European Equity Markets Commentary
欧州株への視点:構造的な追い風か、景気循環による逆風か?
今決算発表シーズンでは、業績見通しに対する修正の大部分が上方修正となり、底堅い1年のスタートになりました。当初、アナリスト予想の下方修正を受け見通しが引き下げられましたが、決算発表の内容は2023年の後半に良好な基盤をつくり、明るいムードが生まれました。現に欧州では企業収益の堅調ぶりがはっきりと示されており、修正内容および向こう1年の収益予想のトレンドにおいては米国企業を上回っています。下期には欧州で軽微な景気後退(リセッション)があるかもしれませんが、2023年度内に企業が深刻な不況に陥る恐れは大きく後退しました。
混乱と歪みに特徴づけられた2022年を経て、2023年は平常化がトレンドになるとみられます。天然ガスおよび電力の価格は通常水準に戻っています。現在、多くの企業が受注残高を売上と利益に転換しており、サプライチェーンの問題も解消し始めています。景気循環に関わる懸念は若干残るものの、景気敏感型の業種でも説得力のある業績をあげている企業もあり、化学、工業、自動車の各業種は軒並み好業績でした。消費関連では贅沢品の需要が極めて旺盛で、一部では突出した好業績が記録されています。加えてこの好調は、販売数量の増加よりも、その他のサブセクター全般で実施された値上げに支えられたものでした。
印象的な今決算シーズンの後には、複数セクターで構造的な好機が訪れると予想しています。特に顕著なのが、サプライチェーン問題の解消に追い風を受けている工業部門です。受注残高がまだ高水準にとどまっている分野もありますが、リードタイムが平常化しつつあることから、2023年に一定水準の成長を遂げ、2024年については見通しが改善するものと弊社はみています。短期的に在庫調整が行われることは確実とみられますが、中長期的にはさまざまなトレンドが主要企業の追い風になるでしょう。自動化製品の成長に伴って経常収益が伸びることが通例のソフトウェアソリューションはその一例で、この分野は力強い成長をみせています。なかでも、製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェアは、投資家の関心が高いと思われるものの1つです。このソフトはデジタルツインをベースにした製品の開発、製造を可能にするため、革新的な製品が市場化されるまでの時間を短縮できます。クラウドベースの製品ライフサイクル管理ソフトウェアによって、幅広い顧客基盤が実際にこの機会の恩恵を受けることができるでしょう。
このほか、追い風になるトレンドとして脱炭素化を挙げることができます。このトレンドのもと、資源利用の効率化を実現するソリューションは高成長を遂げています。もう1つのトレンドがオンショア化、ニアショア化の動きで、コスト上昇と労働力不足を背景に、自動化はますます急務となっています。つまり、構造的に強い追い風が吹いていることは疑いの余地がありません。問題は、この構造的な追い風が、今後数カ月に起こる可能性のある景気循環による減速を補えるほど強力かどうか、ということです。これに対し弊社では、この追い風が多くの場合十分な力強さを持っていると考えています。この点は、工業、半導体セクターに属する複数の大企業が最近、業績予想を上方修正したことにも示されているとおりです。とはいえ、当然のことながら、リスクは存在します。その1つが金利リスクです。金利をめぐる不透明感は大きく、金利上昇が予想より長引いた場合には、レバレッジの大きい不動産部門など、一部のセクターで懸念が生じる恐れがあります。
低成長が継続し、ウクライナ戦争や米地銀のレジリエンスをめぐる不確実性も依然として残っているものの、第1四半期決算が予想を上回る内容だったことは間違いなく、深刻な景気後退入りは回避されたとみていいでしょう。センチメントが全般に楽観的でありながら高揚感がないのも、こうした背景があります。それでも今後数カ月にわたって株式投資家の関心の的になるセクターおよびサブセクターは複数存在しています。サービスセクターでは企業活動が高水準にあることが示されています。また消費財、とりわけ贅沢品に関してはこのところ業績が極めて好調で、向こう数カ月の成長見通しは明るいでしょう。