欧州中央銀行理事会

ECBは6月の会合で25bp利下げの見通し

ECBは6月の会合で25bp利下げの見通し、貿易摩擦により目先の緩和バイアスは継続

要点
  • 欧州中央銀行(ECB)は65日の会合において今サイクルで8回目となる25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施し、預金ファシリティ金利を2.0%に引き下げると予想します。
  • 4月の政策会合以降、世界的な貿易戦争の懸念は減少したものの、貿易摩擦は続いています。一方、ユーロ圏の統計データは、依然として同地域の経済活動の停滞とインフレ圧力の緩和を示唆しています。6月のECB理事会声明文は、引き続き成長下振れリスクを意識したものになると考えます。
  • ECBの緩和サイクルは終わりを迎えつつあると思われますが、成長リスクを考慮すると、ごく短期的には短期金利市場が1.5%~2.0%の範囲で政策金利のターミナルレート(最終到達点)を織り込み続けると予想します。
  • このようなマクロ政策環境において、弊社はイールドカーブのスティープ化取引を選好します。為替では、米ドルが構造的な逆風に直面していると考えており、世界(および欧州)の成長見通しの下振れリスクにもかかわらず、ポートフォリオに米ドルのショート(売り)ポジションを組み込む方向にあります。現在は、ユーロ買い/米ドル売りのポジションを取っています。
ECB理事会(6月5日)の見通し

ユーロ圏のGDP成長率の統計によると、4月に見込まれる米国の関税発表を控え第1四半期に輸出需要が堅調だったため、2024年第4四半期と同様に、同地域の経済は第1四半期に前期比0.3%[1](年率換算+1.2%)の伸びを示しました。2025年のユーロ圏の実質GDP成長率に関する現在の市場コンセンサス0.9%はトレンド成長率を下回っており、2024年の成長率とほぼ同じ水準です。緩和的な金融・財政政策にもかかわらず、同地域の成長見通しがこのように小幅である要因として、米国の関税政策がもたらす不確実性が挙げられます。

米国新政権はEU製品に対する最初の分野別関税を2月に発表し、4月にはEU製品に対する相互関税を20%に設定するとしました。その後、米国は相互関税の90日間の適用保留を発表し、7月上旬まで10%のベース関税に留めました。EUと米国間の貿易交渉は継続中です。しかし、欧州委員会は、米国が現在の政策スタンスを堅持したり、貿易摩擦をエスカレートさせようとしたりする(トランプ大統領は最近、EU製品に6月から50%の関税をかける提案を行うもその後撤回)場合には、独自の関税で対応する用意があることを示唆しています。このような不確実な貿易政策の背景は、今後数カ月間のユーロ圏の主要な成長下振れリスクになると予想されます。

インフレに関して、ユーロ圏の消費者物価指数(CPI)は、ヘッドラインが前年比2.2%、コアが前年比2.7%と、ECBの目標値に近い水準で推移しています。賃金圧力は引き続き低下しており、同地域の妥結賃金は昨年のピークである前年同期比5.4%の上昇に対し、第1四半期はわずか2.4%の上昇でした。このデータは、同地域ですでに明らかになっているインフレ見通しの改善を裏付けます。中国製品のユーロ圏への流入に伴うディスインフレ傾向、エネルギー価格の低下、そしてユーロ高の影響もその改善に寄与しています。

4月における前回の利下げ後、一部のECBメンバーは、今後より慎重な政策アプローチが取られることを示唆してきました。このため、6月のECB会合における市場の注目は、スタッフによる最新のマクロ経済予測に今後の政策に関する材料が含まれるかという点に集まるでしょう。短期的に、特に米・EU間の貿易戦争が激化した場合には、預金ファシリティ金利がさらに低下する可能性が高まります。しかし、ECBの緩和サイクルは終わりを迎えつつある可能性があります。下半期には、市場の焦点が関税問題からドイツの財政パッケージの実施と、それが2025年以降の欧州の成長見通しに及ぼす影響にシフトし始めるかもしれません。

戦略的な観点からは、足元のマクロ政策環境におけるイールドカーブのスティープ化取引に確信を持ち続けつつ、コアとなる視点を軸に戦術的に取引を行う方向です。為替に関しては、ポートフォリオにおける米ドルのショート(売り)ポジションを選好します。


1.出所: ブルームバーグ(2025年5月2日現在)

 


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