インフラの変革

インフラが未来をどう形成するか -AIからZ世代まで

「衛生、医療、教育、治安、道 路、、、水道システム、公衆衛 生を除けば、ローマ人は何を私 たちにしてくれたでしょうか?」 これは 映画“ライフ・オブ ・ブラ イアン”のとあるシーンのセリフで す。これらのインフラは、今もなお、 すべて重要なインフラです。

インフラは成長への鍵

ここ18カ月間、多くの政治家が選挙 活動でインフラの話題を取り上げてき たのには、それなりの理由があります。 インフラは国の経済的・社会的発展 の基盤だからです。 電波障害、電 車の遅延、停電、道路の陥没、設備 不十分な学校などは身近なインフラ 不備のほんの一部です。 2025年に 32カ国で実施されたグローバル・イン フラ投資家協会の調査において、G7 諸国の回答者のうち、自国のインフラ に「非常に/まあ満足している」と回 答したのはわずか36%でした。1 デ ジタル化から住宅、EV充電から道 路や鉄道まで、多くの分野で改善の 余地があります。しかし、インフラとは、 国民に必要不可欠なサービスを提 供することだけではありません。インフ ラは、欧州が競争力を維持するため に必要な努力の中核でもあります。マ リオ・ドラギ前ECB総裁が欧州委員 会に提出した最近の報告書では、 競争力を維持するためには、デジタ ル化と脱炭素化に主眼を置いた、年 間平均8000 億ユーロの投資が必 要であることを述べています。2

3D

エネルギー転換、グリーンインフラ、モビリティ
データ、AI、インフラ
高齢化社会とインフラの必要性
3Dは世界の変容を形作ります。
グリーンエネルギー、デジタルインフラ、社会適応への投資は、将来の課題を克服するために極めて重要です。
DECARBONIZATION-脱炭素化のD
エネルギー供給網、輸送、再生可能エネルギー

二酸化炭素排出量を削減するエネルギー転換は、エネルギー政策やビジネスモデルを変革の措置を講ずる多くの国 や企業の最重要課題です。 国際再 生可能エネルギー機関(IEA)による と、気温上昇を1.5℃に抑制するシナリ オには、2050 年までに移行技術とインフラ整備に150 兆米ドルの投資が必 要と試算されており、これは年平均5.3 兆米ドルに相当するということです。3様々な分野で脱炭素化が進み、グリーンエネルギーと投資の必要性は高まっています。現在、世界のCO2排出量の約25%は、セメント、鉄鋼、肥料産業から排出されています。4再生可能な電力 を使って水を加水分解することで得られ るグリーン水素は、これらの分野の脱炭 素化を促進する上で非常に重要です。 しかし、より多くの(グリーンな)エネルギ ーには、より多くの再生可能エネルギー 発電所、分散型アクセスポイントを備え たより強力なエネルギー・グリッド、そして より多くの蓄電容量が必要です。 今日 のインフラは、まだこの変革に対応できて いません。ヨーロッパのエネルギー供給網 の40%以上が40年以上前のもので す。5現在、より多くのグリーンエネルギーを生み出し、輸送し、貯蔵することができる明日のインフラを構築するために、官民の双方によって多大な努力が払われています。

エネルギー転換委員会によると、世界のエネルギー転換に必要な投資の約70%は電力部門に向けられるはずであり、2050年までに年間24億米ドルの投資が必要になると試算されています。6さらに、これらの投資は、特に欧州で不可欠なテーマであるエネルギー供給の安全性に貢献し、またインターコネクターのような国境を越えたエネルギー・インフラ・プロジェクトは、2040年まで年間90億ユーロのエネルギー・コストの削減にも貢献することが期待されます。7

エネルギー転換にとって、もうひとつ忘れてはならないことは、全世界の温室効果ガス排出量の25%が運輸部門によって占められていることです。8輸送関連のCO2排出量のうち、約72%は自動車、トラック、バス、オートバイなどの道路運送車両から排出されています。8輸送の電力化、より多くのグリーン燃 料、より多くのEV充電インフラが変化を もたらすことが期待されます。 また、鉄 道や公共交通機関への転換を促進 するためには、より魅力的な代替交通 手段が必要です。

DIGITALIZATION-デジタル化のD
AI、データセンター、光ファイバー

デジタル・インフラが重要なインフラとみ なされるようになったのは、パンデミックの よるライフスタイルの変化(在宅勤務の 普及など)よりも前から始まっていまし た。 さらに、光ファイバーネットワークから データセンター、モバイルタワーからスマー ト・ソフトウェア・ソリューションまで、デジタ ル・インフラの範囲は大幅に拡大してい ます。 電気通信分野は過去20年間 で非常に急速な発展を遂げており、AI によってさらにゲーム・チェンジャーとなるよ うな展開が期待されます。 この15年間 で、世界のインターネット・ユーザー数は2 倍以上に増え、インターネット・トラフィック は20倍に増加しました。9しかし、欧州 の一部の国(特に農村部)では、高速 ブロードバンドの普及率は、このレベルの 需要に対応するにはまだ十分ではあり ません。 データは日常業務に欠かせな いものとなりつつあり、保存する必要も あります。 AI分野 は、AIを活用したア プリケーションの増加により、この開発を さらに加速させるでしょう。 デジタル化が 進むにつれ、より多くのデータが生まれ、 それに伴いより大規模なデータセンター での保存および処理能力が求められる ようになります。これにより、世界中でさら なる投資機会が生まれることが想定さ れます。 現在、デジタル・インフラへの投 資の大半は、欧州(約30% )10北米(約45%)10アジア太平洋地域の一部(約20%)で行われています。10

