの極端な気象現象も起こりました。これらの高温や気象現象ははっきり目に見える壊滅的なインパクトを自然にもたらします。ところが、その健康に対するインパクトはそれほど目立ちません。
- 煙と大気汚染 は呼吸器疾患の原因となり、喘息の罹患率を高めます。
- 西ナイル熱やデング熱といった熱帯地域特有のウイルスが欧州でも確認されています。
- 洪水がコレラの感染拡大リスクを高めています。
- 猛暑は心疾患の死亡率および罹病率が上昇する一因になっています。
こうした健康リスクの増大は、社会的な影響ももたらします。気候変動に関わる懸念は誰もが同じですが、気候変動が健康にもたらすインパクトについては、社会経済、年齢、地域により大きな格差があります。ヒューマン・ライツ・ウォッチ によると、低所得層の人々は往々にして設備が劣悪な建物や、緑地および近隣の水場の不足、低賃金の屋外就労などに不当なほど大きな影響を受けています。気候変動が食料の安全保障と購入能力に直接及ぼすインパクトに加え、これらの問題が健康上の不平等を拡大しています。
温暖化が進む世界における健康
健康に関わるこれらの問題の大きさ、そしてこれらが複雑度を増している現状は、多額の投資が必要であることを示唆しています。蚊媒介ウイルスに対しては、ワクチンの研究開発に投資する機会が出現しています。また国連環境計画は、温暖化への取り組みの一環として、都市部に自然を取り戻して都市の気温低下を促す各国の高温対策計画を支援しています。このほか、建物の熱性能を改善してエネルギー消費を減らす戦略も導入されています1。
今年末にドバイで開催されるCOP28では、健康の日(Health Day) が初めて設けられる予定です。気候変動と健康の相互作用に対する認知が高まる中で、弊社はこの健康の日の開催を心強く思っています。この日には気候と健康を議論するグループ会合が初めて開かれ、世界の医療制度が気候変動に対応する上で最優先すべき措置について、合意形成を目指す予定です。
このテーマおよびCOP28に対する弊社のその他の予想を取り上げた記事を11月に公表する予定です。ご注目ください。