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2023年中間の展望:エントリーポイント到来?

投資家にとって、今後数カ月はまったく予断を許さない展開となりそうです。金利動向に対処するにせよ、リセッション(景気後退)の可能性に立ち向かうにせよ、機会も同時に生じる可能性があるため、機敏に動けるようにしておくことが不可欠です。本稿では、次に来るものにどう備えるべきか、また市場の変化がもたらす可能性のあるエントリーポイントにどう備えるべきかを取り上げます。

要点
  • インフレが高止まりし、景気悪化が間近に迫る中、市場は主要な分野における期待を調整せざるを得なくなる可能性があり、今年後半は波乱含みの展開となることが考えられます。
  • その良い例として、インフレとの戦いにいまだ勝利していない中央銀行が、いったんは利上げを停止したものの、利下げに「ピボット(転換)」する前に追加の利上げを余儀なくされる可能性があることが挙げられます。
  • 経済成長が減速し、中央銀行が金利の道筋を見直す中で、転換点が訪れるかもしれません。その時点で、投資家は市場の状況に合うようにリスクを調整する必要があります。
  • タイミングが合えば、株式、ハイイールド債、国際商品にエントリーポイントが浮上する可能性があります。注目すべきは、価格決定力のある企業と、妥当なバリュエーションや構造的トレンドに支えられている企業です。
  • 高金利によって金融の不安定化が進む可能性があるため、投資家にとっても企業にとっても強靭性が重要となるでしょう。アンテナを張りめぐらし、あらゆる機会に備える必要があります。

以下に、弊社の専門家の分析をまとめました。
2023年中間の展望

シュテファン・ホーフリヒタ

「米国では追加の利上げが予想され、欧州中央銀行も、現在市場が織り込んでいる以上の利上げが必要となる可能性があります。今年後半は波乱含みの展開が予想される一方、投資家にとっては魅力的なエントリーポイントが訪れるかもしれません」

シュテファン・ホーフリヒタ

ヘッド, グローバル・エコノミクス& ストラテジー

マクロ経済見通し:恐れていたほど悪くはないが、不安定リスクは残る

いい知らせから始めましょう。2021年末以降、世界のサプライチェーンは、大きく正常化しています。ニューヨーク連邦準備銀行のグローバル・サプライチェーン・プレッシャー・インデックスはいまや、市場最低水準となっています。これは、他の条件が同じであれば、少なくとも物価上昇率を下げるのに役立つはずです。さらにOECD1のデータによれば、世界の経済活動の成長率は、2.5%前後で推移しています。これは驚くような結果ではないものの、冬の間に懸念されていたよりも、はるかにいい数字です。

ここ数カ月は、投資家にとっても悪くありませんでした。MSCIワールド指数で測定した世界の株式は6月半ばの時点で、昨年10月以降およそ10%のリターン(米国のインフレ調整後)をもたらしています。債券利回りは2023年初めから非常に安定しており、プラスの名目リターンを生み出しています。

ということは、経済が過熱もせず冷めすぎてもいないという、あらゆる資産市場を下支えする「ゴルディロックス」環境が戻ってきたのでしょうか。そう考えるのは早計です。前途にはまだいくつかの課題が横たわっており、投資家はこれからの数カ月、厳しい状況に直面することになると思われます。

