欧州中央銀行理事会
6月に予想される欧州中央銀行(ECB)の利下げ、その後の展開は?
欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏のインフレ低下傾向を追い風に、6月の政策理事会で25bpの利下げを承認すると見られます。
要点
- 欧州中央銀行が6月6日の政策理事会で25bpの利下げを行うとの予想が広がっている
- 一旦利下げサイクルが始まれば、利下げペースにまつわる手がかりに投資家の強い関心が集まるだろう
- 足元の利回りへの圧力は、イールドカーブ・スティープニング戦略を選好することでデュレーションを追加する好機となる
ECB理事会(6月6日)の見通し
欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏のインフレ低下傾向を追い風に、6月の政策理事会で25bpの利下げを承認すると見られます。クリスティーヌ・ラガルド総裁やタカ派色の強い複数の政策理事会メンバーが利下げの可能性を強く示唆してきたことから、市場は利下げを十分に織り込んでいます。
投資家の注目は利下げ後の展開に集まるでしょう。金利が長く据え置かれた末の利下げサイクル開始のため、今後の道筋に関していくつか疑問が生じるでしょう。「ターミナルレート(利下げの最終到達点)の目標水準は?」「ECBはどれくらい速く目標に到達するのか?」こうした疑問への答えの手がかりや、発表予定のマクロ経済見通しに、投資家の強い関心が集まるでしょう。
この初回の利下げはコンセンサスが得られていますが、今後の利下げペースに関しては、すでに理事会内で活発な議論が行われています。インフレ期待はECBの目標に近い水準(5年先スタート5年物インフレスワップは2.3%1)にとどまっており、ECBの使命達成能力に対する投資家の信頼感を示す良い指標となっています。理事会の焦点は、ECBの物価安定目標に向けたインフレの正確な軌道と、インフレがその水準にとどまるという確信の度合いに絞られてくるでしょう。
ユーロ圏の消費者物価指数は、2022年10月に前年比+10.6%のピークをつけた後、2024年5月は+2.6%2となりました。コアインフレも同様の低下傾向を示し、2023年3月の+5.7%をピークに、2024年5月は+2.9%まで低下しました。足元でのインフレの低下は顕著ですが、それでもECBは賃金上昇(ユーロ圏の第1四半期の交渉賃金上昇率は+4.7%3)に伴う潜在的なセカンド・ラウンド・エフェクト(2次的効果)や、紅海での危機に影響を受けている海上貨物などその他のコストの動向に、今後も警戒を続ける必要があります。
今後のインフレ統計には変動が見込まれるため、ECBが段階的な利下げアプローチを堅持する旨を警告する可能性は高いと考えられます。
このメッセージが市場に影響を与えることはないはずです。年明けから市場は利下げ幅の予想を大幅に下方修正しました。2023年末時点で、投資家は2024年を通じ164bpの利下げが行われると予想していましたが、5月30日現在ではそれが62bp4になりました。弊社は、予想がさらに大幅修正されることはないと考えます。2024年末までに25bpの利下げが2回という弊社の予想はかなり妥当なものと考えますが、25bpの利下げを3回行う可能性も否定しきれません。
投資家にとって、イールドカーブ全体で見られる足元の利回りへの圧力は、イールドカーブ・スティープニング戦略を選好することでデュレーションを追加する好機となります。
1. Bloomberg, 2024年5月30日
2. ECB, 2024年5月23日
3. Bloomberg, 2024年5月30日
4. Bloomberg, 2024年5月30日