欧州中央銀行理事会
政策金利、長期の停滞局面か
12月14日のECB理事会に先立ち、アリアンツGIの債券部門グローバルCIOを務めるフォンク・ディクスミエがコメントします
要点
- 最近のインフレ鈍化傾向を踏まえると、欧州中央銀行(ECB)は今回の理事会で政策金利を据え置くものと考えられる
- ECBは、今後の展開に慎重な姿勢を崩さず、警戒すべき点(賃金の伸びや、エネルギー価格に関連したベース効果など)を強調する可能性が高い
- 早ければ3月にも利下げがあるという投資家の期待は時期尚早と思われる。このため、足元で大幅に低下した長期金利の動向は引き続き不安定となる。最近の債券相場反騰の後には、金利の下げ止まり、あるいは調整局面さえ見込まれる
ECB理事会(12月14日)の見通し
フランス銀行のフランソワ・ビルロワドガロー総裁は最近、欧州中央銀行(ECB)の理事会は「退屈なもの」になるだろうとして、政策金利が長期の停滞局面に入るとの見方をほのめかしました。しかし、投資家は今回の会合を注意深く見守る必要があると弊社は考えます。
ユーロ圏における最新のインフレ統計と、それに続くECB理事会メンバーの発言は、市場にとって実質的な転機となりました。投資家は追加利上げの見通しを取り下げ、代わりに積極的な利下げを予想しているようです。現在の市場価格は、来年3月に利下げが開始され、2024年を通じて150bpの引き下げがあることを織り込んでいます1。
インフレの鈍化は投資家を驚かせました。11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)の総合指数は2.4%で、10月の2.9%から低下し、2021年7月以来の低水準となりました2。コア指数は10月の4.3%に対して3.6%となり、財は3.5%から2.9%に、サービスは4.6%から4.0%に、ともに低下しています3。その上、この低下傾向はユーロ圏全体に広く見られ、インフレ圧力の減退が本物であることを証明しています。
このような背景もあり、成長とインフレに対するECBの見通しは下方修正される可能性が高く、予想の更新が待たれます。
とはいえ、最近のコメントで述べてきているように、ECBは市場の盛り上がりにかかわらず慎重な姿勢を崩さず、次のような警戒すべき点を強調するものと弊社は考えます。
- ECB理事会メンバーのイザベル・シュナーベル氏が最近述べているように、生産性の伸びがマイナスとなる中で、賃金上昇率は依然として堅調(第3四半期は4.69%4)であり、それが基調インフレ率の加速に引き続き寄与するものと考えられること
- さらに、主にエネルギー価格に関連するベース効果の剥落により、2024年前半にインフレ上昇の可能性が高まると見られること
ECBは、金融政策の方向性は統計データへの依存度が依然として高く、そして利下げの検討には基調インフレ率の軌道に関してより確度の高い見通しが求められることを、これまで以上に強調する必要があると弊社は考えます。
[1] Bloomberg, 8 December 2023
[2] Eurostat, 30 November 2023
[3] Eurostat, 30 November 2023
[4] ECB negotiated wage indicator, 21 November 2023 https://data.ecb.europa.eu/data/data-categories/prices-macroeconomic-and-sectoral-statistics/other-prices-and-costs/labour-costs/negotiated-wages