しかし、デジタル分野は機関投資家が参入するには複雑な分野でもあります。投資家は、イノベーションとトレンドを常に把握し、どの技術が優勢になるかを注意深く監視する必要があります。最近では、我々は既存の何分の一かのコストでAIソリューションを提供すると言われれるDeepSeekの新規参入を目の当たりにしました。

データセンター、ファイバーネットワーク、モ バイルタワー、ITソリューションの台頭に より、エネルギー消費量が増加していま す。 特定のデジタル資産は、AIなどの より大きなパワーをますます必要として います。さらに、ビットコインなども、一部の 小国家のエネルギー量よりも多く消費 しています。11 脱炭素化の必要性とデジタル化の加速を両立させることは、変革の重要な側面です。スマートメーター・ソリューションのようなデジタル・サービスやツールも、エネルギーの有効利用や脱炭素化への取り組みに役立ちます。多くの大手ハイテク企業は、再生可能エネルギー供給会社と合意してグリーンエネルギーを供給することで、この環境問題に対処しようとしています。また、より低いエネルギー効率で冷却やその他の貯蔵技術を開発し、周辺のデジタル分野へのさらなる投資機会につなげることもできます。

図1:データは電力を消費する

出典 :マサネット他(2020年)、シスコ、IEA、ゴールドマン・サックス・リサーチ

DEMOGRAPHICS-人口動態のD
高齢化社会とその課題

2030年までに、世界の6人に1人が60歳以上の高齢者となり、60歳以上の高齢者が人口に占める割合は現在の10億人から14億人に増加します。

団塊の世代(1946年から1964年の間に生まれた世代)の引退は、多くの地域に大きな影響を与えるでしょう。12高齢化と長寿化社会は、より多くの高齢者ケア、さまざまな住宅、医療を必要とします。

さらに、各国はグリーンとデジタルの変革を管理するために、長期的には労働力の変化と低下という課題に対処する必 要があります。 人口の増加と高齢化に は、安定的な基幹インフラ、例えばエネ ルギーや水道、通信、衛生サービスなど が必要です。 高齢化した人口に、老朽 化したインフラで対応することは非現実 的です。13

今日、高齢者介護はすでに不足してお り、また、下水システム、エネルギー・グリッ ド、通信ネットワークといった公共事業 は、すでに許容量の限界に達していま す。 しかし、遠隔医療は、地方の高齢 者ができる限り自立した生活を維持で きるようサポートすることができます。ただ し、その前提条件として、近代的な医療 システムと強力なファイバーネットワークが 必要となります。

人口動態の課題を克服するためには、 高齢化する労働力に投資して健康を 維持することと、次世代の技術開発や 彼らの教育に投資して彼らが将来の職 業プロファイルに十分備えられるようにす ることの両方が極めて重要だと考えてい ます。 残念ながら、多くの国では学校 の設備が十分でなく、生徒のための宿 泊施設も十分であり、教育訓練や医 療サービスについても誰もが利用できる ものではありません。教育、学生寮、病 院、デジタル・ソリューション、サービス、そし て近代的な中核インフラへの投資は、 団塊の世代などの引退した人々だけで なく、Z世代とα世代の両方の人口課 題への取り組みに貢献するでしょう。14

民間資本の力も合わせる

高齢化社会とインフラの老朽化は、計り 知れない社会的課題です。埋めなけれ ばならない需要と投資額の格差が大 きくなる一方で、高額の退職金支給が 各国の予算に広く影響を与えるなど、イ ンフラ以外の面においても各国の負担 はより大きくなることが予想されます。す でに 各国の国家予算はパンデミック以降、国防費の増加、エネルギー・コスト、インフレ圧力といった新たな世界秩序を経て、苦境に立たされています。

G7諸国におけるGIIAの最近の報告書によると、自国が国家インフラ・プロジェクトを順調に実施していると回答したのは、わずか26%でした。15 民間資本は、大規模な機関投資家からのものであれ、保険契約者に代わって投資する国からのものであれ、あるいは欧州長期投資基金(ELTIF)のようなビークルを通じてプライベート・マーケットにアクセスする個人からのものであれ、インフラ投資の将来において重要な役割を果たし、また多くの人々の老後の備えの提供を可能とするでしょう。

アリアンツは、2008年から世界中でインフラ投資を行っており、インフラ・プロジェクトや資産への投資および管理に関する豊富な経験を有しています。グローバル・インフラに関する世論調査では、国民の気候変動に対する回復力への懸念と、民間投資への支持が明らかになりました。5

より安定した政治・規制環境を見出すことができれば、機関投資家は極めて重要な役割を果たすことができます。人口動態を考慮し、グリーンかつデジタルな変革という差し迫った課題を克服するために、私たちは多大な努力を払う必要があります。そして、今それをやらなければならないのです。民間資本の力も合わせることで、各国は大きな飛躍を遂げ、経済的・財政的パフォーマンスを高め、新たな雇用を創出し、すべての人の未来に投資することができます。

図2:民間金融機関はネット・ゼロ投資ニーズの約55%を融資可能(2022~2050年)
低排出ガス資産の年間平均投資ニーズ(単位:米ドル)

出典:ネットゼロ移行への資金調達:計画から実践まで、マッキンゼー、2023年1月

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