日銀政策決定会合
0.75%への利上げが見込まれる中、市場の反応を左右する日銀の発言
要点
- 日本銀行(日銀)は12月の会合で政策金利を0.75%に引き上げる見込みです。
- 現時点で、この利上げは市場のコンセンサスとなっています。市場は利上げを90%超の確率で織り込んでいます。このため、市場の反応は、主として日銀のフォワードガイダンスや見通しの内容次第となります。
- 今次利上げ局面におけるターミナルレート(最終到達点)の水準や、今後の利上げペースについて、市場参加者が手がかりを探る展開となります。
- 日本株は建設的な姿勢を維持する一方、日本国債は引き続きアンダーウェイトとします。
日銀政策決定会合(12/18-19)の見通し
日銀は微妙なかじ取りを迫られています。実質所得の伸びがついにプラスに転じると日銀が期待し、高市首相が生活費高騰の抑制を優先課題とする中で、円安が再び急ピッチで進み、コストプッシュ・インフレのリスクが再燃しています。同時に、長期債利回りは数十年ぶりの高水準に上昇しており、その上昇ペースが無秩序な動きにつながる恐れがあります。しかし、プラスの経済成長、支援的な財政、出足好調な賃金交渉、そして目標に収れんしつつあるインフレなど、経済はまずまずの堅調さを保っています。このような状況下、日銀は抵抗感なく政策金利を25bp引き上げ0.75%にすると見られます。
利上げはほぼ織り込み済みであることから、日銀によるコミュニケーションのニュアンスと、植田総裁が今後の追加利上げのタイミングをあらかじめ明言することなくタカ派的な印象を与えられるかどうかに、市場の反応は左右されると考えられます。注目すべき3つのポイントは次のとおりです。
第1に、中立金利に関する示唆です。政策金利が中立金利の推計レンジの下限に近づいているとの認識を日銀が示した場合、ターミナルレートに対する市場の期待が低下し、利上げがハト派的と受け止められるリスクがあります。中立金利の上方修正の可能性に関する最近のレポートは、政策調整が当初考えられていたよりも限定的である可能性を示唆するものです。これはまた、日銀が今後の利上げペース加速を示唆する余地を制限する可能性もあります。
第2に、円安に関する発言です。日銀が為替について直接言及することはほとんどありませんが、万一植田総裁が懸念を表明した場合、市場は現在の円相場の水準を一種の防衛ラインと見なす可能性があります。
第3に、長期債利回りの上昇に対する日銀のスタンスです。通常、長期ゾーンの利回りは市場のプライシングに委ねられますが、日銀による懸念の示唆、あるいは量的緩和縮小のスケジュールを変更する議論などは、大幅な価格再調整を引き起こす可能性があります。
日銀がデータ依存を強調し、今回の利上げ効果を見極めてから次の手を明示する道を選ぶ可能性がありますが、市場からは慎重姿勢あるいはハト派的と受け止められるかもしれません。また、過去の政策判断から見て、日銀は円相場の安定よりも、景気の下支えや金利を優先する可能性があります。
このような環境下、弊社のスタンスは次のとおりです。日本株は建設的な姿勢を維持します。なぜなら、金融政策は引き続き支援的で、企業収益は堅調に推移し、世界的な成長環境は良好であり、そして財政刺激策がさらなる投資機会を生む可能性があるためです。急激な円高のリスクも当面は限定的と思われます。円相場は、中立的なスタンスを維持します。日本円は、取引レンジの上限付近にあると見られ、著しく過小評価されており、最近は金利差の変化とは離れた動きを見せています。もっとも、日銀の姿勢がハト派的と受け止められれば、円安が一段と進む可能性が残るほか、1回の利上げだけでは持続的な相場反転を促すには不十分と思われます。また、財務省に介入の覚悟があるかを市場が試す展開も考えられます。こうした相反する要因を踏まえ、中立的なスタンスが妥当と判断します。日本国債は、アンダーウェイトを継続します。利上げ局面はまだ続いており、債券利回りの大幅な上昇にもかかわらず、国内投資家はこれまでのところ買いを手控えています。財政懸念が再燃する可能性もあります。このため、長期債利回りの上昇リスクは依然として高いと判断します。