Embracing Disruption
インド株式に投資する理由
インドに対する投資家の見方は変化し始めており、インド株式市場の人気は高まりつつあります。一過性の流行と考えている人もいますが、弊社は、今やインドは、無視するには大きすぎる転換点に達したと考えています。実際に、弊社は、インド株式市場を特に魅力的にしている多くの長期的な側面を見出しています。以下に、投資家のポートフォリオの一部を、インド株式に配分すべき10の理由を挙げています。
結論
1 MSCI, as of November 2023
2 indiainvestmentgrid.gov.in, accessed April 2024
3 Barclays, November 2023
4 E&Y, January 2023
5 CLSA, January 2024
6 MSCI, March 2024
7 Fitch, September 2023
インドの株式市場は巨大で奥深い
インドは、長い歴史のある株式の文化を誇っています。インド最大の取引所であるムンバイのボンベイ証券取引所(BSE)は、1875年に創設された、アジアで最も歴史の古い取引所です。インド国立証券取引所(NSE)やその他の現地取引所と併せ、インド株式市場の時価総額は4.3兆米ドルを超え(2023年12月31日現在)、世界で5番目、新興国市場の中で2番目(中国に次いで)に大きな株式市場となっています。
実際、インド株式の時価総額は、日本市場の時価総額の70%、ユーロネクスト内の取引所を合算した時価総額の63%に相当します。新興国市場においては、MSCIインドの比重は、MSCI新興国市場の時価総額の約16.3%を占めており1、過去10年間でその比率を着実に高めてきました。(図表1を参照)。
図表1:時価総額による世界トップ10市場(兆米ドル)
出所:国際取引所連合、Allianz Global Investors, 2023年12月31日現在のデータ。「米国」はニューヨーク証券取引所及びナスダックで構成、「中国」は上海及び深圳証券取引所で構成。
構造的要因(人口動向、デジタル化及びインフラ)が経済成長を支えている
過去10年間のインドの経済成長は目覚ましいものでした。インドは、2023年の世界GDP成長の推定17.6%に貢献しています。この数値は2001年には8%未満でした。この印象的な軌跡は、様々な要因によって支えられています。インドは、世界最大の若年消費者市場を誇っており、2030年までに、インドの30歳未満の消費者数は推定3億6,000万人に達する見込みです。これに合わせ、インドのデジタルインフラは、着々と拡大され、より若く、より都会的な消費者のニーズに適応しています。既に、世界のデジタル・リアルタイム決済のうち、43%がインドで発生しています。
そして、最後に、重要なこととして、インフラへの投資は、インド国内・国外の両方において、より流動的な貿易に貢献しています。インドの国道網は、過去10年間で2倍となり、155,000kmに達しました。同様に、2020年8月に立ち上げられた、インド政府の国家インフラ・パイプラインは、エネルギー、電気通信及び清浄な水資源を含む、9,600件超に及ぶ事業を網羅しています。これは、物理的なモビリティのみならず、生産性や国際競争力の強化も促進しています2。
STEM(科学、技術、工学、数学)重視の教育制度
インドの豊かさの向上及びデジタル部門の成長に貢献している主な要因は、STEM教科を重視した教育制度です。その比率はインドの大卒者の34%を占めており、フランスや米国を含むその他多くの国々を上回っています(図表2を参照)。このような学歴は、より高スキルな労働力につながり、それがさらに、雇用機会及び富を創出します。こうした大卒者が、様々な形で、イノベーションに基づく、インド経済の伝統的要素の変革を促進することが期待されます。
現在、米国のIT/ソフトウェア企業で働くエンジニアの37%、科学者の23%がインド出資であることは、特筆に値します3。
図表2:全体に占めるSTEM大卒者の比率
出所: UNESCO Institute of Statistics, Barclays 2023年11月9日現在。
インドの株式市場は、広範な株式のユニバースを示している
インド株式市場の幅広さと多様性は、医薬品(インドは、ワクチン及びジェネリック医薬品の世界最大のサプライヤー)やITサービス(世界のテクノロジー及びオペレーション人員の50%から70%がインドを本拠としていると推定される)4などの長い歴史を有するセクターの銘柄に加え、 インドの証券コンサルタントに豊富な機会を提供します。
インドの工業や不動産などの景気循環型業界は、コロナ後の回復および地政学的要因(多くの多国籍企業が採用している「チャイナ・プラス・ワン」のサプライチェーン分散戦略など)によって上昇軌道にあります。国内消費者銘柄及び破壊的イノベーターも、人口動向及びデジタル化のトレンドによる恩恵を受けています。
最後に、改革主義の、企業に優しい政権の指針は、「サンライズ(成長)」産業(医薬品、ソーラー、エレクトロニクス)への投資を促進し、健全な新規株式公開市場を通して政府保有資産の収益化を支援しました。
