ペットの長寿化

ペットの高齢化が進む中、ペットのクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を支えるイノベーターへの投資は、ペットケア市場の成長に乗じる機会をもたらします。

要点
  • ここ数年、ペットの平均寿命は飛躍的に伸びています。その主な要因として、高品質なフードへのシフトや人間並みのケア、予防診断の普及と定期的な動物病院の受診に対する意識の高まりを挙げることができます。
  • ペットの平均寿命が延びる中、ペットフード、ペット用の医薬品やワクチン、特定の栄養上のニーズや予防的ケアに対応するペット用サプリメントへの需要は増大する一方です。
  • ペットのクオリティ・オブ・ライフを保ち、向上させ、守るソリューションを提供するイノベーターへの投資は、成長しつつあるペットヘルスケア市場に参加する魅力的な機会をもたらします。
dog with veterinarian

世界の最高齢犬は現在、30歳の家畜番犬ボビ(ラフェイロ・ド・アレンテージョという純血種犬)1です。ラフェイロ・ド・アレンテージョの平均寿命は、12~14歳とされています。

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世界の最高齢猫は現在、27歳のフロッシー2で、15歳前後という猫の平均寿命をはるかに超えています。

ボビとフロッシーはどちらも例外的なケースであることは言うまでもありませんが、ペットの平均寿命が延び続けている傾向は明白です。

研究によれば、この40年で犬の平均寿命はほぼ2倍に延び、飼い猫の寿命は野良猫の2倍長生きするようになりました。これは主に、ヘルスケアと食生活が向上したことによるものです3

米国の調査によると、シニア犬・猫を飼っている家庭の数は、この10年で大幅に増加しています。

7歳を超えるシニア犬・猫 を飼っている家庭の割合(%、2012~2022年)
7歳を超えるシニア犬・猫 を飼っている家庭の割合(%、2012~2022年

出所:Packaged Facts, Pet Food in the US (August 2022); MRI-Simmons

その結果、個体の栄養状態を把握し、年を取ったペットに最適な食事内容を設計するための栄養評価が、飼い主や動物病院の注目を集めるようになっています。12歳を超える猫の約3分の1は脂肪の消化率が低下し、14歳を超える猫の約5分の1はタンパク質の消化率が低下することを考えると、これは当然と言えます4

ペットの長生きを支えている最も重要な要因は?

今日のペットの長寿化を見ると、ペットがより健康により長生きするようになった要因として、大まかに以下の3つを挙げることができます。

1. ペットの飼い主からペットの「親」へ:パラダイムシフト

ここ数年、ペットの飼い主の意識が目立って変化しており、自分のことをペットの「親」とみなす人が増えています5

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このような意識の変化の中、ペットの飼い主の間で、より健康的で栄養バランスの取れた食事、予防的ケア、こまめな受診、ペットのライフステージに合わせた保険に、もっと費用をかけてもかまわないと考える傾向が強まっています。

グラスルーツ・リサーチ®の調査結果:

  • 米国では、飼い主の69%が、ペットの寿命を延ばすために必要ならば動物病院への支出を増やすとしています6
  • 欧州では、飼い主の46%が、ペットの栄養状態を向上させるためにプレミアム価格のペットフードを購入しており7、35~40%が割高でも質の高いフードを購入することを検討しています。

別の調査によれば、保険に加入している北米のペットの数は、2021年は440万頭だったのが2022年には536万頭に増加し、年平均成長率は21.7%となりました8。ペット保険に加入している飼い主は、動物病院の費用をあまり心配せず、定期健診や治療のためにより頻繁に動物病院を受診する傾向にあると考えられます。保険加入率の上昇は、ペットケア産業の成長にプラスに働いています。

ある大手ペット保険会社は、保険に加入しているペットの飼い主が動物病院で保険証を提示すれば、保険でカバーされない自己負担分のみを支払うことができる窓口精算制度を設けています。窓口精算を導入することで、動物病院を受診する際の金銭的な不安を取り除くと同時に、事務コストを大幅に削減することを目指しています。この保険会社はまた、ペットについての理解を深め、重大な病気を防ぐことを目的とした飼い主向けの情報提供サービスや電話相談も提供しています。

2. 長生きのカギ は、高品質なフード

高品質のフードとより持続可能なペット用品に移行する飼い主が増えています。これは、飼い主が自らの健康志向をペットにも投影し、ペットに健康的で、年齢に応じた適切な栄養の食事を与えたいと考えていることを反映しています。その結果、特にシニアペットの特別な栄養ニーズに応えるサプリメントやフードの市場と品揃えがどんどん拡大しています。

ペットフード—最も重要なポイント

ペットフードを購入する際の最も重要なポイントは、栄養や健康へのメリットとペットの嗜好であり、最も重要性が低いのは獣医の推薦です。

ペット用のフードを購入する際、最も重視するポイントはどれですか?1(最も重要)から6(最も重要でない)まで順位を付けてください。

出所:AllianzGI Grassroots Research®, October 2021

3.より迅速でより効率的な治療決定

シニアペット特有の栄養ニーズに合った食事と並行して、定期的な診断検査、予防的ケア、健康状態に関する総合的な情報もペットの長寿を支える役割を果たしています。こうしたソリューションを組み合わせて利用することで、慢性疾患や加齢に伴う疾患の兆候を早い段階で突き止めて予防的介入を行い、適切な治療をタイムリーに受けることが可能になっています。