  1. インフレは、頑固なまでに高止まりしています。たしかに、ヘッドラインインフレは、主にエネルギー価格の下落のおかげで減速しています。しかし、年率換算のコアインフレ(変動の激しいエネルギー・食品価格を除く)はすでに数四半期にわたり、中央銀行が目標とする2%を大きく上回る4~5%前後で推移しています(図表1参照)。賃金上昇などの第2ラウンド効果により、いったん高インフレ体制が長期にわたり続くと、インフレが減速するまでより長い時間がかかることは、学術研究や弊社独自のリサーチからも明白です2。また、現在の中央銀行の金利は、タイトな水準であるとしても過度にタイトではないことに注目すべきです。基調インフレが持続していることを考えると、世界で最も重要な中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)が今年後半に利下げに踏み切れるという市場の楽観的な見方には同意できません。弊社は、米国がさらなる利上げを実施すると予想しています。実際、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で、FRBは年内にあと2回の利上げを示唆しました。欧州中央銀行も、現在市場が織り込んでいる以上の利上げが必要となる可能性があります。したがって、債券利回りがさらに低下する可能性はそれほど高くないと思われます。
  2. 弊社のベースケースでは、米国と欧州が今年後半にリセッション入りすると予測しています。確かに、高頻度データは引き続き、経済活動が短期的には拡大し続けることを示唆しています。しかし、イールドカーブの逆転や通貨供給量の指標の縮小、金融サイクルのピークアウト(住宅価格と民間セクターのレバレッジを合わせたダイナミクスの尺度となる)といったさまざまな先行指標は、弊社のリセッション入りの判断と一致しています。歴史的には、中央銀行がインフレを抑制するために金利をタイトな水準に引き上げると、必ずといっていいほどリセッションが起こっています。これは、投資家にとって重要な問題です。というのもリスク資産がアウトパフォームし始めるのは、リセッションの前ではなく、リセッションの最中だからです。今回の景気低迷はソフトで浅いものになるというのが市場の一致した見方であるように思われます。しかし、弊社はその見方にはあまり同意できません。不動産の価格上昇期に終止符が打たれ、住宅用・商業用不動産市場の両方がピークを迎えたことにより、投資家がこれまで予想していた以上に景気が減速する可能性があります。
  3. 金融の不安定化リスクは、根強く残っています。たしかに、今年初めに破綻したり救済を余儀なくされたりした米国の銀行はいずれも、その銀行特有の問題によって崩壊したように見受けられます。同じことは、クレディスイスにも当てはまります。しかし共通しているのは、これらの銀行が、2021年の好景気を受けて民間セクターでレバレッジが高くなっていた時期に起こった急速な金利上昇に適応できなかったという点です。金利上昇は、銀行だけでなくノンバンクの金融機関にも影響を与えています。国際通貨基金(IMF)が繰り返し警告しているように、流動性の低い資産、特に不動産の市場は、金融の不安定化の源泉となる可能性があります。金融の安定への配慮は、中央銀行の仕事をいっそう複雑なものにするでしょう。しかし、これまでのところ中央銀行は、こうした金融安定リスクを考慮してインフレとの戦いを緩める意向を全く示していません。

結論として、今年後半の金融市場は波乱含みの展開が予想される一方、投資家にとってはあらゆる資産クラスで魅力的なエントリーポイントが訪れるかもしれません。株式では、景気減速が予想される中で利益予測が底を打ち、マイナスの市場環境の中でも株価が「不安の壁を登る」ときがエントリーポイントになる可能性があります。債券では、弊社の成長見通しと2022年の債券利回りの上昇を踏まえると、プラスのリターンが予想されます(ただし、そうなる保証はありません)。今は、機敏に動けるようにしておく時期です。

図表1:コアインフレの粘着性が薄れるのはいつ?

米国のインフレ率、3カ月年率換算

図表1:コアインフレの粘着性が薄れるのはいつ?

出所:AllianzGI Economics & Strategy, Bloomberg. Data as at 14 June 2023.

