日銀政策決定会合
日銀の政策金利据え置きが予想される一方、次回利上げのカギを握る要因へのコメントが焦点に

要点
- 日本銀行(日銀)は、9月の会合で政策金利を0.5%に据え置く一方、引き締め姿勢は維持する見通しです。
- 植田総裁は、前回7月の会合でややハト派的な姿勢を示しました。それ以降に発表された統計データは、利上げの余地を広げる内容でしたが、日銀に決断を強いるほどではなく、もし動きがあればサプライズとなるでしょう。
- 米国との貿易協定で貿易面の不透明感は解消されますが、経済的影響が現れてくるのはこれからです。また、石破首相の辞任と自民党総裁選は、新たな不透明感を生み出しています。
- 景気が著しく悪化しない限り、来年1月までに1回の利上げが見込まれます。植田総裁の発言が、利上げの時期や、あるいは主要要因の動向に関する総裁自身の考えについて、何らかの手がかりを示すかが注目されます。とはいえ、植田総裁が10月の利上げを示唆する可能性は低いと見られ、今回の発言が前回の政策決定会合と同内容になることも想定されます。
日銀政策決定会合(9/18-19)の見通し
日銀は9月の会合で金利を据え置くと予想され、引き締め姿勢は維持しつつも、現段階での追加利上げは見送る見通しです。足元の統計データは、即座の対応を迫るほどではありません。景気は底堅さを維持し、5四半期連続で拡大しており¹、物価は目標水準か、それを上回る水準で推移しています²。しかし、堅調な名目賃金の伸びにもかかわらず、実質賃金は伸び悩み、6カ月連続で前年比マイナスとなった後、7月にようやくプラスに転じています³。日銀は、実質所得が持続的に回復し、国内経済のモメンタムを下支えするとともに、賃金・物価の循環をより強固なものにするのを確認したい意向と見られます。関税も日銀にとって引き続き焦点となります。米国との貿易協定が不透明感を解消する一方で、経済的影響の全貌は未だ不透明です。初期の兆候として、日本の自動車セクターでは、関税コストの大部分を負担することで、利益の圧迫と賃金上昇の抑制につながる可能性が出現しています。一部の企業では、来年度の賃上げに関する最初の意向表明が12月から始まるため、日銀は12月または1月の会合まで様子を見てから、次の利上げを検討する可能性が高いと思われます。
最近、日銀が年内の利上げを検討するのではないかとの観測が一部報道で伝えられ、今回の記者会見では植田総裁の発言が主要な焦点となります。総裁が意向や時期について何らかの言及を行うのかが注目されます。金利据え置きを後押しするさらなる要因として、自民党総裁選による不透明感の高まりが挙げられます。現時点で結果を見通すことは困難です。また、新首相による早期の解散・総選挙もあり得るため、さらに不透明感が高まるおそれがあります。経済政策が根本的に変わる事態はまず起こり得ないとはいえ、これらの状況が明確になるまで、日銀はあえて静観する公算が大きいと見られます。したがって、植田総裁が10月利上げに向け明確な指針を示す可能性は低いと考えます。
このような環境下、弊社のスタンスは次のとおりです。日本株は、やや建設的な見通しを維持します。世界経済は引き続き堅調に成長し、企業業績は概ね良好です。加えて、モメンタムはここにきて顕著に回復しています。日本国債のアンダーウェイトは継続します。財政スタンスが前任者ほど慎重でない新首相が登場する可能性が高まったことで下振れリスクが増す一方、国債の買い手は、日銀の姿勢がより明確になるまで様子見を続ける見通しです。円相場は、中立的なスタンスをとります。日本円も、自民党総裁選の悪影響を受ける可能性があります。同時に、米国の利下げは既に複数回織り込まれ、日銀は今後数カ月にわたり金利を据え置く可能性が高く、円相場は当面の材料に乏しい状況です。しかし、日本円の大幅な割安感や米ドル離れが進行する可能性を踏まえ、弊社が最終的にロングポジションの再構築を検討する場合もあります。
¹ 内閣府、2025年7月
² e-Stat(政府統計の総合窓口)、2025年9月
³ 厚生労働省、2025年7月