欧州中央銀行理事会
ECBは10月に利下げペースを加速する見通し
最近の米雇用統計が予想外に上振れるなど、米国の経済指標が強弱まちまちとなる一方、ユーロ圏の統計データは軟調傾向が続いています。
要点
- 欧州中央銀行(ECB)は10月17日の会合でさらに25bpの利下げを実施し、預金ファシリティ金利を3.25%に引き下げると予想します。これにより2会合連続での利下げとなり、緩和ペースが加速することになります。
- 9月のECB政策理事会以降、ユーロ圏の成長が悪化を続ける中、インフレ圧力も依然として緩和傾向にあり、ECB理事会メンバーの発言によって10月利下げへの期待が高まっています。
- ECBはさらなる利下げの判断はデータ次第であると強調するものと見られますが、12月に追加利下げが行われる可能性は高いと考えます。
- 一連の利下げにより、各国国債市場で見られるイールドカーブのスティープ化傾向が強まるものと思われます。
ECB理事会(10月17日)の見通し
最近の米雇用統計が予想外に上振れるなど、米国の経済指標が強弱まちまちとなる一方、ユーロ圏の統計データは軟調傾向が続いています。ユーロ圏の調査統計は先月さらに悪化を見せ、労働市場の指標もユーロ圏の失業率が過去最低水準である現在の6.4%から上昇する可能性を示唆しています。特にドイツは2年連続で景気後退となる瀬戸際に立たされています。一方、同地域における賃金の伸びは鈍化しており、ユーロ圏の総合CPI上昇率は直近で前年比2.2%とECBの目標付近まで戻ってきています。最新のコアCPI上昇率もまた、この広範なディスインフレのシナリオを裏付けています。このため、当然ながら最近のECB当局者による発言は、インフレの低下を認め、10月利下げの可能性を示唆するものとなりました。このガイダンスを受けて、市場は10月利下げの可能性をほぼ完全に織り込んでいます。ECBはデータ次第の姿勢ですが、12月も利下げが続く可能性は非常に高いと思われます。
ユーロ圏の成長率がトレンドを下回り、インフレは目標水準に達していることから、現状よりもかなり緩和的な金融政策が求められ、利下げペースの加速は基本的に正当化されると考えます。最近の中国の政策支援がドイツなど貿易の影響を受けやすい市場に恩恵を与えると期待する向きもありますが、それがユーロ圏の内需の弱さを補うのに十分かどうかは疑問です。11月の米大統領選挙後に、米中間だけでなくEUとの間でも貿易紛争が政策課題として再浮上し、経済成長にさらなる下振れリスクをもたらす恐れもあります。
現在、ECBの預金ファシリティ金利が2025年春までに2.50%前後に低下することは織り込み済みです。中東での緊張激化により高騰した原油価格がさらに上昇した場合、インフレ面で状況が多少複雑になる可能性はあります。しかし、こうしたリスクに対してポートフォリオをバランスさせるため、弊社はある程度のインフレ・プロテクションを保有し続けます。さらに、弊社はイールドカーブのスティープ化取引を引き続き選好しますが、最近の利回り動向を受け、デュレーションや債券全般にも目を向けています。