1 経済協力開発機構
2 出所:BIS Papers No 133 The two-regime view of inflation by Claudio Borio et al, March 2023

Virginie Maisonneuve

「世界の経済成長の減速は、今年後半の業績に重くのしかかりそうです。けれども、ファンダメンタルズが懸念されたよりも持ちこたえていることから、ポジティブサプライズの余地はまだあると思われます。これは、ストックピッカーに有利に働くでしょう」

ヴィルジニー・メゾヌーヴ

株式, グローバルCIO

株式戦略:リセッション入りのタイミング

米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに対して「タカ派姿勢」を取り、欧州中央銀行(ECB)が、テクニカル的にはリセッション入りしているにもかかわらず利上げの一時停止は視野に入れていないことを示唆する中、2023年後半のマクロ環境は投資家にとって、さらに不透明なものになる可能性があります。

投資家は、3つの重要な問いに直面しています。ここ12~15カ月の金融引き締めが経済にインパクトを及ぼすまでのスピードは、どの程度になるでしょうか。私たちはどのようなリセッションや景気減速を予期すべきでしょうか。そして、こうした状況下で企業利益はどうなるでしょうか。

金融政策の引き締めの影響は遅行的であり、現れるまでに通常、12~18カ月かかります。しかし、新型コロナ禍で中央銀行が注入した過剰な流動性により、その影響は遅れて現れると予想するのが妥当でしょう。米国経済が目に見えるほど底堅いことも、要因の一つです。

インフレの粘着性も、中央銀行がいつまでタカ派的なメッセージを発信するかに影響を与え、中央銀行が今後取る行動を決定付けます。したがって、インフレ指標とそのサブトレンドを注視することが極めて重要となります。ヘッドラインインフレの数値は下がりつつあるものの、中央銀行は金融緩和に転換する前に、より明確な物価の冷え込みの兆しを確認することを望むでしょう。米国では、食料・エネルギー価格を除くコアインフレは、5月に前年比5.3%に低下しましたが、昨年12月からそれほど下落していません。ユーロ圏のコアインフレも、5月に5.3%に低下しましたが、今年の初めに比べると依然として高止まりしています。

コアインフレの粘着性が判明していることから、景気が減速し始めている可能性がある中でも、サービスについては価格圧力が根強く残ることが考えられます。重要なのは、原材料費が下落しているにもかかわらず、多くのセクターで人件費が上昇していることです。たとえば、2023年第1四半期のユーロ圏の賃金上昇率が、前四半期の4.8%から5.6%に上昇したことは、ECBにとって懸念材料となるでしょう。

したがって、投資家は今回の利上げサイクルが終わりに近付いている可能性があることに安堵しているかもしれませんが、実体経済の中で活動している企業は今後数カ月にわたり、圧力にさらされることになります。一部の企業は、他社よりも強靭性を示すと思われます。

景気減速か、それともリセッションか?

一部の地域では、リセッションが迫っているように見えますが、今のところリセッション入りのタイミングはつかみにくい状況です。例外は欧州で、2022年第4四半期と2023年第1四半期の両方で成長率がマイナス0.1%となったことは、テクニカルリセッションを意味します。

米国と英国では、多くの経済指標が下降しています。経済に出回っている貨幣の量を示す通貨供給量の指標は、数カ月前から縮小しています。企業活動の指標として注視される最新の製造業購買担当者景気指数(PMI)も、低下傾向が続いています1

それにもかかわらず、これら3つの国・地域において失業率は数十年来の低水準を保っており、リセッションにつながりかねない個人消費支出の縮小を遅らせる役割を果たしています。ユーロ圏では今年に入り雇用が30年ぶりの高水準となり、OECDが0.9%の伸び率を予測していることから、欧州のテクニカルリセッションは、通常とは異なる特徴を示しているといえます。リセッションでは通常、両方の指標が弱まります。

中国経済は、新型コロナ後の経済再開のおかげで2023年第1四半期は回復したものの、他国の景気減速により中国の輸出品に対する世界的な需要が減少している影響で、再び低迷しています。また、企業がサプライチェーンの強靱化を目指して中国以外にも活動拠点を広げる「チャイナプラスワン」の動きなど、世界のサプライチェーンの再編成による影響もあります。

とはいえ、中国に関して弊社は、悪い知らせは良い知らせをもたらすと予想しています。中国当局は今年後半もおそらく、不動産セクターと消費者に継続的な支援を提供するでしょう。また、テクノロジーとイノベーションを中心に国内産業の担い手を支えるための改革にも力を入れるとみられます。しかし短期的には、中国の成長鈍化は、現在進んでいる世界経済の減速に拍車をかけると思われます。

