Embracing Disruption

クリーンエネルギー貯蔵容量の増強を加速する

地政学的な混乱と世界を取り巻く異常気象現象の激化により、クリーンエネルギーへの移行をさらに強化する必要性が、これまで以上に浮き彫りになっています。大規模かつ柔軟性のあるエネルギー貯蔵システムが、拡大する再生可能エネルギーの容量を統合するために必要となる基幹インフラを構築しつつあります。この移行は、化石燃料への依存度の軽減に貢献するとともに、エネルギーの移行を促進します。

要点
  • クリーンエネルギー貯蔵容量の構築は、エネルギーシステムの脱炭素化に不可欠であり、柔軟性を提供すると共に、変動の激しい化石燃料価格への依存の軽減を促進します。
  • クリーンエネルギーの貯蔵は、送電網の安定性を確保し、エネルギー市場への再生エネルギーの統合を促進/加速します。
  • 世界の畜電池エネルギー貯蔵市場は、2020年代の終わりまでに、2桁台の成長率で伸長することが見込まれています。

エネルギー貯蔵は、エネルギー需給バランスの安定化にどのように役立つか

国際エネルギー機関(IEA)の最近の報告によれば、再生可能エネルギーは、2025年までに支配的な電力供給源となり、今から2020年代半ばまでの間に新たに増設される発電容量の90%を占める見込みです。1 再生可能エネルギーの容量と出力量が記録的な成長を遂げたことによって、クリーンエネルギーの生産量を、増加する世界の需要に合わせて増やすことも可能になります。しかし、太陽光、風力や水力などといった天然エネルギー源には、変動(断続性)があるため、その効率性が制限される可能性があります。クリーンエネルギー貯蔵システムは、余ったエネルギーを貯蔵しておき、必要になったときに配電することができるため、送電網の安定性を確保し、(環境にやさしい)エネルギー供給の信頼性を高めることができます。

このように、エネルギー貯蔵容量をさらに向上させ、エネルギー需給の均衡を保つことが、クリーンエネルギー生産のさらなる成長を促すことにつながります。

世界の累積エネルギー貯蔵能力は、2040年までに2,850GWhに達する見込み
世界の累積エネルギー貯蔵能力は、2040年までに2,850GWhに達する見込み

出所:Energy Storage Outlook 2019, BNEF 2019 July.

様々なエネルギー貯蔵システム

エネルギー貯蔵と、需要に応じた供給の確保は、産業、輸送および家庭の電化に不可欠です。しかし、その実現には、元々のエネルギー源を貯蔵するために変換し、さらに電気エネルギーに再変換することが必要です。これを実現するための様々な仕組みについて、以下にご説明します。

様々なエネルギー貯蔵システム

これらのグループの一部は、大量の電気を貯蔵するために最も広く用いられています。

揚水発電

需要が横ばいである時に、ポンプで水を下部貯水池から上部貯水池に汲み上げ、需要が急増すると、水を放出してタービンを運転し、送電網に配電します。

揚水発電
グリッドスケール蓄電池

電気が潤沢で安価な時に送電網/発電所からのエネルギーを蓄積し、後で必要な時に電気を供給するためにエネルギーを放出する電気化学的装置(リチウムイオン、鉛酸、レドックスフローなど)。

グリッドスケール蓄電池 - infographic
グリッドスケール蓄電池 - infographic
太陽熱システム

ソーラーフィールド/太陽光発電システムによってエネルギーを収集し、需要が高く、太陽光が少ない時に電気を放出します。

太陽熱システム

水素

電気から水素への転換、その貯蔵および電気への再変換。今のところ、その効率性は他の形式の貯蔵システムに及びませんが、蓄電池、水力、太陽熱技術を大幅に上回る貯蔵能力を有するため、水素貯蔵ソリューションへの関心、そして、特に水素のキャリアとしてのアンモニアへの関心が高まっています。

水素
水素

エネルギー貯蔵システムの課題に取り組む

エネルギー貯蔵システム/テクノロジーには、クリーンエネルギーへの移行につながる、疑う余地のないメリットがあるものの、クリーンエネルギーの貯蔵を、より持続可能なエネルギー形態への移行の主要な原動力の一つとして確立するためには、まだ克服しなければならない高いハードルが残っています。

克服すべきハードル
克服すべきハードル
エネルギー貯蔵、クリーン電力の増強における不可欠な要素

世界的なエネルギー生産と産業の脱炭素化に向けた活動が圧倒的にエネルギー生産に集中されている一方、エネルギー貯蔵は、この移行プロセスにおける極めて重要な要素としての地位を徐々に確立しつつあります。

その結果、世界各国でますます多くの政府や企業が、行動の必要性を認識し、エネルギー貯蔵システムの容量拡大を促進するとともに、代替的技術による貯蔵ソリューションの研究開発の強化や、そのための資金を提供する施策を実行しています。

米国

2023年1月1日、インフレ抑制法(Inflation Reduction Act: IRA)の下での再生可能エネルギー導入投資税額控除(Investment Tax Credit: ITC)の対象が、5kWh以上の単独のエネルギー貯蔵プロジェクトに拡大されました。2 こうした小規模なプロジェクトをITCの対象とすることにより、デベロッパーは、貯蔵ソリューションを太陽光発電システムと直接つなげる必要性から開放されます。これは、さらに、新たな貯蔵能力にかかる開発時間およびコストを、大幅に削減することにもつながります。

