米連邦準備制度理事会
FRBは米国経済の底堅さを踏まえ政策金利を据え置く見通し
投資家の利下げ予想は依然として非現実的なものです。弊社は、FRBが金融政策の変更を検討するには時期尚早と考えます。
要点
- 米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の変更を検討するには時期尚早と考えられ、今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利下げの発表はないものと予想する
- 米国経済の底堅さを踏まえると、FRBが正確な利下げ開始時期に言及するとは考えられない。弊社は、利下げ開始は年後半以降になると予想する
- さらなる長期金利の調整余地は限られていると見られ、1月30日・31日のFOMCを受けて市場が大きく調整する可能性は低いだろう
米連邦準備制度理事会(1月30日-1月31日)の見通し
2023年末には、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めの最終局面に達したと市場が認識したことにより、利下げへの期待が膨らみ、債券相場は力強い上昇を見せました。期待が最高潮に達した時点で、市場は2024年3月に100%の確率で初回の利下げ1が行われ、2024年中に160ベーシスポイント(bp)が引き下げられると予想していました。
それ以降、FRB理事らは、市場の予想以上に利下げには時間が必要なことに言及し、投資家の楽観的な見方2を抑えようとしてきました。投資家は、2024年に予想される利下げの規模(足元では142bp3)と利下げ開始時期(3月会合での利下げ予想は足元では52%4のみ)を修正しました。しかし、弊社の見解では、市場の期待は依然として非現実的なものです。
弊社は、FRBが金融政策の変更を検討するには時期尚早と考えます。
過去2年間の大幅な金融政策の引き締めにもかかわらず、経済成長は驚くほどの底堅さを見せています。2023年第4四半期の成長率は、+2.0%5の予想を上回る+3.3%となり、景気後退が回避される「ソフトランディングまたはノーランディング」シナリオが現実化しつつあるようです。財政政策が経済を支えているおかげで、実質賃金のプラスの伸びから恩恵を受けている家計消費、そして投資がこの好環境をけん引しています。
FRBにとって、経済の底堅さは良いことです。つまり、それはFRBの引き締めが行き過ぎていないことを示しているからです。そのため、FRBはインフレに集中できるようになりました。インフレは鈍化していますが、まだ目標には達していません。最新のヘッドラインインフレ率は予想をわずかに上回っています。12月の消費者物価指数(CPI)は+3.2%の予想に対して+3.4%でした。また、同じ月のコアCPIは+3.8%6の予想に対して+3.9%となりました。一方、FRBが重視するコア個人消費支出(PCE)価格指数は12月に2.9%となり、予想値3.0%を超えて大きく低下しました。
FRBは、インフレが物価安定目標に向かい収束しつつある確証が得られた場合にのみ利下げを開始するものと考えます。今回のFOMCで、FRBは正確な利下げ開始時期には言及せず、引き続きデータ重視のアプローチで臨む姿勢を確認することが予想されます。利下げ開始は年後半以降になると弊社は予想します。
1月25日の欧州中央銀行の理事会後と同様に、今回のFOMC後に大きな市場調整はないと見ています。長期金利は2023年12月の最低値7から30bp上昇しており、たとえパウエルFRB議長が予想以上にタカ派的な発言を行ったとしても、さらなる金利調整の可能性は限られると考えます。弊社は、市場が弱含む局面を捉えてデュレーションのエクスポージャーを積み増すつもりです。
1. Bloomberg, 2023年12月27日
2. 1月16日、クリストファー・ウォーラーFRB理事は、「経済活動と労働市場は良好な状態にあって、インフレは徐々に2%に戻りつつあり、過去のように迅速に行動したり、金利を引き下げたりする理由は見当たらない」と述べています(出典: Bloomberg)。
3. Bloomberg, 2024年1月26日
4. Bloomberg, 2024年1月26日
5. US Bureau of Economic Analysis, 2024年1月25日
6. US Bureau of Labor Statistics, 2024年1月
7. Bloomberg, 10y Treasury at 3.80%, 2023年12月27日