利益:維持戦略

こうした背景を踏まえて、投資家は何に注目すべきでしょうか。企業にとっての大きな試練の一つは、売上を犠牲にすることなくコスト上昇を転嫁できるかどうかということです。言い換えると、どの企業が利幅を維持できるかということになります。

金利がより高い水準により長くとどまった場合、従業員からは賃上げを、サプライヤーからは価格引き上げを要求される中で一部の企業は、「マネーに再びコストがかかる」ようになることに苦しめられるでしょう。それでも2023年第1四半期は、インフレの影響を考慮して利益予想を引き下げた多くの企業が、実際にはアナリストの予想を上回る利益を計上しました。

一部の企業には、インフレ圧力以上に価格を引き上げる「グリードフレーション」の傾向が見られ、それが予想を上回る利益につながった部分もあります。しかし、このようなやり方は販売数量にマイナスの影響をもたらし、将来の利益に影響を与えかねません。弊社は、真の価格決定力を持つ、質の高い企業の株をホールドしたいと考えています。世界の経済成長の減速は、今年後半の業績に重くのしかかりそうです。けれども、ファンダメンタルズが懸念されたよりも持ちこたえている(図表2を参照)ことから、ポジティブサプライズの余地はまだあると思われます。これは、ストックピッカーに有利に働くでしょう。

銀行セクターにおけるストレスと、そのストレスが一部の銘柄に集中したことは、地域や資産クラスによって利上げの影響の現れ方にばらつきがあることをタイムリーに再認識させる役割を果たしました。これもまた、投資家が画一的なアプローチを避けるべき理由の一つです。

レジリエンスと構造的なトレンドを重視する

焦点が金利からリセッションあるいは景気減速のタイミングへと移る中、マクロ経済の見通しの変化を考えると利益予想にずれが生じているように思われることから、株式市場は再びボラティリティに見舞われる可能性があります。

2023年の残りの期間について、弊社はレジリエンスと長期の構造的成長の機会を重視しています。投資家は、さらなるボラティリティに対して強靭なポートフォリオの構築を心がけると同時に、インプットコストの上昇と利幅への圧力に対して強靭な企業をはじめ、出現する機会を捉えられるようなポジションを取る必要があります。

投資ポートフォリオのカギは、クオリティ、配当、持続可能性に重点を置き、リーズナブルなバリュエーションと長期的な構造的トレンドに基づいて、どの投資スタイルでも堅調な銘柄をホールドすることでしょう。

弊社が引き続き魅力的があるとみなしているのは、収益性の高いテクノロジー銘柄、人工知能と一部の産業銘柄(リショアリング、自動化、気候変動ソリューションなどが追い風となっている銘柄など)です。弊社はまた、歴史的に景気循環に逆行する傾向のある中国経済も引き続き、選別の機会をもたらしているとみています。

図表2:利益の悪化に対して強靭な企業はどれか?

図表2:利益の悪化に対して強靭な企業はどれか?

出所:AllianzGI Economics & Strategy, Refinitiv Datastream. Data as at 14 June 2023.

1 出所:U.S. manufacturing slumps further in May; employment picks up, Reuters, 1 June 2023; Euro zone business growth slowed in May as factories struggled-PMI, Reuters, 5 June 2023; UK factory output contracts again in May, Reuters, 1 June 2023

フォンク・ディクスミエ

「厳しいマクロ的見通しに基づき、格付けの低い債券を物色するのではなく、より堅固なバランスシート(と十分な利回り)を有する投資適格企業を重視しています」

フォンク・ディクスミエ

債券, グローバルCIO

債券戦略:利回りは魅力的だが、移行はシームレスには進まない

2023年後半に予想されるマクロ環境―成長の鈍化、インフレのピークアウト、利上げサイクルの成熟化―は、債券市場にとって明るい背景になると思われます。しかし、利上げサイクルの転換点には偏りが生じがちであり、より大きな成長鈍化が信用のバリュエーションにまだ織り込まれていないことから、注意が必要と考えます。

