欧州中央銀行理事会

ECBは3月の会合でも25bp利下げの見通し、上半期中の複数回の追加利下げも依然視野に

欧州中央銀行(ECB)は36日の会合で25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施し、預金ファシリティ金利を2.50%に引き下げると予想します。

要点

•  欧州中央銀行(ECB)は3月5-6日の会合で25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施し、預金ファシリティ金利を2.50%に引き下げると予想します。

  ユーロ圏の成長は、域内最大のドイツ経済が回復の兆しを見せてはいるものの、依然として精彩を欠いたままです。

  貿易と安全保障政策に関する米欧関係の緊張の高まりは、構造的な成長の課題とともに、ユーロ圏におけるより持続的な経済回復への期待を阻害する主な要因となっています。

  ドイツ総選挙を受け、キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDUCSU)とドイツ社会民主党(SPD)の2党が大連立する可能性がある一方、他の諸政党は財政改革に関する憲法上の阻止少数派となる見込みで、今後より拡張的な財政スタンスが取られるかは予断を許しません。しかし、国およびEUレベルで防衛支出がさらに増加するリスクは高まっています。この政策見通しは、今年のユーロ圏の成長にとって目先的に若干のプラスですが、足元のECBによる利下げ期待を覆すほどではありません。

  短期金利市場は、ECB6月の会合まで連続で利下げを行い、預金ファシリティ金利が2%になることを織り込み、年末までに2%を切るリスクまでも見ています。短期的には、地域の経済活動が未だ直面するリスクを踏まえると、このプライシングにおおむね同意します。

  ユーロ圏の金利市場では、ドイツにおけるイールドカーブのスティープ化取引を通じて足元の市場環境を活かしたいと考えます。

ECB理事会(3月5-6日)の見通し

市場コンセンサスでは、2025年はユーロ圏経済にとって引き続き低調な年となり、トレンド成長率以下となった2024年の0.7%をわずかに上回る成長が予想されていました。最近の米欧間における緊張の高まりは、2025年のユーロ圏の成長見通しをさらに不透明にしています。米国の関税の脅威に加え、欧州はウクライナに関する米国とロシアの交渉から外され、さらにトランプ政権からは欧州による防衛支出の負担増を求める圧力が強まっています。これに対し欧州の指導者たちは、ユーロ圏の中核国が需要と供給の両面からの経済的制約によって動きが取れない中でしたが、防衛支出を増やすための財政ルールの緩和策について模索を行いました。

ドイツ総選挙の結果は、将来的にドイツの財政政策スタンスがより積極化することへの期待を高めました。防衛支出のための予算外特別基金、債務ブレーキ改革、防衛支出を賄うEU共同債務発行などのすべてが検討されています。しかし、こうした改革の推進には、次のドイツ議会で3分の2以上の多数確保が必要となりますが、政治的に極左と極右の両方にまたがる阻止少数派の存在を踏まえると、多数確保は困難と見られます。とはいえ、次期ドイツ首相候補は防衛予算の増額に向けた交渉に明らかに意欲的であり、今後より拡張的な財政政策スタンスが取られる可能性が高まりつつあります。

一方、困難な政治的、政策的背景にもかかわらず、年明け以降のユーロ圏のマクロデータおよび投資家心理は非常に良好に推移しています。経済活動データは、金融環境の緩和を背景に、比較するベースが低いとはいえ総じて予想を上回っています。最近の調査データは、同地域の経済活動が安定してきたことを示唆しています。2月のユーロ圏の総合PMIは前月から変化ありませんでした。製造業の改善は予想以上でしたが、引き続き拡大領域にあるサービス業が鈍化したことで相殺されました。なお、ユーロ建て投資適格クレジットと欧州株は、同地域の金融環境の緩和や、米国のクレジットと株式のバリュエーションに織り込まれていた米国の高い成長期待に投資家が疑問を持ち始めたことなどを背景に、米国の同じ資産クラスをアウトパフォームしました。

そのような中、ECB理事会メンバーのイザベル・シュナーベル氏が、今後のECBの政策措置について会合ごとのアプローチを支持するというタカ派的な発言をここ数週間で何度か行っている点が注目されます。とはいえ、同地域が直面する不確実性を考えると、これはECB理事会の中でも少数意見と思われます。一方、インフレ傾向の改善、すなわち賃金の伸びの鈍化(ユーロ圏の妥結賃金の前年同期比の伸びは第3四半期の5.4%から第4四半期は4.1%に減速)および労働市場の軟化によって、ECBが今後数か月以内に預金ファシリティ金利を2%以下に引き下げる可能性は依然として残ります。

投資戦略の観点からは、欧州における足元のマクロおよび政策の環境は、弊社がポートフォリオで取り組んでいる、ドイツにおけるイールドカーブのスティープ化取引に有利に働きます。


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