欧州中央銀行理事会
ECBにとって忍耐は美徳
3月7日のECB理事会に先立ち、アリアンツGIの債券部門グローバルCIOを務めるフォンク・ディクスミエがコメントします
要点
- 欧州中央銀行(ECB)は、3月7日の政策理事会で利下げは行わないと予想する
- インフレ率の低下が依然として脆弱であることを考慮すると、ECBにとって早すぎる利下げのリスクは、遅すぎた場合のリスクよりも大きい
- 投資家はECBの経済見通しと、初回利下げ(弊社は6月を予想)の兆候に注目している
ECB理事会(3月7日)の見通し
欧州中央銀行(ECB)にとって、早すぎる利下げのリスクは、遅すぎた場合のリスクを上回ると弊社は考えます。1月25日のECB理事会1の議事要旨は、同行の警戒感を反映しており、そのアプローチがその後に変化した可能性は低いと思われます。実際、現在の物価や賃金の推移は、金融政策が直ちには変更されないことを示唆しています。
ドイツのインフレは2月に入り低下し、消費者物価指数は+2.5%2(1月は+2.9%)となりました。しかし、コアインフレは+3.4%で安定しており、ECBの物価安定目標からはまだ遠い状況です。同様の傾向は、ユーロ圏全体でも見られます。2月のインフレ総合指数(HICP:消費者物価指数3)は前年同月比+2.6%となり、1月の+2.8%から減速しました。一方、コア部分は1月の+3.3%に対し、2月は+3.1%でした。主な圧力要因となったサービスのインフレは高止まりしています(1月の4.0%に対し、2月は+3.9%)。サービスのインフレは、今後数カ月にわたり注目すべき重要な要素です。
賃金動向も不透明な状況が続いています。ECBが金融政策の転換を検討するためには、ユーロ圏における交渉賃金の緩やかな減速(2023年第3四半期が前年同期比+4.7%だったのに対し、第4四半期は+4.5%)が続く必要があると弊社は考えます。
弊社は、年初の賃金動向に関してさらなる情報が得られれば(2024年第1四半期の賃金データは2024年5月に公表予定)、ECBは6月にも初回の利下げを行う可能性があると考えます。
ユーロ圏の経済活動の停滞を背景に、ECBへの利下げ圧力は強まると思われます。特にドイツでは、2023年に0.3%のマイナス成長に陥った後、2024年の成長率見通しを+0.2%と大幅に下方修正せざるを得ませんでした。特に、高い実質金利を維持すれば金融情勢の逼迫につながるため、時間が経つにつれてECBにおける金利の現状維持論は下火になると弊社は考えます。
市場は、2024年の利下げが、6月の初回を皮切りに年内3~4回のみ実施されると見込んでいます。弊社にはこの予測は妥当なものと思われます。年初の急激な金利上昇を受けて、投資家は2つのポイントに注目しています。第1に、ECBの新しいマクロ経済見通しです。そこでインフレ見通しが若干引き下げられる可能性があります。そして第2に、初回の利下げタイミングに関する検討の兆候です。
1. Published on 22 February
2. Destatis, 29 February 2024
3. Eurostat, 1 March 2024