世界のマクロ見通し、ひいては金融政策の進路に対する確信の欠如が、下半期に向けて投資家が抱える大きな課題になると弊社はみています。経済指標は悪化しており、この傾向は今後数カ月続くと予想されます。しかし、中央銀行と投資家にとって状況を不透明にしているのが、予想外の指標です。コアインフレは粘着性を示しており、労働市場はまだ利上げの圧力に屈していません。その結果、今年もボラティリティが債券市場の特徴となると考えられますが、こうした状況は投資家に魅力的なエントリーポイントをもたらす可能性があります。

金融セクターをめぐる不確実性はこれから数カ月持続することが予想されます。一方で弊社は、今年初めに見られた銀行ストレスを、純粋に特異的な出来事として片付けるべきではないと考えています。どのケースも過剰なレバレッジが関わっており、それを明るみに出したのが歴史的なペースの利上げでした。シリコンバレー銀行、シグネチャーバンク、クレディスイスの破綻はいずれも個別の出来事でした。にもかかわらず、これらのクレジットイベントを受けてリスク資産は、しばしば無差別に投げ売られました。

弊社はまた、国債市場(すなわち、「金利市場」)におけるボラティリティは、短期的には持続するとみています。市場の見解が分かれていることを考えると、利上げから利下げへの移行はスムーズに運びそうにはありません。最近、FRBが2023年中に利下げに転じるとの投資家の期待が後退する中で2年物米国債の利回りが乱高下したことは、金融政策レジームの転換がシームレスには進まないことを如実に示していました。

デュレーションを重視する

とはいうものの、予想される金融引き締めのペースが鈍化し、政策金利がそのサイクルのピークに近付きつつあることから、金利市場のボラティリティは必然的に低下すると思われます。したがって弊社は、特に金融引き締めサイクルがより進んでいる米国において、国債と金利のデュレーションについて前向きな見方を強めています。短期的には、インフレ率が目標を上回っている間はFRBが利下げに消極的であることを考えると、米イールドカーブの短期部分は引き続きショックに弱いと思われるものの、今後3~6カ月は、7~10年物米国債が検討対象になるとみています。

一方、ユーロ圏と英国では、デュレーションを長くすることについて弊社は慎重な見方をしています。欧州中央銀行とイングランド銀行の利上げはまだ続くかもしれませんが、世界的な景気減速を前にどの程度金利を引き上げられるかは疑問の余地があります。全般的に、最も価値をもたらすと思われる国債市場は、イールドカーブのどの部分でも「実質」利回り(すなわち、インフレを考慮に入れた後の利払いによるリターン)が魅力的であり、利上げサイクルが十分に織り込まれている市場です。したがって魅力的な市場として、米国、ニュージーランド、メキシコ、ブラジルを挙げられますが、イールドカーブがスティープ化しているユーロ圏周辺国の国債にも、投資機会が生じる可能性があります。

景気減速が織り込まれていない中、利益がカギになる

クレジット(すなわち、社債など国債以外の債券)では、バリュエーションに今後のさらなる景気減速の可能性が十分に織り込まれていないと思われます。ファンダメンタルズは、特に2022年末の地合いと比較すると、予想より持ちこたえていますが、信用の質は近いうちにピークをつけるでしょう。投資家は引き続き企業の利益(図表3を参照)に注目する必要があります。資金調達コストの上昇と利益成長の鈍化は、より脆弱な企業のバランスシートを圧迫することになるため、利益に注目することで、より強靭なセクターと銘柄が明らかになるでしょう。