この、新たに得られた柔軟性および投資税額控除の単独エネルギー貯蔵システムへの拡大は、既に着実に成長しつつある米国のエネルギー貯蔵市場へのさらなる追い風となる可能性があります。

米国

出所:American Clean Power CLEAN POWER ANNUAL MARKET REPORT 2022, May 2023

 

地域別の焦点

ニューヨーク州

ニューヨーク州における、2025年までに1,500MW、2030年までに3,000MWというエネルギー貯蔵の目標は、総額約30億ドルの利益をもたらすのみならず、2030年までに200万メートルトン超の二酸化炭素削減を回避し、約30,000人分の雇用の創出につながる可能性があります。3

カリフォルニアおよびテキサス

2022年において、「黄金の州」(カリフォルニア州)と「ひとつ星の州」(テキサス州)が全米における貯蔵容量を含むクリーンエネルギーの増強において、上位2州の座を占めました。4

2022年のクリーン発電能力の増強で、テキサスとカリフォルニアが先頭に立つ

2022年のクリーン発電能力の増強で、テキサスとカリフォルニアが先頭に立つ

出所:American Clean Power CLEAN POWER ANNUAL MARKET REPORT 2022, May 2023

EU

2023年3月に、欧州委員会はエネルギー貯蔵に関する提言を発表しました。この提言は、エネルギー貯蔵は「エネルギーシステムの脱炭素化において重要な役割を果たし、エネルギーシステムの統合と供給の保証に貢献する」ことができると強調するとともに、「エネルギーシステムの脱炭素化には、あらゆる形態の貯蔵容量への多額の投資が必要となる」と主張しています。6 これに関し、EU加盟国は、新規エネルギー貯蔵施設に関する投資決定を促進するために、詳細なデータへのアクセスを可能にすることを勧告されています。

EUのエネルギー貯蔵容量構築に向けた動きは、同委員会が電力システムの柔軟性の必要性が2050年までに総電力需要の30%にまで増加する(2021年との比較で+11%)という評価を行った後の時宜を得たタイミングで行われました。

中南米

最新の分析によれば、2022年において、中南米の太陽光エネルギー貯蔵市場規模は18.4億米ドルに上るということです。今後5年間において、同市場は年率7.20%で成長すると見込まれています。5

実現要因への投資は、クリーンエネルギー貯蔵容量の規模拡大に貢献する

再生可能なエネルギー源から生産されるエネルギーは、世界中で徐々に化石燃料による電力を置き換え、新規クリーンエネルギーの増設は過去最高レベルに達しています。こうした中で、追加貯蔵能力構築を強化および加速することが、信頼性の高いクリーンエネルギーを安定的に供給するために、ますます重要となっています。

世界のエネルギー貯蔵容量の成長予測は、年間80GWから88GWの幅で新規増設が進むとされています。7 貯蔵容量は実際に増加しており、予測上も増加が見込まれるものの、信頼性と稼働可能時間を向上させ、太陽光、風力および水素エネルギーの断続性を克服するためには、さらなる容量の増加が必要です。このため、クリーンエネルギー生産とエネルギー貯蔵の比率のバランスを取り、高まり続けるエネルギー貯蔵ソリューションへの需要に対応するために、貯水バリューチェーン全体における追加投資が必要となります。

これらの投資の対象は、極めて有望な分野である可能性が高いでしょう。最新の分析によれば、世界の蓄電池エネルギー貯蔵市場は、2022年の108.8億米ドルから、2029年までに312.0億米ドルへと、予測対象期間を通して16.3%という2桁の成長率で伸長することが見込まれています。8

この驚異的な成長を考慮すれば、財務フローを専門の企業に向けることによって、投資家にとって様々な有望な視点が提供される可能性があります。性能向上につながる斬新な素材の研究に潤沢な資金を投じることによって、新たなエネルギー収集技術の開発と市場性を加速できる可能性があります。これは、最終的に、極めて重要な、クリーンエネルギー生産とエネルギー貯蔵の共進化の実質的な形成につながる可能性があります。

エネルギー貯蔵は、今後数年間における極めて大きな事業であり、多数の投資機会をもたらします。一部の使用事例には、様々な形態の技術ソリューションを必要とする個々のニーズに最適な、様々な形式が必要となります。これは、バリューチェーン全体を通した広範な機会およびソリューションに関わるものです。

1 国際エネルギー機関:各国がエネルギー安全保障の強化を目指す中、再生可能エネルギー発電の成長は加速している。2022年12月
2 Congress.gov: Energy Storage Tax Incentive and Deployment Act of 2021. September 2021
3 New York State: Types of Energy Storage
4 American Clean Power Market Report 2022, May 2023
5 Digitaljournal.com: Latin America Solar Energy Storage Market Shows Robust Growth Potential
6 EU Commission recommendation on Energy Storage – Underpinning a decarbonised and secure EU energy system. 14 March 2023
7 Bloomberg NEF: 1H 2023 Energy Storage Market Outlook. March, 2023 and International Energy Agency: Grid-Scale Storage. September 2022
8 Fortunebusinessinsights.com: Global battery energy storage market. March 2022

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