このため、インドにおいて、上位2つのセクターがMSCIインド指数に占める比重は38%です。これに対し、この対極にあるMSCI台湾の指数はテクノロジーが77%超を占めています5。 インドでは、指数の5%超の比重を占めるセクターが8つあり、大きな分散化のメリットを提供します。
コーポレート・ガバナンスは改善している
インドにおいて、ますます多くの企業が、財務情報開示、少数株主の取り扱い、及びコーポレート・ガバナンスの継続的な改善についてベスト・プラクティスを遵守するようになっています。透明性の向上により、市場が企業の財務の健全性を評価し、リスク要因の比較検討を行うことが可能になります。このため、これは、リスクプレミアムの低下及びバリュエーションの改善にも貢献します。
意識の変化を雄弁に示す事例として、同族支配企業に関係する有名な訴訟や、その他の形による訴訟がありました。独立取締役の権限強化及び少数株主保護を求める声には、多くの国内金融メディアも呼応しています。
インド市場は極めて流動性が高い
インドの株式市場は、規模が大きいだけではなく、非常に高い流動性も示しています。インドの取引所の上場株のうち170超の銘柄が、50億米ドル超の時価総額を誇っています(世界第4位の数字)。その1日当たり取引高は高水準です。250超の銘柄が、10百万米ドルを上回る1日平均取引高を誇っており、これは、日本、米国及び中国の株式市場に次ぐ数字です(図表3を参照)。
図表3:1日当たり平均取引高が10百万米ドル超である銘柄数
出所: CLSA, 2023年12月31日現在。
インドの株式市場は、他の市場とは足並みを揃えて変動しない
インドの株式市場は、伝統的に、他の主要株式市場との相関性の低さを示してきました。インドは、先進国市場との相関性が低い(欧州と0.59、米国と0.54、日本と0.49)だけでなく、その株式市場は、MSCI新興国市場の多くの構成銘柄とも、同様に、又はそれ以上に低い相関性を示しています(韓国と0.57、中国と0.44)。グローバル市場又は新興国市場ポートフォリオに対するインド株式の配分を増やすことが、リスク・リターン特性の強化につながる可能性があります。
図表4:MSCIインドと、選択されたMSCI市場とのリターン相関関係
(週次米ドル価格リターン)
出所:Bloomberg, Allianz Global Investors, 2024年1月25日現在のデータ。相関性データは過去10年間の各MSCI指数の歴史的なリターンに基づき、週次米ドルリターンを用いて計算。
国有企業の比率の低さ
インドを差別化しているもう一つの重要な特徴は、国有企業(SOE)の比率が、中国A株(MSCI中国A株オンショア指数によって測定)においては約46%であるのに対し、インドでは株式市場の11%に過ぎないことです。国有企業には少数株主の権利とは対立する社会的な目標がある場合があるため、SOEは通常、民間企業より低いマルチプルで取引されることが一般的に許容されています。
現地投資家は、より力強く、より粘着性の高い参加者になっている
インドの株式市場は、現地の株式文化の発展によって支えられています。ミューチュアル・ファンドへの投資は、数百万人のインド人にとって、ファイナンシャル・プランニングの重要な要素になっています。2023年において、国内投資家(DII)は、インド株式市場に220億米ドルを投資し、過去最高を記録した2022年の360億米ドルに次ぐ2番目の年間流入額の記録となりました。DIIによる資金流入額が外国投資家(FII)による流入額を上回るのは、これで3年連続となりました。
重要なこととして、システマティック・インベストメント・プラン(SIP)(インドの投信積立制度) の流入額は、この形式による定期貯蓄制度が人気を高めているため、引き続き新たな最高記録を達成しています。この国内貯蓄プールは、より粘着性が高く、例えば、通貨の動向、世界の金利や地政学などに左右されない可能性が高いでしょう。
外国投資家は、ますますインドに引き寄せられている
最近のインドの株式市場の勢いは、その大部分が、国内の貯蓄者が豊かになり、アクセスが容易になったことによる、現地の資金フローに起因するものです。しかし、これは外国投資家がインドに興味を持っていないということではありません。実際、インドの資産は、2023年に外国資本が過去最高を記録し、外国機関投資家(FII)からの株式への資金流入は、総額210億米ドルに達しました6。
指数提供会社もこれに追随し、MSCIは2023年11月に9社のインド企業をMSCIエマージング・マーケット・インデックスに追加し、ベンチマークにおけるインドの比重を15.9%から16.3%に引き上げました1。
さらに、2023年には、インド市場におけるIPOの件数が過去最高となり、計56社が新たに上場しました。堅固なIPOパイプラインが、特に、新規上場企業が、フィンテック、フードデリバリー、エドテック、観光、小売などの成長分野である場合に、FIIの流入を引き寄せます。
同様に、間もなくインドがJPモルガン債券指数に追加されることによって、アセット・フローと市場の関心が促されることが広く期待されており、フィッチは2024年6月から2025年3月までの間に240億米ドルの流入を見込んでいます7。