欧州中央銀行理事会
慎重かつ警戒姿勢を維持
来週のECB理事会では政策金利は据え置かれる見通しですが、イラン情勢を受けたエネルギー価格の急騰により、より警戒的なトーンが示される可能性があります。
主なポイント
- 来週のECB理事会では政策金利は据え置かれる見通しですが、イラン情勢を受けたエネルギー価格の急騰により、より警戒的なトーンが示される可能性があります。
- 市場ではすでに「2026年後半までに約80%の確率で利上げ」の織り込みが進んでおり、ECBはこれに異議を唱えるよりも、むしろ妥当とみなす可能性が高いと考えます。
- すぐに政策変更が行われるとは考えにくいものの、インフレ期待次第で速やかに行動する準備があるというメッセージへとシフトするとみられます。
エネルギーショックがインフレを押し上げる見通し
中東情勢を背景とした原油・天然ガス価格の高騰(開戦以来30%以上上昇)は、典型的な供給ショックとなり、物価上昇と成長下押しという難しい環境をつくり出しています。2月の総合インフレ率は1.9%でしたが、再び目標を超過する見遠しです。当社モデルでは、インフレ率は3月に2.4%、5月頃には3%程度に達し、その後も2027年にかけて目標を上回る展開を予想します。なお、今回公表されるECBスタッフ予測は、紛争発生前のデータが基準となっているため現状を十分反映できません。成長見通しは依然堅調とされる一方、新たなインフレ圧力は織り込まれていないため、追加シナリオとして「上方リスクのあるインフレ」と「弱めの成長」を示す可能性が高いとみています。これはオランダ中銀のスレイプン総裁がすでに示唆しています。
2022年のタカ派スタンスを再び踏襲する可能性
過去1年でインフレを目標付近まで戻した経験から、ECBはイラン情勢の影響を慎重に見極める余裕があります。しかし、こうした成功体験が、2022年のタカ派路線(早期利上げでインフレ期待を抑え込む)を再び持ち出す判断を後押しする可能性も否定できません。実際、複数の理事(シュナーベル、ナーゲル、ミュラー、副総裁デギンドス)は、自ら「インフレ期待のリスク」を強調しており、これは警戒を意識したメッセージと言えます。
まとめ
金利:ECBが2026年に利下げする可能性は低く、むしろ利上げ方向のリスクが強まっています。短期金利は高止まりし、エネルギー価格が高水準にとどまれば上振れリスクが続きます。
債券:ECBが警戒姿勢を強めれば、長期金利は支えられやすく、タイトな金融環境が長引くとの見方が広がる可能性があります。国債スプレッドは当面安定的とみますが、エネルギーショックが長引けばボラティリティは高まり得ます。当社では米国債よりスペイン国債のロングを選好します。
為替:他の中央銀行に比べECBがタカ派寄りとなれば、ユーロは一定のサポートを受けると見込まれます。特に米欧の金利差見通しが広がる局面では追い風になりそうです。
リスク資産:成長鈍化+インフレ粘着の組み合わせはリスク資産にとって好ましい環境ではなく、ECBのタカ派姿勢はむしろ逆風となり得ます。ただし、ECBが引き続き段階的・データ依存的なアプローチを取る限り、金融環境が急激に悪化する可能性は限定的です。
ECBは、現在の不透明感やリスクを踏まえ、「当面は静観するものの、必要とあれば迅速かつ断固として行動する」というメッセージを明確に打ち出すと見ています。