したがって注意は必要ですが、オール・インの利回り(すなわち、元の利率にクレジットスプレッドを加えたもの)は魅力的なキャリーをもたらしており、さらなるボラティリティに対するバッファの役割も果たすと考えられるため、弊社ではクレジットを引き続きオーバーウェイトとしています。弊社は、厳しいマクロ経済の見通しに基づき、格付けの低い債券を物色するのではなく、より堅固なバランスシート(と十分な利回り)を有する投資適格企業を重視しています。しかし、ファンダメンタルズが引き続き予想以上に好調に推移すれば、ハイイールド債にさらに売りが出た場合、ヘッジとなりうるB格付けの債券を中心に個別銘柄ベースでリスクを追加する用意があります。

金融セクターに関しては、米国の地方銀行セクターは健全性を維持しており、現時点では地方銀行の破綻が拡大する可能性は低いと考えられます。弊社は引き続き、潤沢な資本と多様な資金源・収益源を有するシステム上重要なEUおよび米国の銀行をオーバーウェイトとしています。

図表3:利益が悪化すると失業率が上昇する傾向にある―その時期はいつ?

図表3:利益が悪化すると失業率が上昇する傾向にある―その時期はいつ?

出所:Allianz Global Investors, S&P Global, US Bureau of Labor Statistics. Data as at December 2022.

グレガー・ハート

「弊社のマルチアセットポートフォリオでは、主要な資産クラスのうち株式について最も前向きに見ています。弊社の定量的シグナルとポジショニングシグナルは非常に好調ですが、今後ボラティリティが再び高まる可能性があるため、より慎重に選別しています」

グレガー・ハート

マルチアセット, グローバルヘッド

マルチアセット戦略:流動的な環境における柔軟性

全体的な不確実性と明らかなリセッションリスクを考えると、年初来の市場は非常に底堅いといえます。理由の一つとして考えられるのが、2022年が「annus horribilis(ひどい年)」となり、機関投資家が冬の間慎重なポジショニングを取っていた後で、ある種の「平均回帰」が起こっていることが考えられます。とはいえ、中央銀行の当局者が景気を落ち込ませずにインフレを抑制できるかは、疑問が残ります。銀行システムにおけるストレスの増大と金融の不安定化の兆候は、積極的な利上げがエコシステム全体に影響していることを示す指標です。

昨年珍しく相関的にアンダーパフォームした債券市場と株式市場は予想通り、乖離し始めています。2023年に入ってから、世界の株式市場と債券市場は上昇し、バランス型のマルチアセットポートフォリオは絶対ベースでプラスのパフォーマンスを示しています。では、投資家は下半期に向けてどのようなポジションを取るべきでしょうか。

株式に部分的にバリューが出現

弊社のマルチアセットポートフォリオでは、主要な資産クラスのうち株式について最も強気に見ています。弊社の定量的シグナルとポジショニングシグナルは非常に好調ですが、今後ボラティリティが再び高まる可能性があるため、より慎重に選別しています。

  • 新興国市場―年初来のパフォーマンスが低調だった新興国市場は、弊社のマルチアセットポートフォリオのグローバル株式における相対的なバリュー銘柄として弊社の選好銘柄の一つとなっています。新興国市場は、魅力的なバリュエーションと米ドル安の恩恵を受けているように見受けられます。中国のゼロコロナ政策後の経済再開と中国政府による国内経済の支援策は、新興国市場全体のセンチメントの追い風になると思われます。
  • 欧州―利益トレンドは、欧州企業が景気の低迷にもかかわらず強靭さを示していることを示唆しています。先行きは、欧州中央銀行(ECB)の利上げ幅にも左右されます。市場の予想を上回る利上げ幅は、新たな逆風をもたらす可能性があります。
  • 日本―日本銀行(日銀)の超金融緩和政策は、最近最も好調な株式市場の一つである日本株市場に強い追い風となっており、日本株市場はいまだに、魅力的なバリュエーションの恩恵を受け、海外からの資金流入によって支えられています。しかし、日銀新総裁の植田和男氏が弊社の予想通り、今夏に現在のイールドカーブ・コントロールを見直した場合、市場のボラティリティが高まる可能性があり、投資家はポジションを見直す用意をしておく必要があるかもしれません。

