米連邦準備制度理事会
FRBにとっての合言葉は「警戒」
米連邦準備制度理事会(FRB)による過去40年間で最も積極的な金融引き締めサイクルは、おそらくターミナルレート(利上げの最終到達点)に達したと弊社は考えます。
要点
- 良好なインフレ関連の統計にもかかわらず、今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で主要政策金利は据え置かれると弊社は予想する
- 堅調な雇用統計は、米連邦準備制度理事会(FRB)に、警戒を解かず、そして投資家の利下げ期待を抑えるように促すであろう
- 市場の見通しが再調整されれば、イールドカーブはより高い水準に押し上げられるだろう
米連邦準備制度理事会(12月12日-12月13日)の見通し
米連邦準備制度理事会(FRB)による過去40年間で最も積極的な金融引き締めサイクルは、おそらくターミナルレート(利上げの最終到達点)に達したと弊社は考えます。
インフレと成長に関連する最新の統計は、この見方を裏付けるものです。過去数カ月間、インフレは低下し続けてきました。FRBが重視するインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数は、9月は前月比0.16%の上昇にとどまり、過去6カ月間の年率換算は2.5%となりました1。これは、FRBによる2%のインフレ目標に近い水準です。
FRBにとってこの数字は心強いものかもしれません。しかし、雇用統計の堅調さを踏まえれば、FRBは警戒を怠るべきではありません。最新の労働統計では、雇用創出と賃金上昇が力強く続いていることがわかります。労働参加率の上昇にもかかわらず、失業率は3.7%に低下しました。また、単位労働コスト(企業が1単位の生産量を生産するために労働者に支払う金額)は前月比0.4%上昇し、0.3%の予想を上回りました。これは、2022年11月と比較して4%の上昇です2。
したがって、今後数カ月の間に2次的効果(second-round effects)によりインフレが加速する可能性がある中で、FRBが利下げを行うのは時期尚早かもしれません。労働市場のリバランスが行われ、求職者の数が求人数を上回る水準に戻る状況は、なかなか実現しません。FRBは、利下げを開始する前に、労働統計のさらなる沈静化を見極めたいはずであり、今回の連邦公開市場委員会(FOMC)3では、市場に対し辛抱強く待つようメッセージを送る可能性が高いと思われます。
投資家は、FRBが直面する課題を一定程度理解しており、最新の雇用統計を受けて利下げ見通しを修正しました。3月時点では最初の利下げが100%織り込まれていましたが、現在では44%しか織り込まれていません。弊社の見解によれば、この水準はまだ楽観的に思われます。最初の25ベーシスポイントの利下げは、2024年半ばより前には実施されないものと弊社は考えます。市場が見通しを再調整する中で、イールドカーブは、弊社からすれば行き過ぎとも思われるラリーの後、より高い水準に調整されるものと見られます。
1 Bureau of Economic Analysis, 2023年11月30日
2 US Bureau of Labor Statistics, 2023年12月8日
3 Bloomberg, 2023年12月11日