Embracing Disruption

AIの力を解き放つ:中国のアプローチ

中国のAIの重点は、大規模生成AIモデルで世界のリーダーになることよりも、実用的なAIの用途に置かれています。

要点

  • 最近閉幕した全国人民代表大会では、中国国内のハイテク推進が最優先課題として取り上げられました。
  • 中国のAIの重点は、大規模生成AIモデルで世界のリーダーになることよりも、実用的なAIの用途に置かれています。
  • 弊社は、中国のデジタル技術とAIへの持続的な投資から企業が直接的・間接的に利益を得る多様な機会があると見ています。
中国の新しいバズワード

3月上旬に開催された全国人民代表大会(全人代)で中国政府が発表した2024年の優先課題のトップは、経済成長の推進ではありませんでした。最優先課題に据えられたのは、中国のハイテク推進姿勢を象徴する比較的新しいスローガンである「新たな質の生産力」の発展の加速でした。

不動産とインフラに基づく経済成長モデルからの脱却を目指す中国ではかなり以前から、技術の進歩とイノベーションの重要性が政府の公式発言で一貫して強調されています。

実際、米国が関税や制裁によって中国の技術発展を抑え込もうとしていることから、輸入技術への依存を減らすことは、中国にとっていっそうの急務となっています。

しかし、「新たな質の生産力」という言葉を目立たせているのは、それが技術的な自給自足の追求にとどまらないという点です。中国を未来のテクノロジーにおける確固たるリーダーにすること、それが新たな重点となっています。

図1:未来の産業
図1:未来の産業

出所: Gavekal, China Ministry of Industry and Information
Technology, 2024年3月6日

12月に開催された中央経済工作会議の公式声明で示されたように、中国政府は「技術革新、特に画期的な最先端技術を利用して産業革新を推進し、新たな産業、新たなモデル、新たな成長ドライバーを育て、新たな生産力を発展させる」意向です。

したがって、ヒト型ロボット、原子力・水素エネルギー、インダストリアルインターネット、次世代モバイル通信などの未来技術に、より重点が置かれることになりそうです。

中国のAIが目指すもの

ここ1年、人工知能ブームは、少なくとも株価パフォーマンスを見る限り、中国を素通りしているように思われます。たとえば、中国のAI関連銘柄は、いわゆる「マグニフィセント・セブン」に大きく後れを取っています。これは主に、中国にはエヌビディアに相当するような、高性能のコンピューティングハードウェアを販売する企業もなければ、ソフトウェア面でマイクロソフトと肩を並べるような企業も存在しないためです。

しかし、こうしたパッとしない株価パフォーマンスの影では、AIへの大規模投資や多大なリソースの投入が進んでいます。たとえば中国企業は、大規模生成AIモデルの開発を目指す世界的な競争に積極的に参加しています。

弊社の見解では、中国のモデルは比較的短期間で急速に向上しています。この動きを先導しているのは、バイドゥやアリババのような実績のある大手企業です。とはいえ、世界のトップクラスのモデルの質には、まだ及んでいません。この差は縮まっていく可能性が高いものの、米国の制裁によって高性能半導体へのアクセス、ひいては大規模生成AIモデルの開発に必要なコンピューティングパワーへのアクセスが制限されていることを考えると、中国が近いうちに主導権を握ることは難しいでしょう。

図2:ブルームバーグ・マグニフィセント・セブンとCSI人工知能の比較(指数のトータルリターン、米ドル)
図2:ブルームバーグ・マグニフィセント・セブンとCSI人工知能の比較(指数のトータルリターン、米ドル)

出所: Bloomberg 2024年3月27日現在

今後の展望

中国の技術的優位は、「必要十分な」生成AIモデルを生かした実用的なAI用途から生まれる可能性が高いと思われます。中国企業には、「WeChat」(テンセントのソーシャルメディアプラットフォーム)のような大人気のスーパーアプリを開発した実績があることから、中国の巨大な国内市場に乗じることができる新しい消費者向け製品の開発へのAI知識の応用が、大きな成長ドライバーとなる可能性があります。

また、AI開発の初期段階である現在、AIサーバーや熱制御システム、データ送信技術などさまざまな必要性の高いインフラを提供する中国企業にも、さまざまな興味深い機会があります。

中国におけるAIの応用事例
百度(バイドゥ)

検索事業とAIイニシアチブに注力しているバイドゥは、中国版グーグルとも呼ばれ、中国で広く使われている検索エンジンとして定評があります。広告事業が主要な収益源であり、経済状況の安定化に伴い回復の道をたどっています。AI業界のパイオニアとして、バイドゥはChatGPTに匹敵する「Ernie Bot(アーニー・ボット)」という製品を発表し、収益化を改善する方法を模索しています。

美的集団(ミデア・グループ)

中国最大の家電メーカーで、フォーチュングローバル500の常連であるミデアは、エアコンや冷蔵庫を手がける従来型のメーカーから本格的なインテリジェントメーカーへと転換を遂げつつあります。同社はデジタル技術とAI、ビッグデータ技術を活用して、製品の改良、販売の強化、アフターサービスの促進を図っています。

携程集団(トリップドットコム・グループ)

中国最大のオンライン旅行代理店であるトリップドットコム、自社のモバイルアプリに統合された先進的なAIトラベルアシスタントをリリースしました。ユーザーは、AIトラベルアシスタントを通じ、カスタマイズされた旅程の作成や即時予約を行うことができ、迅速でパーソナライズされた回答を得られます。 AIは旅行業界の変革において中心的な役割を果たすことが予想されます。

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