米国では、長引くリセッション懸念と高いバリュエーションが市場の一部に重くのしかかっています。株価は、銀行セクターにおける新たなストレスの兆候に敏感に反応すると思われますが、米国の地方銀行の健全性に対する懸念は今のところ後退しています。米国の大型ハイテク銘柄は、人工知能(AI)アプリケーションと関連コンポーネントに対する収益予想の大幅な引き上げを受けて、大きく上昇しています。AIが実際に収益に与えるインパクトが現れるのはこれからですが、新たなトレンドが株式市場に与える影響力を過小評価すべきではありません。

債券―金利の転換が進む

バランス型のマルチアセットポートフォリオ内では、今後数カ月は債券に関して前向きな見方を強める余地があります。

中央銀行の金融引き締めサイクルが終わりに近付けば、利回りが上昇し、国債の魅力が増す可能性があります。この現象はすでに米国債に見られ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ終了が近いとの期待から、短期金利が急上昇しています。米国の景気鈍化の兆候と地方銀行をめぐる最近の懸念を受けて、投資家の間ではFRBの「ピボット」(金融引き締めから金融緩和への政策転換)に対する期待が高まっています。上述したように、弊社は、そのような期待は時期尚早と考えています。

欧州の国債については、弊社はECBによるさらなる金融引き締めの可能性を踏まえて、ややディフェンシブな見方をしています。米ドルの調整と中国の成長見通しに支えられた分散手段として、新興国市場の国債を検討してもよいかもしれません。中国の成長は、一部の国際商品市場にも追い風となり、他の地域における弱い成長環境による需要低下を補うと思われます。

  • ―電気自動車の充電ステーションから石油掘削プラットフォームまで、銅はあらゆるものになくてはならないことから、研究者は将来の供給に不足が生じると予測しています。しかし、これからの数カ月は、さらに下落する余地があると思われます。
  • ―実質利回りの低下と中央銀行による金準備の積み増しが金価格を下支えしています(図表4参照)。インフレと地政学的リスクが高止まりしている環境では、貴金属は引き続き魅力的かもしれませんが、金についてはより良いエントリーポイントに備えて今は手を出さないのがよいと考えます。
  • 石油―弊社は、市場が最近のOPECプラス1の供給引き締めによる影響を過小評価していると考えています。その影響は、2008年の金融危機による需要崩壊に匹敵するものでした。OPECプラスはまた、低価格を容認しないという明確なシグナルを発しています。
米ドルの行方が多くの投資のカギに

米ドルの動向が今後数カ月の重要な要因となるでしょう。米ドルは昨年、通貨バスケットに対して20年ぶりの高値を付けた後、下落しています。投資家は、FRBが予定通り利上げを進めていると考えていますが、欧州ではさらなる利上げが行われる可能性が高くなっています。バリュエーションは、ユーロなどの他の主要通貨を支えています。しかし、世界的なリセッションの懸念が表面化する中、米ドルは安全な避難先としての地位を維持する可能性があります。

日本円について弊社は、そのバリュエーションとリスク回避的な環境を踏まえ、前向きに見ています。日銀がイールドカーブ・コントロール政策を終了すれば、日本円は上昇すると予想されます。

全体的に、弊社のマルチアセット戦略では、迫り来るリセッションリスクと利上げに対応する一方でリスク資産の機会の生かせるように柔軟性を維持することが望ましいと考えています。

図表4:中央銀行は金を買い入れているが、安全な避難先としての金の地位はいつまで続く?

図表4:中央銀行は金を買い入れているが、安全な避難先としての金の地位はいつまで続く?

出所:Metals Focus, Refinitiv GFMS, World Gold Council. Data as at 31 March 2023

1 OPECプラスは、23の石油輸出国で構成され、世界の原油生産のおよそ40%を占めています。

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