市場展望インサイト
クレジット投資家視点で見る:AI・データセンター投資
AIの急速な普及を背景に、データセンターの整備・増設がかつてない規模で進んでいます。一方で、AIの収益化が長期的にどの程度進展するかには不透明感が残り、将来的な設備過剰のリスクも存在します。そのため当社は、AI関連のクレジット投資において選別的なアプローチが重要と考えます。
主なポイント
- AIの普及拡大に伴い、データセンターインフラへの大規模な投資が進んでいます。適切な投資スキームや信用力の高い取引先を見極めることで、クレジット投資家にとって魅力的な投資機会が生まれています。
- 当社は、長期契約に基づくデータセンタープロジェクトや、事業基盤が多様化された投資適格級の運営事業者への投資を選好しています。こうした案件はキャッシュフローの予見性が高く、投資家保護の観点でも優れているためです。
- AIの長期的な収益化の行方や将来の設備需要にはなお不確実性があります。しかし、高品質なデータセンター設備に対する足元の需要は依然として強いとみています。
テクノロジー企業は現在、AI開発を支えるデータセンターや半導体、関連インフラへの投資を積極的に拡大しています。投資家側にもこうした成長分野への資金供給意欲が強く、企業は事業拡大を支えるために大規模な資金調達を進めています。
こうした状況の中、とりわけ注目を集めているのがデータセンターの大規模な増設です。AI関連の大手テクノロジー企業、いわゆるハイパースケーラーの設備投資額は、今年の推計8,330億米ドルから2027年には1兆3,000億米ドルへと増加すると見込まれており¹、パブリック市場・プライベート市場の双方で大規模な資金需要を生み出しています。
それでは、クレジット投資家はこの急成長セクターにどのように向き合うべきなのでしょうか。
急成長市場に求められる慎重かつ積極的な投資判断
投資家にとって重要なのは、「優れた技術」と「優れた投資先」を区別することです。革新的な技術は大きな投資機会を生み出す可能性がありますが、その初期段階で最も注目を集める企業が必ずしも最終的な勝者になるとは限りません。実際、今回のAIブームでは投資機会の裾野が広がっており、電力設備や通信・接続関連などの分野に携わる企業も需要拡大の恩恵を受けています。AI成長の恩恵を享受しているのは半導体メーカーだけではありません。
もっとも、投資対象の選択肢が増えるほど、適切な投資先を見極める重要性も高まります。そのため当社は、強固なバランスシート、持続可能なキャッシュフロー、そして景気変動への耐性を備えた事業モデルを持つ企業に注目しています。AIが今後数十年にわたり経済構造を変革していく可能性はあるものの、投資で成果を上げるためには規律ある運用姿勢と綿密な分析、そして過去の経験から学ぶ姿勢が不可欠だと考えます。
当社はAI関連インフラに対する短期的な需要については前向きにみています。しかし、AIの長期的な収益化や、現在の投資水準が将来も維持されるかについては不透明です。そのため当社は、長期的なAI成長シナリオに直接賭けるのではなく、投資家保護の条項等が充実し、キャッシュフローの見通しが立てやすい資産を重視しています。
当社が選好する投資対象は以下の通りです。
- 主要都市圏に戦略的な資産を保有する、大規模で事業基盤が多様化された投資適格級のデータセンター運営事業者
- 大手ハイパースケーラーと長期契約を締結し、稼働率が確保された一部のハイイールド・データセンタープロジェクト
こうした投資は、信用力の高い取引先へのエクスポージャーを確保しながら、契約に基づくキャッシュフロー保護の恩恵も享受できます。ハイイールド分野では、完成前の段階でハイパースケーラーによる長期賃貸契約が確保されている案件や、テナントが債務を全額返済せずに契約を解除することを実質的に防ぐ条項が組み込まれている案件、さらに建設完了および送電開始までの見通しが明確な案件に重点を置いています。これにより創出されたキャッシュフローを、負債削減へと振り向けることが可能になります(「図表1」参照)。
当社の投資判断に確信が最も持てるのは今後2年間です。ハイパースケーラー各社によるAI関連投資計画を背景に、2026年から2027年にかけて高品質なデータセンター設備に対する需要は引き続き非常に強い状態が続くと予想しています。
もちろん、リスクも存在します。例えば、建設の遅延によってプロジェクトの完成が後ずれする可能性や、AIの導入、収益化が市場の期待を下回った場合にハイパースケーラーの需要拡大が鈍化するリスクがあります。また、長期的にはデータセンター容量の供給過剰に陥る可能性も考えられます。もっとも現時点では、利用可能なデータセンター設備が依然として不足していることに加え、こうした施設がハイパースケーラーにとって戦略的に重要な資産であることから、当社はこれらのリスクを管理可能な範囲とみています。ただし、状況については今後も継続的に注視していく方針です。
図表1:データセンター事業における典型的なキャッシュフローと負債削減のイメージ
出所:アリアンツGI、2026年8月時点。過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示唆・保証するものではありません。
市場動向と投資機会をどう見るか
AIを巡る市場の変動性は無視できません。最近では、ハイパースケーラーの債券市場や株式市場で軟調な動きがみられていますが、その背景には、AI関連の巨額な設備投資と、それによって最終的にどの程度の投資収益が得られるのかに対する投資家の懸念があります。
ただし、当社は基礎的な信用力が大きく悪化しているとは考えていません。大手ハイパースケーラーは依然として強固なバランスシートを有しており、信用力の高い発行体であるとの見方を維持しています。一方、相対的な投資妙味という観点では、一部の契約済みデータセンタープロジェクトの方が、より魅力的なリスクリターン特性を提供している可能性があります。こうした案件は、AIの長期的な収益性に関する不確実な前提に依存することなく、足元のインフラ需要の恩恵を享受できるためです。
当社は、投資環境の悪化の兆候についても注意深くモニタリングしています。具体的には、ハイパースケーラーが長期的な成長見通しを引き下げること、AIインフラへの投資計画を縮小・見直す動きがみられること、あるいは投機的な案件や契約が未確定のデータセンタープロジェクト向けの資金調達が増加することなどが挙げられます。しかしながら、現時点では企業収益の成長が続いているほか、AI関連投資の収益性改善を示す動きも確認されており、当社の投資見通しに大きな変化はないと考えています。
当社は、ハイパースケーラーにとの長期契約により下支えされたデータセンター関連クレジットについて、2026年から2027年にかけて引き続き前向きな見方を維持しています。過去のテクノロジーブームと同様、この分野でも投資タイミングが重要です。そのため、リスクとリターンの双方を慎重に見極めながら機動的に投資機会を捉えるアクティブ運用が有効になると考えています。
1 出所: Bank of America、2026年8月。