獣医用診断ソフトウェアとサービスを提供しているある世界的企業は、獣医が個体の健康状態について総合的なデータを作成し、異常を早期発見できるようにするソリューションを提供しています。治療を受ける個体に特化した分かりやすい診断結果は、飼い主への情報提供に役立ち、個体の治療歴に合わせた療法食や受診をサポートします。

動物医療の高度化と革新が進むにつれ、動物用医薬品の開発にかかるコストと期間が削減され、結果として動物医療の成長を支えています。それと並行して、予防的ケアに対する意識が高まり、ワクチンが動物の健康維持とペットからの人獣共通感染症の感染予防の両方に重要であるとの認識が浸透していることも、市場拡大の要因として挙げられます。

出所:Global Market Insights:Veterinary Services Market, June 2022

感染症の60%と新たな感染症の75%が人獣共通感染症に由来するという最近の試算は、ワクチンの大切さを浮き彫りにしています9

ペットの長生きが人間の心身の健康にもたらすポジティブな影響

ペットとの触れ合いが人間にもたらすメリットは、興味深い研究テーマですが、まだ十分に検証されていません。しかし、欧州の犬の飼い主を対象にした弊社の調査は、犬を飼うことは、心身の健康の向上に貢献し、社会的な交流にも役立つことを示しています。屋外で新鮮な空気を吸ったり散歩したりして過ごす時間が増えることは、人間の心身の健康全体にプラスに働くと思われます。


犬との散歩は、あなたの心身の健康に良い影響があると感じますか?

出所:AllianzGI Grassroots Research®, October 2021

投資にとっての意味合い

現在の市場環境は厳しく、ボラティリティが高いものの、ペット経済はいくつかのポジティブな要因に支えられた堅実な長期テーマであるという弊社の考えに変わりはありません。弊社の投資先企業は今後も長期にわたり、以下に挙げるポジティブなトレンドの恩恵を受けると考えられます。

  • 治療から予防へ
    ペットの病気に対するアプローチが治療から予防にシフトしていることを受け、AIを活用した予防的ケアの成長と臨床治療のデジタル化が加速する可能性があります。また、新型コロナ禍の前に比べ、在宅勤務をする人が増えています。フレキシブルワーク制度によって家で過ごす時間が増え、飼い主はペットとより多くの時間を過ごせるようになりました。その結果、ペットの健康問題に気付きやすくなり、定期的な健康診断のために以前よりも頻繁に動物病院を訪れるようになるかもしれません。
  • インフレ圧力に強いペット経済
    ペットフードやヘルスケアのように消費者のニーズに基づく需要主導型の製品カテゴリーは、インフレ圧力に強いと言えます。インフレ率の上昇も、ペット経済の長期的な成長に有利に働く要因です。ペット製品・サービスを提供する企業は、値上げによってコスト上昇分を飼い主に転嫁しやすい立場にあるため、より強い価格決定力を持っています。2022年の高インフレ環境において、弊社のペット関連ポートフォリオに含まれるいくつかの企業は、特にペットケア製品に関して大きな価格決定力を持っていることを示しました。
  • 人口動態
    人口高齢化と健康志向を背景に、ペット愛好家の増大に拍車がかかっています。特に新興市場における中間層の成長とともに、ペットを飼う人の数も、ペットが受けるケアのレベルも上がっています。

中国などの経済国では、ペット市場は2024年には3倍に成長すると予想されています10。中国のペットの飼い主の過半数は、ミレニアル世代かZ世代(1990年以降生まれ)に属しています。中国のZ世代は価格をそれほど気にせず、品質の高い製品を購入する傾向が強いため、これらの世代グループの中では、価格決定力はさらに顕著になる可能性があります11。人口動態を背景とする中国のペット経済の成長ポテンシャルは、市場がまだ飽和状態に達していない状況からも見てとることができます。具体的には、若い世代の6割以上が将来ペットを飼う予定である一方、すでに飼っているのは1割にも届いていません12

1 Guinnessworldrecords.com: Oldest dog ever record broken
2 Guinnessworldrecords.com: Oldest cat living
3 Science.org: A dog that lives 300 years? Solving the mysteries of aging in our pets. December, 2015
4 Sciencedirect.com: Senior Pet Nutrition and Management. March 2021
5 AllianzGI/Grassroots Research®, October 2021
6 Survey of pet owners in the US 2018
7 AllianzGI Grassroots Research®, October 2021.
8 North American Pet Health Insurance Association (NAPHIA). May 2023
9 Council on Foreign Relations: The Global Governance of Emerging Zoonotic Diseases. February 2023
10 PWC China, 2020
11 Jefferies Thematic Research Gen Z: Global Purchasing Power and Influence, August 2022
12 Ibid.

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