テクノロジー関連
AI革命がもたらすアジアのテクノロジー分野への期待
世界経済が依然として複雑で不確実なマクロ経済および地政学的環境を乗り越える中、アジアのテクノロジー分野は革新と成長を続けています。中国、台湾、韓国、日本といったテック拠点から、急速にデジタル化を進めているキャッチアップ段階の地域も含め、同地域はAIの導入、半導体技術の進展、そして世界的なデジタルトランスフォーメーションによる追い風の恩恵を受ける可能性があります。
AIの進化による成長の加速
AIはアジアのテクノロジー分野における主要テーマであり、この分野の需要はさらに加速しています。実際、ChatGPTやGemini、自動運転車、AIソフトウェアエージェントといったアプリケーションの拡大に伴うトークン使用量の爆発的な増加を背景に、クラウド事業者による大幅な設備投資の増加が見込まれています。台湾は半導体およびAIハードウェアのサプライチェーンにおける世界的な中心地であり、現地企業はAI変革を支える最前線に立ち続けると予想されます。次世代の「ダイシュリンク」技術である2ナノメートルノードへの移行により、同じサイズのチップ上でより高い処理能力が可能となり、この分野における台湾企業の優位性はさらに強化され、利益率と収益成長の両面で恩恵をもたらすと見込まれます。
ハードウェアのニーズはもちろん半導体にとどまりません。台湾企業は電力管理や冷却の分野でも先頭を走っています。最新のAIチップは、より高い電力と電圧を必要とするため、高性能な電源ユニット（PSU）の需要が急速に増えています。電力消費の増加に伴い、より効率的な冷却も不可欠となり、従来の空冷では不十分となる中、液冷システムが急速に採用されています。台湾では現在、この急成長市場で競争を繰り広げる企業が30社以上存在しています。
メモリもAIの普及による恩恵を受けている分野であり、HBM（高帯域幅メモリ）と従来型メモリの両方に対する需要が強く需給環境も良好です。このセグメントでは韓国のメモリメーカーが独自の強みを発揮しています。一方、中国のAI市場はAIインフラ、半導体、AIモデルの各分野で依然として堅調な動きを見せています。半導体や半導体製造装置の現地化はまだ低水準にとどまっていますが、今後増加が見込まれ、同分野にとって追い風となるでしょう。
10年後の月間トークン数（80qn）
出所：CLSA、2025年9月時点。
東南アジアはデジタル分野の最前線
東南アジアでは若くテクノロジーに精通した人口と、改善が進むインターネット基盤を背景にデジタル経済が急成長し、デジタルイノベーションと投資が加速しています。ここでの最も顕著なトレンドは、eコマースやオンデマンドサービスの爆発的な成長です。都市化や消費者の期待の高まりといった複数の要因により、プラットフォームはユーザー体験と業務効率を向上させるため、物流やラストマイル配送、テクノロジー基盤への積極的な投資を進めています。
一方、地域の一部では依然として銀行口座を持たない、あるいは十分な金融サービスを受けられない人々が多く、金融包摂の課題がモバイル決済、デジタルウォレット、少額融資、保険テクノロジーなど幅広いデジタル金融サービスに大きなビジネス機会を生み出しています。既存のプラットフォームは膨大なユーザーベースとデータ分析力を活用し、「今買って後で払う」型の決済や加盟店向け融資、P2Pレンディングなど、個々に合わせた金融商品を提供しています。さらに、デジタルバンキングを後押しする規制面での支援が、地域全体でフィンテックソリューションの普及を加速させています。
今後も高まる成長への期待
アジアのテクノロジー分野は依然として魅力的であり、同地域のテクノロジーセクターは世界的なAI革命の最前線に位置しています。投資家は地政学的な不確実性や通貨リスクといった潜在的なリスクに常に注意を払う必要がありますが、それでもアジアは多様で有望な企業群を有しています。特に、台湾と韓国はAIバリューチェーンにおいて重要な役割を担っており、中国もデジタル消費やAI関連技術でリーダーシップを示しています。さらに、東南アジアのデジタル経済も長期的な構造的成長が見込まれ、複数のサブセクターで拡大の余地があります。
こうした背景から、アジアのテック株はイノベーション、規模、成長という魅力的な組み合わせを提供します。マクロ経済や地政学的リスクに目を配りながら、慎重かつ積極的なアプローチを取ることで同地域は今後も未来志向のポートフォリオにおける中核的存在であり続けるでしょう。
