プライベートデットのセカンダリー取引を理解する

セカンダリー取引とも呼ばれる セカンダリー市場での取引は、既存の投資ファンドの持分を売買する取引です。こうした取引 は、投資家にとってポートフォリオのリターンを向上させる魅力的な機会を提供します。

セカンダリー取引の魅力―高めのリターンの可能性

一般に、セカンダリー取引プログラムは、同様のファンドへのプライマリー投資を200~400ベーシスポイント(bp)上回るリターンを狙います。高めのリターンを達成する手段は、取引中に交渉される純資産価値(NAV)のディスカウントです。ディスカウントは、流動性の制約から、プライベートエクイティのセカンダリー市場で見られるディスカウントを上回り、2ケタ台(15%前後1)になることがよくあります。当初取り決められたポートフォリオのNAVに基づくディスカウント以外に、実質的なディスカウントは、クロージングまでの「基準日後」キャッシュフロー に左右されます。

基準日後キャッシュフローとは、基準日(その日のNAVが取引締結に使用される)からクロージング日までの間に受け取るキャッシュフローをいいます。たとえば、NAVの基準日が2023年6月30日で、クロージング日が2023年12月20日とします。基礎となるファンドは基準日からクロージング日までの間も、新しい投資を行うためにキャピタルコールを続け、現金化された資産からの収益を分配します。こうした中間のキャッシュフローは、「基準日後キャッシュフロー」と呼ばれ、買い手が支払う価格と相殺されます。

Jカーブの緩和―早期の利回りと分配

セカンダリー取引で買い取られるポートフォリオは通常、すでに全額投資済みか、大部分が投資済みであるため、Jカーブ効果は最小限に抑えられます。投資家は、同様のファンドへのプライマリー投資よりもはるかに早く利回りと分配金を得ることができます。

 2種類のセカンダリー市場取引

1) LP主導のセカンダリー取引
リミテッドパートナー(LP、ファンドの投資家)が短中期的な流動性を求める場合や、ポートフォリオのリバランシングを目指す場合に行われる取引です。この取引では、LPが保有するファンドユニットがセカンダリー市場で売りに出されます。

2) GP主導のセカンダリー取引
ファンドマネジャー(ゼネラルパートナー、GP)が主導する取引で、予想通りに現金化が進んでいないポートフォリオの部分を売りに出します。この取引は、ファンドをクローズしてリターンを投資家に分配する場合などに行われます。注目すべきは、GP主導のセカンダリー取引中、ファンドのポートフォリオに最後まで残った投資先企業を処分する「テールエンド」取引がしばしば生じることです。このような企業には、もっと早くに現金化されなかった特定の理由がある可能性があるため、ここでは厳格な選別が不可欠となります。

リスク調整後リターンの向上の可能性
セカンダリー市場では、投資家はブラインドプール(投資先が分からない)リスクを大幅に軽減することができます。セカンダリーポートフォリオの買い手は一般に、ポートフォリオの基礎となる各案件を評価し、適切な価格を付けます。これにより、同様のファンドへのプライマリー投資に比べて、より良いリスク調整後リターンが期待できます。
セカンダリー取引のプレーヤー

プライベートデットのセカンダリー取引セグメントは、少数のさまざまなプレーヤーで構成されています。

  • ファンド・オブ・ファンズのセカンダリー戦略:ファンド・オブ・ファンズは、セカンダリー市場で最も成功しているプレーヤーです。社内に専門チームを擁しているため、厳しいスケジュールでも素早く動いて案件を引き受けることができます。これは、セカンダリー取引の引き受けプロセスにおいて非常に重要な要素です。セカンダリー市場でのビジネスを成功させるには、強固なネットワークも必要です。プライマリー市場での確固たる地位、広範な国際的なネットワーク、そして深い市場知識は、強気の交渉を支えます。したがって、専門家ではないプレーヤーにとっては、案件の発掘と完了が課題となります。
  • ローンポートフォリオを買い取るオポチュニスティックな投資家とプライベートエクイティのセカンダリーファンド:これらのプレーヤーは通常、このセグメントで効果的に活動するには資本コストが高すぎるという問題があります。
  • リアルマネーの投資家:典型的なのはソブリンウェルスファンドですが、セカンダリープログラムを運用している年金基金や保険基金の場合もあります。セカンダリー取引は、非常にタイトなスケジュールで行われます。したがって、これらのプレーヤーは非常にオポチュニスティックに行動する傾向があり、通常はすでに投資しているファンドの超大型案件が中心となります。
  • ダイレクトレンディング運用者:大規模なダイレクトレンディングプラットフォームは、セカンダリー戦略の拡大にあたり課題にぶつかります。一般に、売却しようとする持分を所有するGPが、新しい買い手の選定に強い影響力を行使していると見られています。GPがそうするのは、借り手の名前や貸付条件などのデリケートな情報が直接の競合他社に開示されることを避けるためです。
キーポイント

セカンダリー取引で買い取られるポートフォリオは通常、すでに全額投資済みか、大部分が投資済みであるため、Jカーブ効果は最小限に抑えられます。投資家は、同様のファンドへのプライマリー投資よりもはるかに早く利回りと分配金を得ることができます。

市場の成長と存在感の増大

セカンダリー取引に対する注目が高まりつつあり、機関投資家のポートフォリオに採用されることが増えています。S&Pのプライベートマーケットの見通しによれば、2024年もGP主導とLP主導両方のセカンダリー戦略に対する高い需要が予想されます。

プライベートマーケットへのより迅速なアロケーションの実現

魅力的なリターン、資本を迅速に動かしやすいこと、幅広い分散効果を考えると、セカンダリー取引は、ポートフォリオを急速に拡大する場合に有用な選択肢です。プライマリーファンド投資に比べ、プライベートマーケットへのより迅速なアロケーションが可能となります。

底堅い市場機会

現在の市場のボラティリティと、プライベートマーケットポートフォリオにおけるターゲットアロケーションの変化を受け、プライベートデットのセカンダリー取引を通じたエグジットの選択肢を探るLPが増えています。同時に、GPの側でもセカンダリー取引が注目を集めています。

プライベートデットのセカンダリー取引の重要性の高まり

景気の不透明感と銀行の消極的な貸し出し姿勢を背景に、プライベートデット市場は機関投資家にとって極めて重要な役割を担うようになっています。プライベートデットのセカンダリー取引の取引高は現在、年間運用資産(AUM)額の約1.7%2です。これに対し、プライベートエクイティのセカンダリー取引の取引高が占める割合は5%です。プライベートエクイティがたどってきた軌跡と同様に、プライベートデットのセカンダリー取引も今後数年で加速すると予想されます。GPもLPも、流動性の理由からセカンダリーソリューションを模索しています。業界専門家は、プライベードデットのセカンダリー市場の取引額は急増を続け、2026年には500億米ドルに達する可能性があると予測しています。AUMの構造的な拡大が続く中、プライベートデットのセカンダリー取引はそれ自体が重要な資産クラスになることが予想されます。

1 出所:Campbell Lutyens – 2024 Secondary Market Overview
2 出所:Prequin, PitchBook, Allianz Global Investors, 2024

 

 

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