日銀政策決定会合
日銀、3月は金融政策据え置きの見通しも、記者会見でのトーンが焦点に

要点
- 日本銀行(日銀)は、3月の会合で金融政策を据え置く見通しです。
- 経済データは引き続き日銀の予測と一致しており、日銀は政策スタンスを維持しながら、1月に実施した利上げの影響を見極めることが可能です。春闘の第1次集計結果は力強いものでした。
- 日本国債の利回りは急激に上昇し、円相場はここ数週間緩やかな円高となりました。これまでのところ植田総裁および日銀がこうした変化に強く反応していないことは、政策正常化への道筋に変わりがないことを示唆しています。
- 世界情勢がダイナミックに変化する中で、金融政策、経済情勢、地政学的リスクに対して植田総裁がどのような評価を下しているかが会合の重要な焦点となります。
日銀政策決定会合(3/18-19)の見通し
インフレや経済成長は日銀の予測通りに推移しており、日銀が3月の会合で金利を0.5%のまま据え置くとの弊社の見通しを裏付けています。市場はこの結果をかなり織り込んでおり、焦点は記者会見での植田総裁の発言に移ると見られます。注目すべき主なトピックは次のとおりです。
第1に、ここ数週間、円高を伴って国債利回りが急激に上昇しています。緩やかなものであれば、この方向への動きは日銀の政策正常化に沿うものと言えますが、急激な変化はあまり望ましくありません。国債利回りが2008年以来の高水準に達しているにもかかわらず、最近の国会における発言の中で、植田総裁は利回り上昇にほとんど懸念を示しませんでした。会合後の記者会見でもこのスタンスが変わらなければ、植田総裁は足元のトレンドが続くことを容認していると市場が解釈する可能性があります。
第2に、春闘の結果が発表される3月は、賃金の伸びが主役となります。データはまだ出揃っておらず、この段階では大企業に偏っていますが、第1次の集計値が先週金曜日に発表されました。平均賃金上昇率は5.46%と大幅に上昇し、昨年の第1次集計の5.28%を上回り、30年以上ぶりの高水準となりました。この力強い結果も、日銀の経済シナリオの支えとなるはずです。記者会見では、賃金上昇が経済全体にどの程度波及しているかを把握する上で、植田総裁が中小企業の賃金動向をどの程度重視しているかが鍵となります。日銀は、賃金上昇に伴い実質賃金が上昇し始めれば、足元の個人消費の弱さが改善に向かうと期待しており、この点は特に重要となります。
第3に、関税や世界経済、特に米国経済とその経済政策に対して何らかの判断が示されるかが注目されます。特に関心が高いのは、日銀の金融政策決定にこうした要因が与える影響に植田総裁が言及するかどうかという点です。
弊社は、日本株および円相場に対するやや前向きな見通しを維持する一方、日本国債には中立的なスタンスをとります。日本株は長期にわたり横ばい相場が続いていますが、継続的な利益の伸びと緩和的な金融政策を踏まえれば、引き続きバリューは良好と考えます。円相場に関しては、利回り格差の縮小、米国例外主義の緩和の可能性、セーフヘイブン(安全な逃避先)としての日本円の魅力の高まりが、弊社の建設的な見解を支えています。一方、最近の利回り上昇を受けて、日本国債の見通しはよりバランスがとれたものとなっています。